植物における微量要素の重要性と実践Vol.3(全4回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】農業におけるアミノサイエンスvol.2 キレート材としてのアミノ酸製品紹介 テクノケルCaB、テクノケル・アミノミックス スペイン技術者が科学的見地からの徹底解説」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

前回Vol.2では、カルシウムと同じく植物成長に欠かせないとされるホウ素が、細胞壁でどのような役割を果たしているのか、ホウ素が不足すると植物の成長にどのような影響を与えるのかについて詳しく解説しました。

Vol.3となる今回は、カルシウムとホウ素が配合されているバイオスティミュラント製品である「テクノケルアミノCaB」について解説します。

製品の利点などの基本情報や、植物成長への貢献度、適切な施用タイミングなど、テクノケルアミノCaBを利用する際に知っておくと役立つ情報を具体的にお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

目次

    テクノケルアミノCaBの利点

    テクノケルアミノCaBの活用には次のような利点があります。

    • 栄養吸収の促進
    • 浸透率の向上
    • 効率性の向上

    テクノケルアミノCaBの大きなポイントは、そのアミノ酸の働きにあります。以下ではテクノケルアミノCaBでカルシウムとホウ素を補給する利点について詳しくお伝えします。

    テクノケルアミノCaBの製品概要

    まず初めにテクノケルアミノCaBの基本情報から確認しましょう。

    製品名 テクノケルアミノCaB
    保証成分
    (カッコ内は
    その他成分)
    窒素全量8.0%内アンモニア性窒素1.0%
    硝酸性窒素4.0%
    水溶性石灰8.0%
    水溶性ほう素0.35%
    (遊離アミノ酸5%)

    テクノケルアミノCaBは、細胞壁の構成に不可欠なカルシウムとホウ素を配合したアミノ酸キレート剤です。保証成分として窒素や石灰、ホウ素、アミノ酸が配合されています。不足しがちなカルシウムとホウ素の補給を目的としており、アミノ酸の働きによって、効率的なカルシウムとホウ素の供給が可能です。これによりカルシウム欠乏症やホウ素欠乏症を抑え、葉の成長や結実時のアシストなど植物の成長プロセスに効果的に作用します。アミノ酸により葉面から細胞膜へとすばやく吸収され、正常な細胞壁の構築に貢献することで植物の健康状態を改善します。品質の低下を抑え、収量増も期待できる製品です。

    テクノケルアミノCaBの詳しい製品情報はこちら

    [栄養吸収の促進]

    テクノケルアミノCaBの利点のひとつは栄養吸収の促進にあります。アミノ酸でキレート化されたカルシウムは安定的な状態に保たれた水溶性のため、土壌から吸い上げられる他の栄養素と結合しにくくなります。

    また、アミノ酸は植物にとって吸収しやすい物質です。キレート剤として機能することで、カルシウムだけの状態よりも細胞へと容易に吸収されやすくなっています。加えて、エタノールアミンで錯体化されているホウ素も同様です。アミノ酸との錯体により、植物はより多くの栄養素を吸収しやすくなります。アミノ酸は細胞膜に対しても透過性が高いため、栄養吸収の効率化に大きく寄与しています。

    [浸透性の向上]

    次に、栄養素の浸透性の向上という利点があります。テクノケルアミノCaBに含まれているカルシウムはアミノ酸でキレート化されているため、カルシウム水溶液よりも細胞内への浸透率が向上しています。これはアミノ酸の分子量、つまりアミノ酸のサイズが小さく、キレート結合の強さが適度であるからです。

    アミノ酸以外のキレート剤では、サイズが大きくクチクラ層を通過できなかったり、あるいは細胞まで到達してもキレート強度が強すぎて細胞が栄養素を吸収できない状態になったりと、栄養吸収のうえで満足できる結果に至らない可能性があります。しかし、アミノ酸であればサイズも小さくキレート強度も適度であるため、補給した施用素を無駄なく細胞に吸収させられます。

    なお、栄養素を葉面に施用し細胞内に吸収させるには、クチクラ層などいくつかの層を通過する必要があります。その際、クチクラ層はマイナス電荷で帯電しているため、プラス電荷をもつ栄養素ではクチクラ層のマイナス電荷に引っかかってしまい、細胞までたどり着けません。このような場合も、アミノ酸でキレート化することにより電荷を帯びなくなるため、クチクラ層のマイナス電荷に左右されることなく細胞まで到達できます。

