当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】トマトへのバイオスティミュラント施用 農業技術の専門家が科学的に解説します。 」の内容をテキスト化してご案内しています。
目次
はじめに
このプレゼンテーションは、農業従事者の皆様に対して、なぜバイオスティミュラント、アグリテクノ製品を使用すべきなのかを説明することを目的としています。
バイオスティミュラントとは、植物の成長を促進し、環境ストレス(例:高温、低温)から保護するために使用される天然または合成の化合物です。これらは、植物の代謝を活性化させ、より効率的な栄養吸収とストレス耐性の向上を促します。
トマトの成長と生産において考慮すべき全ての要因を見ていきましょう。
温度の影響
では、まず温度について話し始めましょう。これは施肥や私たちの製品であるバイオスティミュラントに関しては後ほど説明しますので、まずは温度が成長に対していかに重要で、どういう影響を与えるのかから見ていきましょう。
まず生育に適切でない温度は植物や果実、花にストレスを与えます。よってこのような場合は、生産が悪影響を受けてしまいます。
ここに示されているのはトマトの最適な成長と生産のために、栽培者が保つべき最適な温度範囲です。トマトの最適な生育温度は21度から24度の範囲です。この範囲を超えると、植物はストレスを受け、生育が抑制される可能性が高まります。特に、温度が18度以下または32度以上になると、植物の成長は著しく制限されるため、適切な温度管理が必要です。
ですのでもし施設圃場に行く時があり温度がその範囲内にないことが分かったら、ストレス対策をお勧めすべきです。
そして、温度が32度またはそれ以上の場合、バイオスティミュラントの施用が強くお勧めできます。植物の生育期には、テカミンマックスやアグリフルのようなバイオスティミュラントが良い対策になります。また18度以下の場合でも、バイオスティミュラントの使用は強くお勧めできます。この場合も、アグリフルやテカミンマックスが最良の選択になると思います。
テカミンマックスは、植物の熱ストレス反応を緩和し、光合成活動を保護することで、高温や低温がもたらす生育抑制を軽減します。また、アグリフルは根系の発達を促進し、水分吸収能力を向上させることで、乾燥、高温、低温による負荷から植物を保護します。
着果温度の重要性
そして、果実の着果は、収量や作物の品質を左右する非常に重要なポイントであるので栽培者は通常、着果について心配しています。着果に最適な温度は生育より更に限定されており、また低いです。
これは夜間の温度と言えるでしょう。ですから夜間には、着果には最適な温度になりやすいのです。具体的には14度から17度の間です。しかし14度以下または17度以上になると植物はストレスを受け着果がうまくいかなくなります。更に20度を超えると受精が行われにくく受精が成功する確率もグッと下がることになるのです。10度以下になる場合も同様です。受精が行われにくく、受精が成功することはあまり期待できません。
施設圃場で栽培されているトマトの場合、受粉はミツバチやマルハナバチで行うと思いますが、これらの受粉昆虫は通常昼間に活動しています。つまり受粉作業は昼間に行われるのが通常ということになります。
温度と果実の着色
着色についても同様に温度が重要で、最高温度と最低温度の範囲があります。30度以上では色の変化停滞し、6度以下では植物は強くストレスを感じます。6度以下ではストレスだけでなく、植物には損傷、目にみえるダメージが発生し始めます。特に1度以下で霜害が発生するため、非常に低い温度ではバイオスティミュラントを多く与える必要があります。
霜害に対しては、どうすれば良いのでしょうか?浸透圧を調整するオスモライト、具体的にはカリウムやアミノ酸、中でもプロリンが有効です。またベタインも有効な選択肢です。ベタインを投与すると細胞内の凍結点を下げることで、低温に対する耐性を高めるのです。これらにより、植物細胞が低温により良く耐えることができます。
