べと病・炭疽病・うどんこ病の見分け方と対処法|6〜7月に多発する葉の病気

基礎知識 更新日:

今回の記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「6〜7月に多発!葉に出る病気の見分け方と対処法【べと病・炭疽病・うどんこ病】」の内容をテキスト化してご案内しています。

目次

    【この時期に病害対策が重要な理由】

    田植えや夏野菜の苗植え、各種野菜の管理などで作業が忙しくなるこの時期は、作物栽培にとって非常に重要な時期です。特に稲作では、1年で最も重要な時期の一つとされています。同時に、気温の上昇と梅雨の高い湿度が重なることで、葉に発生する病害のリスクも高まります。

    今回取り上げるべと病・炭疽病・うどんこ病は、いずれもこの時期に発生しやすい病害です。これらの特徴を抑え、あらかじめ予防しておくことは、その後の作物の収量アップ・品質向上につながります。ここでは、それぞれの病害の特徴と、この時期にできる対策についてご紹介します。

    【べと病とは ― 卵菌類が引き起こす病害】

    べと病とは、糸状菌に似た卵菌類によって引き起こされる病害です。葉に黄色い病斑ができ、葉の裏面にはカビ状の胞子が現れるのが特徴です。この病気は葉の気孔から侵入して内部で増殖し、空気中や水を介して周りの株へと伝染し、感染が広がっていきます。

    注意したいのは、べと病という名前は同じでも、原因となる病原菌は作物ごとに異なるという点です。症状はよく似ていても、原因となる病原体は作物ごとに別物です。例えば、レタスのべと病はブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)、キュウリのべと病はシュードペロノスポラ・クベンシス(Pseudoperonospora cubensis)が原因で、見た目は似ていても分類学的には異なる病原菌が原因となっています。そのため、使用すべき農薬も作物によって異なります。

    症状の進行

    初期には、輪郭のはっきりしない淡黄色の斑点が現れ、葉の裏面には灰色のカビ状の胞子が発生します。病気が進むと斑点は淡褐色に変化し、やがて葉脈に囲まれた部分が褐色のステンドグラス状になります。病斑が古くなると、褐色から灰白色へと変化していきます。

    べと病は下葉から上葉へと徐々に拡大し、進行すると葉全体を覆い尽くして株ごと枯れてしまうこともあります。だからこそ、早期の発見と適切な農薬の選定、環境管理による予防がとても重要です。

    べと病が発生しやすい条件

    べと病が発生しやすいのは、4月から7月、そして9月から10月の時期です。気温が20度から24度、さらに湿度が高い環境で特に発生しやすく、梅雨や秋雨の季節に多く見られます。特にかかりやすいのはウリ科やアブラナ科の作物で、これらを育てている場合は注意が必要です。

    また、次のような栽培環境や栽培条件も発生リスクを高めます。

    ・肥料切れや草勢の低下

    ・窒素分の過剰供給

    ・株間が狭い(密植)

    ・葉が結露や雨で濡れた状態が長く続くこと

    特に葉が濡れたままの状態が長引くと感染が拡大しやすく、逆に葉が乾いている状態では発生しにくいとされています。そして何より、一株でも感染が始まると、風や雨を介して他の株へと一気に広がっていくのがべと病の怖さです。

    【べと病の予防と対策】

    べと病は一度かかってしまうと葉の病斑は回復せず、収量にも大きく影響します。だからこそ事前の予防が非常に重要です。ここでは、環境対策・農薬の使用・肥料管理・発生後の対応という4つの視点から解説します。

    環境対策

    まず大切なのは、作物を育てる環境を整えることです。べと病は湿気が多く、風通しが悪い場所で発生しやすくなります。具体的には次のポイントに注意しましょう。

    ・密植を避ける

    ・過湿を防ぐために排水環境を整える

    ・ハウスでは換気をしっかりと行う

    ・連作は避け、土壌からの感染を防ぐ

    また、畑では敷わらやビニールマルチを活用することで、地表の水滴が葉に跳ね返るのを防ぎ、感染のリスクを下げることができます。

    農薬の使用

    次に重要なのが、適切なタイミングでの農薬の使用です。梅雨時期や秋雨のような曇天・多湿の環境が続く場合には、事前に薬剤を散布しておくことが有効です。べと病菌は葉の表面・裏面の気孔から侵入するため、葉の表裏にムラなく散布することがポイントです。

