【科学的/徹底解説】いちごへのバイオスティミュラント施用 農業技術の専門家が科学的に解説します。

施用方法 更新日:


 

今回の記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】いちごへのバイオスティミュラント施用 農業技術の専門家が科学的に解説します。」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】

目次

    いちご栽培において、収量や品質を向上させるためには適切なバイオスティミュラントの施用が欠かせません。しかし、多くの農家が次のような悩みを抱えているのではないでしょうか。

    どの製品を、どのタイミングで使えば効果的?

    バイオスティミュラントの組み合わせによって相乗効果は得られるのか?

    過剰施用によるリスクはあるのか?

    この疑問を解決しないまま施用すると、無駄なコストがかかるだけでなく、期待する効果を得ることができません。そこで本記事では、いちごの生育ステージごとに最適なバイオスティミュラントの施用方法を科学的に解説します。特に、いちご栽培では定植から開花、着果、果実肥大、収穫に至るまでの重要なフェーズがあるので、それぞれの段階で適切な施肥と管理を行うことで、より高品質な果実を収穫できるでしょう。

    【定植後の管理】

    いちごの定植直後は、環境の変化によるストレスを受けやすく、生育が一時的に停滞することがあります。この時期に最も重要なのは、根の活着を促進し、スムーズに生育を進めることです。


    定植直後の施用として適しているのはテカミンライズです。根の発達を促し、定植時のストレスを軽減するために、1回の施用が推奨されますが、必要に応じて2回施用することも有効です。その後は、アグリフルを施用し、根の吸収力を高めることで、植物が適切な栄養を得られるように管理します。

    [根の吸収力向上に関わるバイオスティミュラント]

    また、土壌の水分量を適切に管理することも重要です。すでに十分な水分がある場合に追加で灌水を行うと、根の呼吸が妨げられたり、病害のリスクが高まる可能性があります。特に定植直後は根の活性が低いため、過剰な水分を与えないよう注意が必要です。

    クラウンには炭水化物が蓄積され、花芽の形成や果実の発達に大きく関与します。そのため、定植から開花までの期間には、アグリフルを施用してクラウンに十分な栄養を蓄積させることが重要です。たとえ目に見える変化が少なくても、適切なバイオスティミュラントの施用を継続することで、健全な成長を支えることができます。

    このように、定植直後は根の活着を促し、過剰な水分を避けながら、クラウンに十分な栄養を蓄えることが、その後の生育を左右する重要な管理ポイントとなります。

     

    【開花・着果の管理】

    イチゴの開花期は、果実の品質や収量を決定づける極めて重要なステージです。この期間の管理が適切でなければ、受粉不良や奇形果の発生を招き、収量や品質に大きな影響を及ぼします。特に、開花前の栄養供給や環境調整が重要であり、これらの管理を適切に行うことで、健全な花粉の形成を促し、受粉率を向上させることが可能です。以下では、開花期の管理について、栄養管理・受粉の成功率向上・奇形果の防止という観点から詳しく解説します。

     

    1. 花成誘導と栄養管理

    イチゴの花は、開花の約3ヶ月前から形成が始まり、花芽分化を経て開花へと進みます。この期間に植物が十分なエネルギーを確保できるようにすることが、花粉の質や果実の成長に大きな影響を与えるため、適切な管理が必要です。特に、光合成による炭水化物の蓄積、微量要素の補給、環境条件の最適化が重要になります。

    (1)炭水化物の蓄積

    開花に向けて、イチゴは光合成によって炭水化物を生成し、それをクラウン(根元の茎部分)に蓄積します。この炭水化物が、開花や受粉時のエネルギー供給源となり、花粉の成熟や受精後の果実発育を助ける役割を果たします。

    管理のポイント

    光合成の活性化

    葉が健康であることが炭水化物の生産には不可欠です。病害の防除や適切な肥培管理を行い、光合成を促進することが求められます。

    根系の強化

    根が十分に発達していなければ、吸収できる栄養が制限され、炭水化物の蓄積にも悪影響を及ぼします。アグリフルを施用することで、根系の発達を促し、栄養吸収効率を向上させることが可能です。