温度がマイナス2度以下に下がるとその植物は枯れてしまいますが、現実にはこれは非常に稀なことでしょう。そんな寒い時に栽培するには、相当の暖房費用がかかるので日本やスペインではそんな寒い時に栽培をしても商売にならないからです。
中国の北部では極寒の中、グリーンハウスで栽培をしていましたが、ですので、日本の栽培者は温度がマイナス2度以下になることはあまり考えなくて良いでしょう。
ですから、昼間の気温が18度以下の場合、バイオスティミュラントのテカミンマックスやアグリフルが間違いなく推奨されます。後でどのバイオスティミュラントを選ぶかについてもう少し話しましょう。今は気温の話です。
夜間の気温が10度以下になる場合は、バイオスティミュラントの施用が必須です。同様に昼間の気温が30度以上の場合もバイオスティミュラントを施用することが不可欠です。また、同様に夜間の気温が20度以上と高い場合にもバイオスティミュラントを施用する必要があります。
40度になると、トマトに黄色くもならないからです。色が変わらないのです。それについては触れませんでしたが、黄色の着色になるかどうかはトマト栽培に重要ではないからです。赤くならないと意味がないですよね。
昼間の気温が30度を超えると中途半端にしか赤くならなくなります。30度から40度の間で温度上昇と相関して黄色が増えていって、完全な赤にはならなくなるんです。つまり、気温が30度を超えると、果実は完全に赤くならないのです。
気温が30度を超えて完全に赤くならないというのは黄色や黄色がかった色になることが多いですが、緑のままのこともあります。そして、40度以上になると、黄色にすらならないことがあります。30度を超えて栽培する場合、植物は強いストレスを受けて収量や品質に大きな影響が発生しますのでこのような時は着色を気にしている場合ではありません。だから言及しませんでした。
次に低温の問題です。これは低温に関する問題の1つです。切断面です。これは温度の問題です。果実の着果温度が正しくない、適切でないからです。
湿度の影響
次に湿度です。湿度も非常に重要です。高湿度になると、気孔が閉じる現象が起こります。気孔の細胞内に水分が多く含まれていると、細胞が膨張して気孔が閉じるためです。その結果、ガス交換が減少します。
ガス交換が減少すると、すなわちCO2を取り入れが減少するということは、光合成の活動も低下するということを意味します。気孔が閉じていると、CO2が植物の葉内に入ることができず、光合成が減少します。
したがって、この場合に最適な対策はアミノ酸を施用すること。具体的にはグルタミン酸を適用するのが最善です。気孔を調節するためですが、真の目的は光合成を増加させることです。グルタミン酸は光合成に不可欠であることを覚えておいてください。
アミノ酸、特にグルタミン酸を散布するには、三つの理由があります。一つ目は、気孔の調節です。二つ目は、光合成の促進です。そして三つ目は、代謝エネルギーの追加供給です。光合成が減少すると、十分な有機物を生成することができず結果として植物は成長に必要な十分なエネルギーが不足することになり植物が自動的に代謝の回転速度を落としてしまうのです。
ここで、アミノ酸を外から追加で与えて代謝の回転をアシストすることで植物が再び代謝の回転を上げることができるのです。
高湿度はカビの発生も意味します。日本には製品ラインアップにアジフォル・アミノガードがあると思いますので高湿度の際はこの散布がより良い選択肢になるでしょう。この製品にはテカミンマックス同様、グルタミンを含む様々なアミノ酸が含まれています。
アジフォル・アミノガードにはミネラルも含まれているのでストレス耐性、特に病害抵抗性アップが期待できるのです。テカミンマックスの散布でもストレス耐性アップの効果が期待できます。しかし、高湿度で最も懸念される問題は、花粉が湿って粘着性を持つようになることです。