    べと病向けの薬剤には、葉の中に浸透しやすいもの、効果が持続しやすいもの、雨に強いものといった特徴を持つものがあります。初期であれば、治療効果を持つ薬剤で抑え込める場合もあります。ただし、同じ系統の農薬ばかりを繰り返し使っていると耐性菌が発生する恐れがあるため、異なる系統の農薬をローテーションで使用することが大切です。

    肥料管理

    肥料の与え方もべと病の発生に影響します。特に注意したいのが窒素の過剰施肥です。肥料を与えすぎると葉が大きく茂り、軟弱に徒長して病気に弱い作物になってしまいます。反対に、肥料が少なすぎても草勢が弱まり、病害への抵抗力が低下します。肥料は作物ごとに適切な量を、適切なタイミングで与えることが重要です。

    特に微量要素は不足しがちで注意が必要です。例えばカルシウムが不足すると細胞壁が弱くなり、病原菌の侵入が容易になります。バランスの取れた栄養管理が、物理的・生理的なバリアの強化につながります。

    発生してしまった場合の対処

    予防していても発生してしまうことはあります。その場合は、感染拡大を防ぐための迅速な対応が求められます。まずは感染が広がらないよう、被害株を早期に圃場から取り除き、焼却や埋却処分などで確実に処理しましょう。放置しておくと、病原菌が風や雨で圃場全体に広がるリスクがあります。

    感染株の除去後には、薬剤を圃場全体に散布して病原菌を抑える処理も大切です。これは病原菌を翌年に持ち越さないための、いわば仕上げの予防といえます。なお、病気が発生してからでは薬剤の効果は限定的です。あくまで予防を中心に捉えた管理体制が基本になります。

    【炭疽病とは ― コレトトリカム属の糸状菌による病害】

    炭疽病は非常に多くの作物で発生する病気の一つです。放っておくと畑全体へ一気に感染が広がり、収穫量や品質の大きな低下につながるため注意が必要です。

    炭疽病は、カビの一種である炭疽菌によって引き起こされ、葉・茎・果実などあらゆる部位に感染するのが特徴です。代表的な症状は次のとおりです。

    ・葉の表面にざらつきが出る

    ・黒っぽい病斑が現れる

    ・葉に穴が開く

    ・果実表面が黒く変色し、最終的に腐敗する

    これらの病斑は徐々に広がり、最終的には収穫できない状態にまで悪化します。たとえ収穫時に外観がきれいでも、出荷後に菌が活性化して腐敗することもあるため、特に注意が必要です。また、果実だけでなく、株そのものを枯らしてしまうほどの被害をもたらすケースもあります。

    炭疽病はコレトトリカム属の糸状菌によって引き起こされ、果実や茎に黒いくぼみや輪紋が現れるのが特徴です。野菜・果樹のどちらにも発生する厄介な病気で、特に果菜類や果樹などで多く見られ、高温多湿の環境で発生が助長されます。

    炭疽病が発生する仕組み

    炭疽病は、空中を漂う病原菌が作物に付着することで感染が始まります。病原菌の多くは前年の作物の残渣や落ち葉などに潜んで越冬し、梅雨や台風、強風などをきっかけに雨風によって畑へと運ばれてきます。

    中でも注意したいのが梅雨明けのタイミングです。この時期は雨で飛ばされた病原菌が、特に樹勢の弱った株に定着しやすく、感染の起点となってしまう恐れがあります。そのため、株の状態をよく観察しながら、弱った箇所を重点的に管理することが重要です。

    さらに炭疽病は、一度発生すると短期間で急速に広がる性質を持っています。株同士の距離が近い場所で見つけた場合は、他の健康な株へ伝染する前に迅速な対処が求められます。特に気温が25度前後で湿度の高い梅雨や秋雨の季節には、畑をこまめに見回り、早期発見・早期対応を徹底することが炭疽病対策の基本となります。

    【炭疽病の予防と対処】

    炭疽病は一度発生すると、病斑が出ている部分の回復は見込めません。そのため、そもそも発生させない予防が最も効果的な対策です。予防の視点からは、大きく環境対策と農薬の使用の2つに分けられます。

    環境対策

    まず、作物を育てる環境を整えることが第一歩です。圃場では風通しをよく保つことが基本となり、ハウス栽培の場合は天窓や側面のビニールをこまめに開けて換気を行いましょう。

    次に重要なのが排水対策です。炭疽病は、雨や冠水による水跳ねをきっかけに菌の分生子が飛散し、感染することがあります。そのため、雨除けの設置や高設栽培の導入といった方法も有効です。菌を飛ばさない、跳ね返さない環境づくりが予防につながります。

