植物における微量要素の重要性と実践Vol.2(全4回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】農業におけるアミノサイエンスvol.2 キレート材としてのアミノ酸製品紹介 テクノケルCaB、テクノケル・アミノミックス スペイン技術者が科学的見地からの徹底解説」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

前回の記事では、植物にとって必要不可欠であるカルシウムが植物成長に果たす役割や、カルシウムが不足した場合に起きる成長プロセスへの影響と解決策、栄養管理やテクノケル製品の活用法について詳しく解説しました。

Vol.2となる今回はホウ素について掘り下げて解説します。カルシウムと同じく植物成長に欠かせないとされるホウ素が細胞壁でどんな役割を果たしているのか、ホウ素が不足すると植物の成長にどのような影響を与えるのかについて詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】

目次

    ホウ素の役割と植物に与える影響

    ホウ素は、自然界ではホウ酸塩として海水や石灰などに存在している物質です。植物が成長するために不可欠な栄養素であり、特に細胞壁の構造に大きく貢献しています。カルシウムほど多量ではありませんが、植物は水に溶けたホウ素を根から吸収し、各器官の細胞へと運んでいます。

    ホウ素は細胞壁内において、カルシウム同様、細胞壁の維持などにおいて重要な役割を果たします。

    • 細胞壁の機能維持(ペクチン架橋形成を促進)
    • シグナル伝達機能

    また、前回カルシウムの栄養吸収における問題点として移動性の低さを挙げましたが、ホウ素にも同じことが当てはまります。水と共に運ばれるものの、移動性が低く、先端まで運ばれにくいといった問題があります。この点においても、カルシウムとホウ素は似たような性質を持っているのです。

    では実際に、ホウ素が細胞壁の構造と機能にどのように貢献しているか、ホウ素不足が植物にどのような影響を与えるのかについて解説していきましょう。

    ホウ素の役割①細胞壁の強度強化

    ホウ素のひとつめの役割は細胞壁の強化です。細胞壁内でセルロースを束ねるペクチン成分と結合し架橋することで、細胞壁の強度を高めています。またバネのような働きもあることから、細胞壁に柔軟性を持たせる役割も果たしています。

    ホウ素は量的には細胞壁の主要な構成成分ではありませんが、80〜90%の場所に存在し特定の機能、特にペクチン架橋において重要な役割を果たします。この架橋により細胞壁はその強度と柔軟性を維持できるなど、ホウ素はカルシウム同様、植物の健康と成長にとって非常に重要です。

    ではここで、改めて細胞壁の構造を見てみましょう。

    この図にあるオレンジの太い繊維上の物質が、細胞壁の主成分となるセルロースです。セルロースの外側を囲むように、輪を作り絡みついている赤い物質がペクチンです。さらによく見てみると、ペクチン同士は黄色のカルシウムで結合されています。同じく、図の中央部にあるホウ素もペクチンに結合し、架橋の役割を果たしています。

    このように、ホウ素もカルシウムと同様、ペクチンとの結合により細胞壁を強化し柔軟性を高めるという重要な役割を担っているのです。

    細胞分裂により植物が成長するには多量のカルシウムを必要としますが、ホウ素の場合はごく微量で事足ります。ホウ素とカルシウムが同様に細胞壁を維持する役割を担っていますが、その機能は生化学的には異なるプロセスであり、またホウ素は少量で多くのペクチンを結合させる力を持っているため、カルシウムほど多量を必要としません。

    そのため、テクノケルアミノ製品の「テクノケルアミノCaB」はカルシウムの含有量を多くし、ホウ素とのバランスを調整しています。

    ホウ素の役割②機能の維持

    ふたつめの役割は、細胞壁の機能の維持です。ペクチンはホウ素との結合により架橋され、セルロースを支えています。ホウ素が不足するとペクチンは役割を果たせなくなり、細胞壁の強度に深刻な影響を与えます。

    ホウ素は、細胞壁の機能を維持するために必要な栄養素です。植物は根から栄養を吸収し各器官の細胞に栄養素を運び、成長エネルギーをもとに細胞分裂を繰り返して成長していきます。この成長プロセスがおこなわれ続けるには、細胞壁の強度や柔軟性が必要となります。