一方湿度が低い時も問題があります。めしべの柱頭が乾燥してしまうことです。湿った花粉は花粉の運搬にも受粉そのものにも悪影響になります。花粉の運搬する蜂の足に花粉がベッタリくっついて離れなくなるからです。
虫の足がめしべに触れても花粉は離れません。つまり、蜂が次の花に行っても花粉は蜂の足にくっ付いたままで離れなくなり柱頭にくっつかなくなるのです。こうなると当然、花粉管を伸ばすこともできませんし、花粉が胚珠に到達することもありません。
更に湿度が80%を超えると、花粉自体が互いにくっつき始めてしまいます。相対湿度が60%以下になると、つまり乾燥してくるとめしべの柱頭が乾燥してしまう可能性があります。ここが柱頭です。
この花柱には多糖類が含まれています。時々、この花柱が光沢を放っているのを見ることができますが、それは多糖類が含まれているからです。
この多糖類は花粉が花柱にの中に入っていくのに必要だからです。したがって、花粉はここにまずここにくっついて、留まりそして花粉管を形成し始めます。湿度が低く花柱が乾燥しているとうまくくっつくことができず、問題になるわけです。
湿度が高い時、粘着性のある花粉については良い解決策はありません。そういう施設圃場を訪問した際は、窓を開けるなどして空気の流れを良くするようアドバイスしましょう。そして、湿度が非常に低い場合は、もちろん水を撒いたりすることができます。
しかし、相対湿度が低い場合には、ベタインとプロリンがあります。ご存知の通り、これら二つの化合物は細胞が乾燥するのを防ぐので、良い解決策になるでしょう。高温は花の品質に良くないと言われていますが、その理由は何でしょうか。気温が32度を超えると、花粉形成不全が発生します。
つまり32度を超えると、花粉の生殖能力が失われます。よって、花粉が柱頭に到達しても、花粉管を伸ばすことができなくなります。生きた花粉を得るためには、適切な内部水分が必要です。つまりここでは温室の湿度が高いことではなく花粉細胞内に十分に水分がある状態のことがポイントです。
花粉は細胞で構成されており、細胞の内部には水分が含まれています。その内部の水分を保ち花粉が発芽能力を失わない、つまり花粉細胞が生きている状態を維持するには、オスモライト、プロリン、ベタインが重要です。
また、相対湿度が60%以下になると、柱頭が乾燥してしまうことがわかっています。ここでもプロリンとベタインが重要になります。花粉の質や花そのものにとって最も重要な微量栄養素は亜鉛、ホウ素、モリブデンです。我々はこれらの成分が全て含まれている製品はありませんがテクノケルアミノミックスには亜鉛、ホウ素、モリブデン、ベタインが含まれておりプロリンはファーティグレインフォリアーに含まれています。
この製品にはプロリン、ベタインそしてこれら三つの微量栄養素が含まれているため、悪くない選択肢と言えるでしょう。しかし、私はトマトに穀物向けのファーティグレインフォリアーを試したことはありません。アミノミックスの使用を推奨しています。もし農家が費用気にしないのであればアミノミックスとテカミンマックスを混ぜてプロリンを増やすことが可能です。
しかし、ファーティグレインフォリアーの使用も良い選択肢かもしれません。ファーティグレインフォリアーに含まれる亜鉛、ホウ素、モリブデンの量が十分かどうか今この場では断言できません。しかし、おそらく十分と思います。用量を増やすことは考えないといけないですね。ヘクタールあたり2リットル位が適切かもしれません。
こちらを見ていただければわかるように、受粉不足のために花が落ちています。このような場合は、どんなに多くの肥料を使ってもその問題は解決しません。
花が落ちるのは受粉不足が原因ですから施設圃場でこのような状況に遭遇した場合は、受粉の問題か花粉の質の問題、または花の雌しべの問題のどれかと推定できます。
