ブドウの着色不良の原因と改善方法|カルシウムとバイオスティミュラントの使い方

栽培方法 更新日:

今回の記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「ブドウ栽培者必見!近年特に問題になっている着色不良の改善方法を現場での実践を基に徹底解説!」の内容をテキスト化してご案内しています。

目次

    【着色不良が起こる背景と原因】

    近年は温暖化やゲリラ豪雨、夏の厳しい暑さの影響で、ブドウの果実が高温障害を受けやすくなっています。特に濃い色の品種で、なかなか色がつかない着色不良に悩む栽培者が増えています。

    ブドウの着色がうまくいかない理由は一つではなく、いくつかの原因が重なって果皮の色づきが悪くなっているのが実情です。主な要因は次のとおりです。

    ・高温障害により糖の転流が止まり、果皮の細胞で色をつける酵素の働きが弱くなる

    ・マグネシウムなどの微量要素が不足し、アントシアニンという色素の合成がうまくいかない

    ・植物ホルモンのバランスが崩れる。特にサイトカイニンやエチレンの動きが不安定だと、細胞の成熟がスムーズに進まない

    つまり、果皮細胞の中の代謝や構造のバランスが崩れることで着色不良が起きていると考えられます。

    【カルシウム資材の効果と働き】

    カルシウムというと骨を強くする栄養というイメージがありますが、植物にとっても構造の土台のような役割を果たします。果皮の細胞ではペクチンという成分と結びついて細胞同士をがっちりつなぎ止め、細胞の形を安定させます。これにより、色をつけるための代謝もスムーズに進みやすくなります。

    さらに、カルシウムはストレスに反応する信号としての役割も持っています。暑さや乾燥で植物がダメージを受けそうになると、細胞内のカルシウム濃度が一気に上がり、ストレスに備えるサインとなります。また、アントシアニンの合成に関わるPAL(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)やCHS(カルコン合成酵素)といった酵素の働きが、カルシウムによって強化されることもあります。

    このほか、カルシウムはマグネシウムや鉄の吸収を助ける効果もあるため、全体的に栄養バランスが整いやすくなり、ブドウの着色と肥大に貢献します。

    【バイオスティミュラントとの相乗効果】

    ここで登場するのがバイオスティミュラント資材です。肥料とは少し違い、植物に刺激を与えるような働きがあり、ホルモンに似た成分やアミノ酸などが含まれています。例えば、サイトカイニンに似た成分が細胞分裂を促したり、ストレス耐性を高めるアミノ酸が含まれていたりします。

    これをカルシウムと一緒に使うことで、果皮細胞の構造と、その中の代謝の両方を支えることができるようになります。特に6〜7月の花芽分化期にも良い影響があり、来年の実つきにも良い効果が期待できます。糖の移動を促す効果や、アントシアニンの合成を間接的に助ける成分が入っている製品もあるため、着色対策に役立つ資材といえます。

    【着色期の施肥と効果的な資材の組み合わせ】

    では、実際に着色を改善するには、どの時期にどんな資材を組み合わせればよいのでしょうか。ここが非常に大事なポイントです。

    まず注目してほしいのが、糖質系のバイオスティミュラントです。光合成を助け、ブドウの葉で作られた糖を果実に送り込む、いわば糖の転流を促す資材です。着色にはかなりのエネルギーが必要で、そのエネルギー源となるのが糖です。ここをしっかりサポートすることで、果皮のアントシアニン合成も進みやすくなります。

    もう一つのポイントが、リン酸カルシウムです。リン酸がなくてもカルシウムだけでも構いませんが、できればリン酸カルシウムが望ましいです。アントシアニンの合成を直接支える効果があり、リン酸成分は核酸やATPなどの代謝にも使われます。特にカルシウムとの相乗効果で、果皮細胞の安定と酵素活性の両方にアプローチできます。

    この糖質系のバイオスティミュラントとリン酸カルシウムの2つを、特に4〜5月にセットで投入することが重要です。すでにリン酸を与えている場合は、それぞれ個別でも構いません。この時期に入れておくことが、その後の果皮の外観品質を大きく改善することにつながります。

    【生食ブドウの年間施肥スケジュール】

    1年の流れに合わせて、どの資材をいつ使えばよいかの大まかなスケジュールは次のとおりです。

    ・1〜3月(休眠期):木が動いていない時期。有機物の投入で微生物環境を見直し、土作りに集中する

    ・4〜5月(芽吹き期):カルシウム資材とバイオスティミュラントを基礎的に投入し、栄養吸収の下地を整える。カルシウム資材(リン酸カルシウムでも可)を40〜60kg程度、土を耕さず表面に散布する。バイオスティミュラントは葉面散布剤として使用する