    このように、テクノケルアミノCaBはカルシウムとホウ素の細胞への浸透率に大きく貢献しています。

    [効率性の向上]

    アミノ酸キレートによる栄養吸収の吸収と浸透率の向上により、結果的に生産活動全体の効率が上がります。テクノケルアミノCaBは葉面散布剤であるため、より広範囲への散布が可能です。また、アミノ酸の働きでより多くの栄養素を細胞まで到達させられるため、根からの吸収に比べると非常に効率的です。

    加えてアミノ酸は、キレート剤としての役割以外に、植物の成長エネルギー源としての役割も持っています。したがって、テクノケルアミノCaBならカルシウム、ホウ素、アミノ酸と、植物の健全な生育に必要な要素を一度に施用できるという利点もあります。

    アミノ酸は光合成や成長プロセスに深く関わっています。植物は成長の過程でアミノ酸を吸収したり合成したりしながらエネルギー源として各器官に分配します。そのため、テクノケルアミノCaBを通じてアミノ酸が供給されることにより、成長プロセスが活性化するのです。

    テクノケルアミノCaBは、カルシウムとホウ素を効率よく吸収させるだけでなく、それらのキレート化に貢献しているアミノ酸自体も植物の健全な成長を支えています。 

    テクノケルアミノ 

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    栄養素の適切な管理

    植物が病気やストレスの影響を受けず健康に育つには、適切な管理が大切です。何の栄養素をどのタイミングでどれくらい与えれば良いのかについて、あらかじめ把握しておく必要があります。

    栄養不足を避けたいからといって、栄養素を常に供給する必要はありません。どの栄養素も常に供給すれば栄養過多になってしまい、かえって植物にとってダメージとなる可能性があります。栄養不足や栄養過多になるリスクを下げるためにも、適切なタイミングで適切な量を施用するようにしましょう。

    テクノケルアミノCaBにも推奨される施用タイミングがあります。施用方法と合わせて確認してください。

    [施用タイミング]

    テクノケルアミノCaBの施用タイミングは、細胞分裂期と拡大期の2回です。この時期は通常の根からの吸収だけでは植物全体での消費量が間に合わず、欠乏症になる傾向があります。細胞分裂期と細胞肥大初期は細胞分裂が活発になるため、細胞壁を形成する際に多量のカルシウムとホウ素が必要となります。欠乏症の予防のためにも、細胞分裂期と拡大期の2回に分けて散布しましょう。

    なお、テクノケルアミノCaBは欠乏症の予防だけでなく改善にも効果的です。症状がみられた際に施用すると、健康状態の回復も期待できます。

    使用量に関しては以下をご覧ください。

    果菜類・果樹 着果初期〜肥大初期:10aあたり200〜300mlを希釈して葉面散布
    葉菜類 定植後〜肥大期:10aあたり200〜300mlを希釈して葉面散布
    植物全般 欠乏症がみられるとき:10aあたり300mlを希釈して葉面散布

    [施用方法]

    テクノケルアミノCabの施用方法について見てみましょう。

    施用方法 葉面散布
    施用量 10aあたり200〜300ml
    希釈倍率 500〜1000倍程度

    テクノケルアミノCaBは葉面散布剤ですので、土壌面積に合わせて希釈し散布してください。ブロッコリーやキャベツなどの葉菜類や、トマト、ナス、イチゴなどの果菜類、ブドウやリンゴを含む果樹類など、様々な植物への施用が可能です。

    以下に施用例として夏イチゴの栽培の事例を紹介します。

    こちらの夏イチゴは採苗時点でミネラル欠乏が著しく、成長が止まっている状態です。全体的に葉に黄化の症状がみられます。そこで、他のアミノ製品とともに1000倍に希釈したテクノケルアミノCaBを7日おきに葉面散布したところ、再び成長し始めたうえに葉の黄化症状も改善しました。

    このように、すでに症状がみられる状態においても、適量を散布することで健康状態の回復に大きな効果を発揮します。

    [栄養供給バランスの重要性]

    これまで葉面からの栄養吸収を中心に解説してきましたが、植物は本来、根から栄養を吸収します。そのため基本的には、土壌の環境や栄養素バランスが常に整っており、根から植物の先端まで栄養素が行き渡ることが理想的です。