この際は亜鉛、ホウ素、モリブデンを含む製品を推奨すべきでしょう。花粉の質と雌しべの問題は、着果だけでなく、果実の大きさや果肉の量にも大きく影響します。種が多いほど、果実は大きくなります。種子の数が少ない場合、果実は小さくなります。
これはメキシコで撮影された画像ですが、多くの種が含まれています。ちょっと鮮明でないのでわかりにくいかもしれませんが種が少ない部分よりも果肉が厚いのがわかります。種子は花粉粒から作られるものですから、生育可能な花粉粒が必要なのです。完全に条件を満たしていない場合、果実は最大サイズより小さくなります。
今日は月曜日ですね。月曜の朝は良いプレゼンテーションの条件を完全に満たしていません。さぁプレゼンに戻りましょう。要約すると、トマトの品種にもよりますが、気温が26度を超えると花粉が乾燥してしまいます。花は結実するかもしれませんが、種が少ないため果実は小さくなるでしょう。
花粉に含まれるアミノ酸は26%がプロリンです。なぜなら水分を内部に保持することが非常に重要だからです。植物や花粉は脱水を防ぐために多くのプロリンを生成または吸収します。
アミノ酸は、花粉にエネルギーと窒素を供給します。花粉は、この内部でエネルギーと栄養素を使い花粉管を形成します。実際、花粉管を作るために必要なほとんどの栄養は、柱頭と子房から得られます。
もし花が十分な多糖類を持っておらず、柱頭や胚珠に必要なアミノ酸が不足していれば、花粉管は形成されません。したがって、まず高品質の花を育成することが非常に重要です。また、脱水を防ぐためにベタインも重要であり、微量栄養素であるホウ素やモリブデンも同様に重要です。
ホウ素は非常に重要です。なぜなら、ホウ素がなければ花粉管が形成されず、たとえ形成されたとしても胚珠に到達することはありません。ここで指しているのは胚珠の部分です。ですから、雌しべ全体も良質でなければなりません。
柱頭内と胚珠内の栄養素の重要性について述べました。この子房の中にある、胚珠に注目ください。胚珠はここにある非常に小さな点です。胚珠には十分な栄養を蓄える必要があります。蓄えが増えるに従い花の品質が向上します。
早く開花する花は通常、内部に栄養が豊富に含まれていて、子房も大きいのです。そして、子房が大きいほど、受精の可能性が高まります。なぜだかわかりますか?大きな子房は大きな果実ができることを意味するのです。つまり大きな子房は内部に多くの細胞と栄養素を含んでいるのです。
つまり、トマトも大きくなる条件が揃っているということです。これらは私にとって非常に明白な事実ですし、あなたにとって同じく明白な事実と思っています。
しかし念頭に置いておかないといけないのは、施設圃場でさまざまな状況を確認し、何を植物に適用し、何を推奨するかを決める際にこれらのことを考慮に入れることです。そしてもちろん、栽培者もこれらのことを理解できると思います。
そして彼らは納得するか、十分に納得しなくても少なくともバイオスティミュラントの使用には興味を持つでしょう。
重要なことに触れるのを忘れていました。以前にも説明をしましたが、多くの細胞を持つためには細胞分裂は重要です。こちらをご覧ください、これが実物の写真の子房、柱頭、雄しべで、ここで花粉が生成されます。
花同士を比較することも可能です。こんな感じで栽培者に示すことができるのです。「ご覧ください、この花は非常に小さいですが、こちらの花は十分な大きさです」と。
また、光の状態も重要で温室に入る際には最適なバイオスティミュラントを推奨するためにも光の量をチェックするのも重要です。
光の影響
明らかに、光の量が少ないと光合成が減少し、これは興味深い点です。光が1%減少すると、収量も1%減少することがあります。曇りが続いて日照が不足している場合や、逆に強い日差しを遮るためにネットを使用している場合などは、生産者に次のことを言うと良いかもしれません。
まず、高湿度の時は気孔は閉じ、ガス交換が減少します。つまりあまり二酸化炭素を取り込まなくなるので、その結果、光合成の速度が低下します。したがって、低光量と高湿度の環境は非常に危険で、有害です。低光量により光合成が減少し、高湿度によっても光合成が減少するということは、糖の生成が減少し、果実の品質、保存性、サイズも低下します。