    アミノ酸の供給

    アミノ酸を施用することで、植物が光合成に必要なエネルギーを節約でき、余剰エネルギーが炭水化物の蓄積に回されるようになります。

    (2)微量要素の補給

    開花前の段階では、花粉の形成を促し、受粉率を高めるために特定の微量要素の供給が不可欠です。特に、ホウ素・亜鉛・モリブデンは、花粉の成熟や発芽を助け、受粉不良のリスクを軽減します。

    施用のポイント

    テクノケルアミノミックスの施用

    花粉形成に必要な微量要素をバランスよく含んでおり、開花前の施用が効果的です。

    施用タイミング

    開花の3週間前、2週間前、1週間前の3回が理想的な施用時期です。

    アグリフルの併用

    微量要素の吸収を助け、根系を強化することで全体の栄養吸収力を向上させます。

     

    (3)光環境と温度管理

    花芽分化には、適切な光環境と温度管理が必要です。特に、光周期の調整が花芽形成に影響を与えるため、光の当たり方や遮光の管理を意識する必要があります。


    管理のポイント

    適切な光周期の確保

    日長や光量が不足すると花芽形成が遅れるため、特に冬季のハウス栽培では、補光や遮光の調整が必要です。

    温度管理

    受粉の適温は23~25℃とされ、それを下回ると受粉率が低下します。 低温ストレスが発生した場合は、ポリアミンやアミノ酸を含むアグリフルテカミンマックスの施用が有効です。

     

    2. 受粉の成功率を高めるための管理

    開花後は、受粉を確実に行い、果実の形状を整えることが求められます。イチゴの花は一見1つに見えますが、実際には多数の雌しべが集まった花序を形成しています。そのため、すべての雌しべが均一に受粉しなければ、果実の形がいびつになり、奇形果の原因となります。

     

    (1)花粉の質を向上させる施策

    受粉の成功には、花粉の量と質が重要です。開花期に花粉が適切に成熟し、受粉の役割を果たせるようにするためには、以下の管理を徹底する必要があります。

    管理のポイント

    開花の3週間前、2週間前、1週間前にテクノケルアミノミックスを施用し、花粉形成を強化する。

    ホウ素・亜鉛・モリブデンの適切な供給が不可欠。

    低温ストレス下では、ポリアミンやアミノ酸を含むアグリフルを施用し、花粉の発芽率を向上させる。

     

    (2)受粉不良を防ぐ環境管理

    受粉不良は、果実の形状に直接影響を及ぼし、品質の低下を引き起こします。これを防ぐためには、以下の管理が重要です。

    管理のポイント

    気温14℃以下が3日以上続くと受粉不良が発生しやすいため、低温対策としてバイオスティミュラントを適切に施用する。

    開花期の殺菌剤使用は、花粉の発芽を抑制する可能性があるため、極力避ける。

    銅や天然由来の殺菌剤を代替として活用し、受粉に影響を与えない方法を選択する。

     

    3. 奇形果の防止

    開花期の管理が不十分だと、奇形果の発生リスクが高まります。奇形果の発生は、主に受粉不良や栄養バランスの崩れによって引き起こされるため、以下の対策を徹底する必要があります。

    (1)受粉不良の回避

    受粉を均一に行うため、開花期にはホウ素・亜鉛・モリブデンの確保が不可欠

    低温ストレス下では、ポリアミンやアミノ酸を含むアグリフルの施用が効果的


    (2)栄養管理の最適化

    窒素やリンの過剰施用は避ける。過剰施用によりホルモンバランスが崩れ、奇形果が発生しやすくなる。

    肥料は少量ずつ施用し、土壌の栄養バランスを一定に保つことが重要。

     

    4. 着果のメカニズムと果実発育の初期管理

    受粉が成功すると、雌しべの子房が成長を始め、果実へと発達していきます。このプロセスにおいて、ホルモンの働きが重要な役割を果たし、特にオーキシンやジベレリンといった植物ホルモンが果実の成長を促進します。これらのホルモンが不足すると、果実の肥大が不均一になり、奇形果の原因となるため、適切な管理が求められます。


    (1)ホルモンの働きと果実肥大

    イチゴの果実は、表面にある痩果(種子のように見える部分)からホルモンが分泌されることで成長します。具体的には、受粉が成功した痩果からオーキシンが分泌され、それがジベレリンの生成を促し、果肉の成長が進むという仕組みです。