    農薬の使用

    農薬の使用も炭疽病の予防手段として有効です。散布のタイミングや使用方法は作物の種類や症状によって異なるため、最新の農薬登録情報を確認した上で、適切に使用するようにしましょう。

    発生してしまった場合の対処

    いくら予防を行っていても、完全に発生を防ぐのは難しいのが現実です。万が一発生してしまった場合、炭疽病が発生した株は速やかに取り除くことが鉄則です。病斑が小さい場合には該当部位だけを切除する処置でも構いませんが、広範囲に広がっている場合は株ごと除去する判断が必要です。

    また、切り取った病株や葉は絶対に圃場内に放置しないでください。放置すると菌がその中で越冬し、翌年再び感染源になる恐れがあります。圃場の外に持ち出し、焼却または埋却など適切に処分しましょう。

    炭疽病が発生した後に使用する農薬には、予防効果のある薬剤と治療効果のある薬剤の2つのタイプがあります。発生後は治療剤の使用が基本となりますが、一度感染した部分を完全に回復させることは難しいため、周囲への感染拡大を防ぐために薬剤を使用するという考え方が重要です。さらに、発症した圃場では土壌に残った病原菌にも注意が必要で、発症株の除去後に薬剤を散布し、翌年の再発を防ぐための処理を行うことも忘れないようにしましょう。

    【うどんこ病とは ― 葉に白い粉状のカビが出る病害】

    うどんこ病とは、葉に白い粉状のカビが付着することから始まる真菌性の病気です。その原因となるのは、うどんこ病菌と呼ばれるカビの一種で、糸状菌の中でもエリシファレス目に分類され、うどんこカビ科というグループを形成しています。この病原菌は植物の表面に寄生し、菌糸を伸ばしながら栄養を吸収して、徐々に感染を広げていきます。

    日本国内では11属、260種類以上のうどんこ病菌が確認されており、種類によって感染しやすい作物も症状の出方も異なります。感染した部位から周囲へと広がっていくのが特徴です。

    症状の進行

    症状の進行は次のような流れで見られます。

    ・最初は葉の表面に白い斑点が点在する

    ・徐々に斑点が広がり、粉をまぶしたような状態に変化する

    ・病気が進むと葉に縮れやねじれといった変形が現れる

    ・最終的には葉が黄色く変色し、枯死に至ることもある

    発生しやすい作物と環境

    うどんこ病菌は被子植物の中でも、特に双子葉植物に寄生することで知られています。特に注意が必要なのは次のような作物です。

    ・果菜類:きゅうり、ズッキーニ、スイカなどのウリ科作物、トマト、ピーマン、ナスなど

    ・草花:バラ、コスモス、スイートピーなど

    ・果樹・果実類:イチゴ、メロン、ブドウなど

    一方で、裸子植物の松やイチョウ、単子葉植物のイネやトウモロコシでは、うどんこ病の発生事例は報告されていません。また、うどんこ病菌は寄生する植物の種類によって菌の形が異なるため、一つの作物から他の作物へ感染が広がることは基本的にありません。

    気象条件にも特徴があります。うどんこ病菌は一般的なカビと違い、葉面が乾いていても感染を広げやすく、湿度がやや低めでも発生する点が特徴です。逆に、梅雨時期や夏の高温多湿の環境では活動が鈍り、発生しにくくなります。

    さらに、作物の健康状態も重要な要因です。日照不足や肥料不足などで株の生育が衰え、ストレス状態にある株はうどんこ病菌の侵入を受けやすくなります。作物の成長が遅い、元気がないと感じた場合は、うどんこ病を含めた病害への予防・対策を早めに講じることが大切です。

    【うどんこ病の予防と対処】

    うどんこ病は進行すると葉が黄変し、最終的には枯死に至るケースもあるため、日頃からの予防と発生時の迅速な対応が求められます。

    環境対策

    まずは風通しの良い環境を保つことが基本です。うどんこ病菌は通気性の悪い場所を好むため、ハウス栽培ではこまめな換気を、露地栽培では枝や葉の剪定などで空気の流れを確保しましょう。

    また、うどんこ病菌は乾燥した環境を好むという特徴があります。作物への適切な灌水管理に加えて、通路などにも水をまいて湿度を保つことが、感染拡大のリスクを下げるポイントです。

    農薬の使用

    うどんこ病の予防には、病原菌の発生や定着を防ぐ農薬の散布が有効です。使用の際は作物ごとに登録された農薬を選び、ラベルに記載された内容をしっかりと確認しましょう。散布は主に葉の表面と裏面の両方に行うことが基本で、まんべんなく丁寧に散布することで効果的に菌の侵入を防ぐことができます。