そのため、低光量と高湿度の状況ではバイオスティミュラントの使用を推奨すべきでしょう。この場合、グルタミン酸やプロリンなどのアミノ酸を含むテカミンマックスが最適です。
施設圃場に入って、遮光ネットを使っていたり日陰を意図的に作り出している時は同様にテカミンマックスをの使用が推奨できるでしょう。ネットは、強すぎる日差しを遮り、日焼けを防ぎ、温度が高すぎる場合には温度を下げる効果があり、最終的には果実の品質を向上させる目的で使用します。
このような時もバイオスティミュラント等で何か対策をした方が良いです。例えば作物の上部には光は届きますが、下部やその下の小さな植物にはより光が届きにくくなり、つまり上部は日差しが強すぎるのが緩和されても、下部は元々ちょうど良い日差しであった場合、光量が不足するからです。
考えれば明らかですが、改めて指摘した方が良いでしょう。白色や銀色のマルチなどで光を作物に反射させるのも良い対策です。下部の光量を補うことができます。
生産者がマルチを使用するのはよくあることで、マルチは黒や銀色、時には白色のものもあります。特に冬場には、黒色のマルチを好んで使用するようですね。黒のマルチは植物へ光を反射しません。また、この時期はテカミンマックスや他のバイオスティミュラントの施用を推奨する良い機会です。
マルチを敷くことで、光量が減り日影が増えるため、果実は熟成を早めます。そのため、多くの栽培者が日陰を作ることを選びます。このような場合は、光合成も減っていることを、それを補う方が良いことを生産者にアドバイスすべきです。
糖の移動とカリウムの重要性
では、糖について話しましょう。以前テカミンブリックスについて話した際にも触れましたが、糖の移動は通常、植物の葉や茎にある貯蔵器官から始まります。花へと糖を移動させるためには、植物にはカリウムが必要です。テカミンブリックスにはカリウムが含まれていることを覚えておいてください。
まずカリウムが含まれている他社製品は一般的で、かつトマトの栽培では通常、土壌に十分なカリウムを添加するので、つまりカリウムは十分な量が既に供給されている可能性があるので、新たにバイオスティミュラントを薦める際にはこの点を考慮に入れる必要があります。
その後、糖はスクロースの形態で水に溶けて、花まで移動します。十分な水分がないと、糖分は貯蔵期間からシンクへ十分に運ばれません。その後、糖分は伴細胞に入ります。そして、糖分は根の細胞にも運ばれる必要があります。
このプロセスは非常に重要であり、必ずしもうまくいくものではありません。その理由は、この糖の移動が酵素の働きによって行われるからです。これらの酵素の多くはホウ素の施用によって誘導されることがわかっています。全てではありませんが、多くの酵素がホウ素に反応します。
従って、果実に糖分を蓄えるためには、植物に十分なホウ素が供給されていることが重要で、これを確認する必要があります。ホウ素については、ただこの移動に必要不可欠であるだけでなく、植物がこれらの酵素をより多く生産するためにもホウ素の施用が効果的であることが非常に興味深い点です。
このため、ホウ素は本当に本当に重要な栄養素です。成長中の緑色の果実では、糖は細胞間を移動しますが、この段階ではホウ素の需要がそれほど高くありません。ただし、この時の糖の適切な移動にも様々な酵素が必要であることは変わりません。
果実が成長するにつれて、糖の移動方法は細胞内、シンプラスティックから細胞間、アポプラスティックへと変わります。そのため、果実が小さい時は植物に多くのホウ素は必要ありませんが、果実が大きくなるにつれて、植物や果実自体がより多くのホウ素を必要とするようになります。