    ただ、自然環境である以上、様々な要因によりその環境が乱れる可能性があります。そうなると必要な栄養素が根から吸収されず、成長プロセスに支障が出てしまいます。カルシウムやホウ素のように、成長段階で多量に必要となるため、限定された部位だけに供給が留まってしまう場合もあります。こうした事態に対応するには、植物の状態を正しく把握したうえで、根からだけではなく葉面からの施用も検討することをおすすめします。

    カルシウムとホウ素はその性質上、土壌からの吸収だけでは根から遠い細胞まで届かず、飢餓状態が常態化する傾向にあります。この状態を解決するには葉面散布による補給が最適です。葉面からの散布であれば一度に広範囲の葉に施用でき、かつ偏ることなくすべての細胞に吸収されるため、より健康的な生育が見込めます。

    土壌中の栄養素は根から、不足しがちな栄養素は葉面からと、土壌と葉面の両方からバランスよく栄養を吸収することが、作物の健康的な成長の秘訣といっても過言ではありません。 

    テクノケルアミノ

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    植物を一定の品質を保った状態で育て、最大収量を得るには、適切な栄養素管理が必須となります。植物が成長するには多くの栄養素が必要であり、また必要な量も必要な時期も植物によって異なります。同じ植物でも、天候や土壌など生育環境によっても左右されるでしょう。栄養素が不足すれば植物に環境ストレスや栄養不足の症状があらわれ、品質や収量の低下につながります。

    しかし、だからといって多量の栄養素をやみくもに与えるのは好ましくありません。特にホウ素のような微量要素は、収穫までの間に常に必要というわけでも、欠乏症状が現れた時だけ補給すれば良いというわけでもないのです。

    その理由は、植物の栄養素濃度に関係します。以下のグラフをご覧ください。これは栄養素濃度と植物の収量の関係を示したものです。

    グラフからもわかるように、栄養素の供給量を増やして栄養素濃度を高めることで、植物の収量は増大します。植物内で利用できる栄養素が多いほど細胞分裂が促され、葉や果実が成長するからです。反対に、植物内の栄養素が足りず欠乏症の症状がみられるようであれば、おのずと成長度合いは低下し収量も低くなります。潜在的な最大収量には遠く及びません。

    最大収量を目指すためには、隠れた飢餓状態とならないよう、適切な栄養素の補給が必要となります。ただし、最大収量には限度があります。収穫量を示すグラフが一定の高さで止まっているように、限度を超えて栄養を与え続けても収量は増加せず、ただただ無駄に消費しているだけとなるのです。この状態は植物にとっても生産者にとっても望ましくありません。

    実際に見た目だけで隠れた栄養不足を正確に判断し、最大収量の限度を見極めることは困難です。それゆえ、定期的に葉面散布し栄養状態を管理することが重要なのです。 

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    まとめ

    Vol.3となる今回はテクノケルアミノCaBについて詳しく解説しました。テクノケルアミノCaBは主にカルシウムとホウ素の補給を目的としたアミノ酸キレート剤です。

    テクノケルアミノCaBを施用する利点は、栄養吸収の促進による浸透率の高さにあります。アミノ酸の特性を活かし、葉面から細胞壁へと効率よく栄養素を供給します。

    施用するタイミングは、細胞分裂期と細胞肥大期の2回、あるいはカルシウムやホウ素欠乏症を確認したときです。目に見える症状以外にも、栄養不足の症状がおもてにあらわれない隠れた欠乏症になっている可能性もあるため、定期的な葉面散布が推奨されます。

    生育環境や植物の健康状態によっては、土壌からの吸収のみでは栄養が不足してしまうことも考えられますので、土壌と葉面からの栄養素供給のバランスが大切です。植物の健全な成長なくしては品質向上や収量増加は期待できません。植物の状態をみながら栄養供給をおこない、計画的に管理するようにしましょう。

    次回、最終回となるVol.4では、引き続きテクノケルアミノCaBについて解説します。テクノケルアミノCaBが作物の品質と収量に与える影響や、生産者が直面する具体的な栄養素関連の課題と解決策、またカルシウムとホウ素についても改めて触れますので、ぜひ次回もご覧ください。 

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    【次回Vol.4はこちら↓】

    植物における微量要素の重要性と実践Vol.4(全4回) (agritecno-japan.com)

    【過去の記事はこちら ↓ 】

    植物における微量要素の重要性と実践Vol.2(全4回) (agritecno-japan.com)

    植物における栄養吸収、微量要素吸収の重要性と実践Vol.1(全4回) (agritecno-japan.com)

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