    ・6〜7月(花芽分化期):バイオスティミュラントを投入し、もう少し入れるならカルシウム資材も加える。花芽の質が上がり、今年・来年の実つきが良くなる

    ・8〜9月(着色期):糖質系のバイオスティミュラントやリン酸カルシウムを使い、着色をしっかりサポートする

    ・10〜12月(収穫後の回復期):翌年に向けた回復の時間。根の活力を高める施肥が重要になる

    なお、カルシウム資材を表面散布する際は、木の幹の周りではなく、葉の外側の先端の真下あたりに入れると、根の吸収が良くなります。特に今回お伝えしたいのは、4〜5月の芽吹き期にカルシウムとバイオスティミュラントを併用することです。ここが非常に大事になります。

    【ブドウにおすすめのバイオスティミュラント資材5選】

    ブドウでおすすめしたいのは、テカミンマックス、アグリフル、テカミンフラワー、テカミンブリックス、テクノケルアミノCaBの5つです。これらは大きく、守りのバイオスティミュラントと攻めのバイオスティミュラントの2つに分けられます。守りは植物全体の基礎的な部分を補う資材、攻めはより良い生産物を作るために積極的に使うことで効果を発揮する資材です。

    守りのバイオスティミュラント:テカミンマックス・アグリフル

    テカミンマックスとアグリフルは、代謝を上げたり成長を促進したりする基本の資材で、守りのバイオスティミュラントと呼んでいます。1年を通して定期的に散布するのがおすすめです。

    テカミンマックスは遊離アミノ酸を12%と多く含み、葉面に定期的に散布する製品です。遊離アミノ酸は植物体内でいわば便利屋のような存在で、根から吸い上げた栄養素を必要な場所へ運ぶ、高速道路のような働きをします。分子が小さく、遊離アミノ酸で一つ一つがつながっていないため、植物内を素早く遠くまで移動できます。「かけたら葉の色が濃くなった」という声もありますが、これはアミノ酸が直接効いたというより、アミノ酸が土壌の栄養素を根から必要な場所へ運んだ結果と考えられます。アミノ酸は酵素や植物ホルモン、その他の有機酸の前駆体にもなり、足りないところや弱ったところに移動して必要な物質に変化します。こうして植物の代謝を助け、健全な生育をサポートします。

    アグリフルは腐植酸やフルボ酸の資材で、土壌に散布して土壌環境を良くします。腐植酸だけでなくアミノ酸も少し含まれており、土壌に入れるとフルボ酸などが団粒構造を促進し、微生物の活性が高まります。微生物の餌になるアミノ酸がすぐそばにあることで変化が早まり、さまざまな栄養素が分解されて肥沃な土壌へと変わっていきます。その結果、根の張りが良くなって栄養素を盛んに吸収し、吸収した栄養素はアミノ酸が植物体内へ運んでいきます。

    攻めのバイオスティミュラント:テカミンフラワー・テカミンブリックス・テクノケルアミノCaB

    攻めのバイオスティミュラントは、テカミンフラワー、テカミンブリックス、テクノケルアミノCaBの3つで、それぞれ特定の使用目的や効果があります。

    テカミンフラワーは花芽の充実に関わる資材で、生殖成長のスイッチを入れてくれる効果があります。ブドウの場合は、花芽の分化が始まったぐらい、新芽から葉が7〜10枚ほど展開した頃に使うと効果が出やすいです。また、開花の20〜30日前に散布すると、花振るいの防止にもつながります。希釈はおよそ500〜1000倍で葉面散布します。

    テカミンブリックスは糖度を上げ、肥大や色づきを良くする資材で、果実の成熟スピードを上げます。摘粒が終わって肥大が本格化するあたりから使い始め、色づき始める前くらいまでに2〜3回散布すると効果が出やすいです。希釈は500倍程度で葉面散布します。

    テクノケルアミノCaBは、その名のとおりカルシウムとホウ素がセットで入っている資材です。一般的な微量要素資材との違いは、アミノ酸でキレート化されている点です。分子が小さいため葉面のクチクラ層をアミノ酸キレートのまま通過でき、電荷を帯びていないので途中でトラップされることもなく、植物内を素早く必要な箇所まで移動します。カルシウムとホウ素は細胞分裂に必要不可欠な要素でありながら、どちらも植物体内をあまり移動しないため、根からの吸収だけでなく葉面散布で直接補うことが効果的です。高温障害やさまざまな着色不良への対策に役立ちます。

    【まとめ ― 守りと攻めを使い分けて着色を改善する】

    ブドウの着色不良は、高温障害や微量要素の不足、植物ホルモンのバランスの乱れなど、複数の要因が重なって起こります。改善のためには、カルシウム資材で果皮細胞の構造を整え、バイオスティミュラントで代謝を支えることが重要です。特に4〜5月の芽吹き期に、カルシウムとバイオスティミュラントを併用しておくことが大きなポイントになります。

    今回紹介した5つの資材を、守りと攻めとして使い分け、それぞれの生育ステージに合わせて活用することで、ブドウがスムーズに生育し、収量や品質の向上につながります。年間の施肥スケジュールを押さえながら、ぜひ取り入れてみてください。

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