興味深いことに、スクロースは開花後30日から35日の間に果皮に取り込まれます。果皮といってもいわゆる果物の皮ではなく、果実の果肉部分のことです。つまり、開花後35日を過ぎた時点で、糖分を豊富に含む果実を得るためにはホウ素が非常に重要であり、カリウムも同様に重要であることを意味します。
これはホウ素の重要性を再確認していただくための要約です。これは以前、テカミンブリックスの講義の時にお見せしたスライドと同じものです。興味深い内容ですので、もし再度内容を確認されたい場合はご一読ください。しかし研究者向けというか大変専門的な内容ではありますが。
リコピンの合成と酵素の役割
トマトの色はリコピンによるものです。リコピンはカロテノイドであり、β-カロテンやα-カロテンの前駆体です。つまりイチゴのような他の作物とは異なり、果実の色を変化させるためにフェニルアラニンは必要ありません。アントシアニンの生成にはフェニルアラニンが必要ですが、リコピンの合成にはフェニルアラニンは関係ありません。
この糖とピルビン酸を見て下さい。この反応、プロセスには、多くの酵素が関与しており、これらを適切に維持する必要があります。植物内のリコピンの量を増やす、または少なくとも減少させないためにできることは、これらの酵素がより効率的に働くよう支援することです。酵素はアミノ酸から構成されており、非常に脆弱な分子です。
これはよく知られていることです。高温でこれらは通常、高温によってこれらの脆弱な分子は変性しやすく、影響を受けます。30度を超える高温時には植物は熱ショックタンパク質(シャペロンとも呼ばれる)を生成し高温によって破壊されたり損傷した酵素を自ら修復する機能を持っています。
つまり高温時には、バイオスティミュラントを散布することは、具体的にはベタイン、アミノ酸、その他の効果物質を含むバイオスティミュラント与えることは、植物のこの機能をアシストして助けることで非常に有益で重要です。低温でも同様に酵素の活動が低下するため、バイオスティミュラントの使用が必要です。
また、色が変化するには、十分な光が必要です。直射日光ではなくても良いのですが十分な光量が必要です。私たちは、バイオスティミュラントを推奨する際は、栽培者に対してバイオスティミュラントの推奨と合わせて他に必要な要件についても提供すべきです。この場合、果実の色の改善については光ですね。
アミノ酸やバイオスティミュラントを与えることで、植物はより多くの糖を生産するようになり、その結果、トマトの表面の緑色が失われていきます。具体的には糖分、特にスクロースやグルコースは、クロロフィルを分解するからです。クロロフィルが果物の表面を緑色にしているのですから。
植物が糖分をより多く生成し、果実内に蓄積するほど、果実の緑色が消失し、赤く変色しやすくなります。しかし、同時にトマトには特定の問題が生じやすくなることがあります。たとえば、尻腐れ病はその一例で、これは果実のカルシウム欠乏が原因です。
土壌や植物には十分なカルシウムが供給されているものの、それが果実の特定の部位に達していないという可能性もあります。このようなカルシウム欠乏は、他の病気や症状も発生させるため、何か提案を行う前には必ず、植物をよく観察することが重要で、その症状と原因を識別することが解決策の推奨を行う上で重要です。
たとえば、こちらの写真を見ると、常に植物の先端部分が乾燥していることがわかります。特に若葉の先端部分が乾燥している場合、これは植物内のカルシウムが不足しているか、あるいはカルシウムが先端部まで適切に分配されていないことを示しています。
このような状態を観察したときは、栽培者に対してテクノケルアミノCaBの施用を推奨すべきでしょう。
植物細胞はカルシウムを非常に求めています。土壌から吸収されたカルシウムは、葉の先端や果実の先端まで長い距離を移動する必要があるのですが、移動の途中で他の器官に多くのカルシウムが取り入れられてしまいます。
そのため、カルシウム欠乏は根から最も遠いこれらの先端部分で特に顕著に現れやすくなります。