    管理のポイント

    受粉率の向上が不可欠

    受粉が不完全な場合、一部の痩果からしかホルモンが分泌されず、果実が変形する。

    受粉不良を防ぐため、開花期の管理を徹底し、花粉の質や量を最適化することが重要。

    オーキシンとジベレリンの働きを助ける栄養供給

    アグリフルを施用することで、炭水化物の供給を促し、ホルモンの生成をサポートする。

    テクノケルアミノミックスの施用によって、花粉形成に必要な微量要素を供給し、着果の安定化を図る。

     

    【着果後の管理】

    着果後は、果実の細胞分裂と肥大が進行する最も重要な時期の一つです。この期間に適切な栄養管理を行わなければ、果実の成長が停滞し、サイズの小さい未熟果や品質の低い果実が発生するリスクが高まります。そのため、カルシウムや炭水化物の供給、適切な微量要素の施用、環境管理が求められます。

     

    1.着果直後の栄養管理

    着果後の最初の10~15日間は、細胞分裂が活発に行われる期間です。この間に十分な栄養を供給できなければ、果実の成長が制限され、最終的なサイズや品質に影響を及ぼします。


    (1)カルシウムの重要性

    カルシウムは、細胞分裂を促し、果実の組織を健全に成長させる役割を持っています。この時期にカルシウムが不足すると、果実が小さくなり、品質が低下します。

    管理のポイント

    テクノケルアミノCaBを施用し、カルシウムを確実に供給

    細胞分裂をスムーズに進め、果実の大きさを均一化

    アミノ酸やベタインも同時に供給し、栄養吸収をサポート

    一部の生産者は開花期からカルシウムを施用

    受粉と受精を助ける効果も期待できるため、開花期からの施用も有効

     

    (2)炭水化物とアミノ酸の供給

    果実が成長するためには、光合成による炭水化物の供給が不可欠です。さらに、アミノ酸やリンが細胞分裂のプロセスを助けるため、これらを適切に補給することが重要です。

    管理のポイント

    アグリフルを毎週または10日ごとに施用

    目安:1ヘクタールあたり3リットル

    過剰施用は窒素過多につながり、葉の成長を促進してしまうため、最大4リットルを超えないように注意

    テカミンマックスを施用し、アミノ酸とベタインを供給

    炭水化物の生成をサポートし、エネルギー供給を安定化

    光合成の効率を高め、果実の成長を促進

     

    2. 細胞肥大期の管理

    着果後2週間が経過すると、細胞分裂が完了し、細胞肥大が始まる段階に入ります。この期間には、果実のサイズを大きくし、糖度を向上させるための栄養管理が必要となります。

     

    (1)カリウムとホウ素の役割

    細胞肥大期には、糖の輸送と蓄積を促進するカリウムとホウ素が特に重要です。これらの要素が不足すると、果実の甘みが不足し、着色不良が発生する可能性があります。

    管理のポイント

    テカミンブリックスを施用し、果実の糖度と色づきを向上

    糖分の蓄積を早め、収穫時期を調整しやすくする

    テクノケルアミノBを施用し、ホウ素を補給

    ホウ素は糖の輸送を助け、果実の均一な成長を促進

    果実の品質向上に不可欠

     

    (2)環境ストレスの管理

    細胞肥大期には、気温や水分の変動が果実品質に大きな影響を与えるため、環境ストレスの管理が必要です。

    管理のポイント

    高温時には水不足が発生しやすいため、アグリフルを継続施用

    根系の吸水力を向上させ、果実の水分バランスを維持

    日焼け果や着色不良果の対策

    日焼け果の原因:強い日差しや高温

    対応策:ベタインやプロリンを含む製品の施用(開発中の新製品も有望)

    着色不良果の原因:窒素過多

    対応策:窒素施用量の調整とバイオスティミュラントの適正施用

     

    【まとめ】

    いちごの生育には、各ステージごとの適切な管理が求められます。特に、クラウンへの炭水化物蓄積、受粉の成功率向上、糖の輸送促進が重要なポイントとなります。これらを適切に調整することで、安定した収量と高品質な果実の生産が可能となるでしょう。

    適切なバイオスティミュラントの施用と環境管理を行うことで、いちごの成長を最大限に引き出し、収益性の向上につなげることができるのではないでしょうか。

    本記事でご紹介した内容については「 【科学的/徹底解説】いちごへのバイオスティミュラント施用 農業技術の専門家が科学的に解説します。」こちらの動画で解説していますので、気になる方はこちらから動画をご視聴ください。

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