    なお、発生してしまった場合、ただ表面のカビを取り除くだけでは不十分です。目に見える白い粉状のカビが消えても、病原菌の菌糸や胞子は葉の表面の隙間や葉の内部に残るため、完全な防御には殺菌剤の適用が欠かせません。

    発生してしまった場合の対処

    まず行いたいのが、発症した葉の除去です。感染部分を取り除くことで胞子の再飛散を防ぐことができます。除去した葉は圃場内に放置せず、必ず畑の外へ持ち出して処分しましょう。圃場内に残してしまうと、そこから再感染する恐れがあります。

    葉の除去が難しい場合や感染の広がりが懸念される場合には、殺菌剤の散布が有効です。うどんこ病は、発生していない株にもすでに菌が寄生している可能性があるため、圃場全体にまんべんなく散布することが重要です。また、同じ系統の農薬を使い続けると病原菌が耐性を持つ可能性があるため、作用機構の異なる農薬をローテーションで使用するのが効果的です。

    【病気に強い作物づくりを支えるバイオスティミュラント】

    近年の農業現場では、ここまで紹介した病害への対策の一つとして、バイオスティミュラントという資材の活用が注目されています。ただし、ここで非常に大切な前提があります。

    バイオスティミュラントは、農薬の代わりになるものではありません。これを使えば病気が防げる・治るといった、農薬と同じ効果を期待するものではない、という点をまず明確にご理解ください。あくまでバイオスティミュラントは、病気そのものを直接防御するものではなく、作物が本来持っている力を引き出し、健全に育つことを支える資材です。

    人間に例えるなら、病気になったときにまず薬を飲んで病原体をやっつけ、その後、体力が落ちた病み上がりの状態から元の元気な状態に戻すには、栄養や睡眠などの回復サポートが必要です。バイオスティミュラントは、まさにこの回復力を支える側の存在といえます。

    基本のバイオスティミュラント資材 テカミンマックス

    テカミンマックスは、アミノ酸を主成分とするバイオスティミュラントで、窒素6%、遊離アミノ酸12%を含有しています。特にグルタミン酸やアラニンなどのアミノ酸を豊富に含み、タンパク質合成や代謝を助ける働きに優れています。

    また、植物のストレス応答に関わるプロリン合成や抗酸化物質の生成にも関与し、細胞膜や葉緑体の健全性を維持しやすくなります。植物は病原菌の侵入を受けると、サリチル酸やジャスモン酸などの防御ホルモンを介して局所的・全身的な防御応答を開始しますが、テカミンマックスがこうしたシグナル経路に間接的に影響を与える可能性が報告されており、ストレス下でも植物の免疫力が底上げされることが期待できます。

    主な特徴は次のとおりです。

    ・作物の樹勢の回復・維持をサポートする

    ・曇天や日照不足の条件でも、肉質や粘りの維持に効果がある

    ・農薬と混用可能で、薬害を緩和し相乗効果も期待できる

    ・遊離アミノ酸のため吸収が早く、速応性がある

    それぞれの病害に対するアプローチ

    べと病に対しては、病害そのものではなく、病気にかかりにくい健全な株づくりに寄与します。天候に左右されずに生育を促し、発症リスクを抑える土台づくりに役立ちます。

    炭疽病に対しては、樹勢が落ちた株から感染が広がりやすいという性質に対し、樹勢の維持と回復力の強化を図り、初期症状からの立ち直りを支える資材として活用されています。実際に、キュウリ栽培において炭疽病の発生が抑えられた事例も確認されています。

    うどんこ病に対しては、日照不足や肥料不足などで作物の体力が落ちたときに発症しやすいという性質に対し、非生物的ストレスを軽減し、健康な状態の維持を後押しします。結果として、発症リスクを下げる予防的なアプローチに活用できます。

    テカミンマックスは、病気を直接防ぐのではなく、作物の健全性を保ち、耐病性を底上げするアプローチとして、さまざまな病害に対応する現場で導入が進んでいます。

    【まとめ ― 予防を軸に、病気に強い作物づくりを】

    べと病・炭疽病・うどんこ病は、いずれもこの時期に発生しやすく、一度発生すると病斑部の回復は見込めない病害です。だからこそ、病気を未然に防ぎ、収量や品質を守るためには、日々の環境づくり、正しい農薬の使い方、栄養管理、そして発生時の早期対応が何より重要になります。

    さらに、病気に強い作物づくりを支えるバイオスティミュラントも、これからの農業において大きな役割を果たしていく資材の一つです。予防を軸とした管理に取り入れながら、作物を健康に育てていきましょう。

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