このカルシウム不足を補うため、葉面散布によるカルシウムの施用が効果的です。特にテクノケルアミノCaBの施用を推奨します。その理由は、アミノ酸キレート化されたカルシウムの葉面からの高い浸透率にあります。
EDTA等他のキレート剤でキレート化されたカルシウムを葉面散布した場合、カルシウムの浸透はあまり期待できませんが、テクノケルアミノCaBは細胞間隙を通過することができますので、効果が期待できます。このカルシウム不足を補うため、葉面散布によるカルシウムの施用が効果的です。
特にテクノケルアミノCaBの施用を推奨します。その理由は、アミノ酸キレート化されたカルシウムの葉面からの高い浸透率にあります。EDTA等他のキレート剤でキレート化されたカルシウムを葉面散布した場合、カルシウムの浸透はあまり期待できませんが、テクノケルアミノCaBは細胞間隙を通過することができますので、効果が期待できます。
カルシウムは細胞間での移動が可能です。カルシウム欠乏は、植物の先端部までカルシウムが十分に届いていないことが問題です。要は輸送の問題です。つまり、カルシウムを最も必要としている場所に運ぶことが重要です。
カルシウムは細胞分裂時に特に必要であり、植物が細胞分裂を行う際に十分なカルシウムがないと細胞は分裂しません。カルシウムを施用する最適なタイミングは、細胞分裂が活発に行われる時期です。これは主に着果直後、着果中、またはトマトが非常に小さい時に発生します。
したがって、これがカルシウムを施用する最も良いタイミングとされます。もちろん、皮膚、つまり果皮は常に細胞分裂をしています。細胞は膨張するだけでなく、分裂もしているのです。そのため、亀裂が入らないように、この時期にはカルシウムが不可欠です。
しかし、まさにこのタイミング、または通常の細胞分裂の時期、あるいはそれよりも少し早い時期にカルシウムを与えれば、トマトの外皮に十分にカルシウムを補給することができ亀裂が入ることを防ぐことができるのです。
事例の紹介
事例をいくつか見ていきましょう。これはアグリフルを施用した育苗の事例です。以前もお見せしましたよね。非常に良い結果を得ることができました。
次も同様にアグリフルの育苗の事例です。台風によりダメージを負ってしまったのですが、そこから見事に回復しました。
次の事例もアグリフルの事例で、立ち枯れ病対策の事例です。立ち枯れ病は、高湿度が原因で起こる病気で、土壌内にカビ菌が繁殖して根もその菌に感染してしまう病気です。アグリフルを施用することで、土壌に団粒構造を作り水はけをよくして、カビが繁殖しやすい環境でなくすることにより病気の対策となりました。
次はトマトの事例ではありませんが、同じナス科の植物です。アグリフルを施用した方の茎が太くなっているのは、植物が健康に育っている証拠です。この太い茎にはより多くの糖分が蓄積されており、その糖分はいずれ果実に移行することになります。
短い節間は、多くの栽培者にとって非常に好まれる特性です。なぜなら植物が成長しすぎると、施設圃場内で茎を曲げる必要が出てくるからです。節間が短いほど、彼らの作業は容易になります。そして、アグリフルを使用することでより多くの花と果実を得ることができます。より大きな果実、より多くの果実です。
これはトマトの事例ではないですが、トマトでも同様です。こちら水や熱ストレスに対する対策の事例です。水分ストレスや高温ストレスで葉がカールしているのを見たことがあると思いますが、このような場合アグリフルを施用すると葉が健康な状態に保たれます。そしてもちろん、トマトの実の数も増えます。
テカミンマックスの利点
テカミンマックスは、10日ごとを目安に1ヘクタールあたり約3リットルを使用してください。通常、殺菌剤や殺虫剤と混用すると思いますが、この10日ごとに目安に施用するのだと混用しやすいと思います。
日本ではわかりませんが、ヨーロッパや他の地域では生産者は10日ごとにこれらの殺虫剤や殺菌剤を散布することが昔から一般的でした。
今はこれらの農薬と一緒にテカミンマックスを混用して10日おきに散布しています。テカミンマックスは他の葉面肥料とも混ぜることができ、植物の成長を促進し、より早い生産が期待できます。
色に注目して欲しいのですが、この畝はこのタイミングから生産者は収穫を始めました。こちらの畝はまだ収穫を始めていませんし、2日後も収穫はまだです。一方、こちらの畝はほとんど収穫が終わっていますね。さて、テカミンマックスの利点がよく分かる例だと思います。
それでは今日はこれで終わりです。さあ、皆さんの質問をどうぞ。
開花期の推奨施用
日本ではトマトの開花期にテカミンフラワーを推奨していたということでしたが、トマトの開花期には私の推奨はテカミンマックスとテクノケルアミノミックスの混用ですね。
通常、花の健全な成長にはプロリン、ベタイン、そしてこれらの微量栄養素が最も重要です。良好な受粉のために植物や花が必要とする栄養素を過不足なく提供するにはテクノケルアミノミックスの施用が適切と思います。
テカミンフラワーで注目すべき栄養素はリンですが、トマト栽培では通常、土壌に十分なリンを施用しているため、リンよりもホウ素を与えることの方が重要だと考えています。
要はバランスの問題で、ベストの選択がいつも同じではありません。状況を観察して確認・評価し、その上で生産者に最適なアドバイスを提供すべきでしょう。ただ私にとって、テクノケルアミノミックスとテカミンマックスの散布が多くの場合、有力な選択肢になると思っています。
もし気温がそれほど高くなければ、適切な気温であれば、トマトでもアミノミックスとテカミンフラワーを推奨するかもしれません。一方、果樹に対しては、テカミンフラワーが非常に有効な選択肢と考えています。果樹においては、テカミンフラワーを使うことで花の開花を促進し、花芽分化を助けることができます。
もちろん、テカミンフラーとテクノケルアミノミックスを組み合わせて使用することも良い選択肢になるでしょう。もし気温が非常に高い場合は、テカミンフラワーではなくテカミンマックスが第一優先になるでしょう。施設圃場の作物を確認したら、リン不足があるかもしれませんし、花が多く落ちていることもあります。
まずは圃場と作物の状況をしっかりと確認・評価し、花の落ちる原因がカルシウム不足であるかどうかを検討した上でテカミンフラー、テクノケルアミノカルシウム、テカミンマックスのどれを第一優先にすべきかを判断する必要があります。いずれにしても、この場合、花が落ちている場合はテクノケルアミノミックスは混用必要と思いますが。
また、テクノケルアミノミックス、テカミンフラワー、テクノケルアミノCaB、テカミンフラワー等全部の製品を使えば植物が必要とする栄養素を全てカバーできるかという質問を受けますが、その答えはYesです。これらの製品を全て使用すれば、間違いなく植物のニーズを満たすことができるでしょう。
しかし、生産者がその費用を負担できない場合もありますし、その費用を投資と考え投じた場合でも、結果が改善されないことがあります。植物がすでに持てるポテンシャルを発揮していた場合などです。または問題がもっと別に、例えば環境面にあることもあります。
施設栽培のトマトに関していうと、常に花が咲き、常に実をつけているため、農薬や肥料などの製品を継続的に施用する必要があります。ですので、時々何かの栄養素が足りなくなることも十分考えられます。今日はカルシウムを施用する必要があるかもしれません。
その後10日後にはテカミンマックスを施用し、さらに10日後にはテカミンフラワーを施用する必要があるかもしれません。テクノケルアミノミックスのようなものを交互に使うのが良い選択肢かもしれませんし、10日ごとに2つの製品を組み合わせて使用することもできます。
もちろん、すべての施設栽培や栽培者に共通する一般的なルールを設けることはできません。環境と状況によりますので。観察して考える必要があります。
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