    ホウ素が不足すれば、細胞壁は強度や柔軟性を失ってしまい脆くなるため、成長プロセスへの影響は免れません。細胞分裂時に細胞壁が作られなくなったり、細胞分裂自体が阻害されてしまったりと健康的な成長が困難となり、ホウ素欠乏症を発症してしまう可能性があるのです。

    加えて、細胞壁には細胞内を保護する重要な役割があります。細胞壁が壊れたり緩んだりすることにより、細胞内部の養分や水分が流れだす可能性があります。そうなれば細胞は脱水状態となり、植物全体が乾燥ストレス状態となってしまうでしょう。その結果ストレスに対する抵抗力を失い、たちまち植物はストレス状態へと進行していくのです。

    ホウ素には、ストレス耐性を向上させる役割があるとされています。細胞壁の中でペクチンを架橋しながらも、乾燥ストレスや塩害ストレス、金属ストレスといった多くのストレス耐性にも機能し、細胞や植物全体を保護しているのです。

    細胞が様々なストレスに対処し正常に働き続けていくには、細胞壁がしっかりと構築されていなければなりません。細胞壁の機能を維持していくためにも、ホウ素の役割は不可欠なのです。

    ホウ素不足が植物にどのような影響を与えるのか

    たとえば植物全体でホウ素が不足した場合、実際にはどのような影響を与えるのでしょうか。ホウ素もカルシウムと同じように、細胞壁では必要不可欠な栄養素です。そのホウ素が細胞壁内まで運ばれずに不足した際の影響や、ホウ素不足がもたらす症状と対策について以下に解説します。

    1、不足の影響

    カルシウムや他の栄養素と同様、ホウ素も基本的には根から水と共に吸収されます。しかし、ホウ素も栄養吸収の面で問題となることがあります。それは、吸収後の植物内での移動性の低さです。カルシウムと同じように移動性が低いため、上部や各部位の先端へと届かない可能性があります。

    ホウ素の必要量は微量ではありますが、先ほども述べたように細胞壁の構成には欠かせません。細胞壁の機能維持や植物のストレス耐性を高め、植物の健康を維持したまま成長させるために必須の栄養素です。それゆえ、特に先端部位でのホウ素不足は、花や果実の成熟に大きく影響します。

    カルシウムが不足するとカルシウム欠乏症が起こるように、ホウ素も植物内で不足するとホウ素欠乏症という成長障害を引き起こします。

    そもそも、ホウ素は細胞壁の機能強化や維持の他に、光合成や繁殖といったプロセスにも貢献しています。

    その中の繁殖においては主にホウ素、亜鉛、モリブデンの3つの栄養素が寄与しており、受粉や結実においてそれぞれ重要な役割を担っています。

    • ホウ素:花粉管の成長と伸長を支援し、これが受粉率と受精の成功を高める(細胞壁の構造維持への関与、細胞間の伝達)
    • 亜鉛:植物の成長と発育に必要な酵素の活性を高め、特に花粉の形成と発育を促進(植物の成長と発育の必要な酵素の活性化に関与)
    • モリブデン:窒素代謝を助けることで、健康な受精を支える種子や果実の形成に貢献

    こちらの図は受粉時の様子をイラストにしたものです。植物が受粉すると上部から内部へ花粉管が伸長し、卵細胞に到達することにより受精をおこないます。この、花粉管の伸長にホウ素が関与しています。ホウ素が不足すると花粉管の伸長が止まったり、伸長速度が低下したりと影響がでてしまい、受精率の低下に繋がる可能性が考えられるのです。

    ホウ素と同じように、亜鉛やモリブデンも植物の生理機能に大きく関与します。そのため、植物内でこれらの栄養素が不足すると、花粉の形成不良や結実率の低下など、花や果実に対して様々な症状があらわれます。

    ただ、花や果実に影響があったからといって、どの栄養が不足しているのかを正確に判別するのは困難です。ホウ素だけが不足しているとも限らないため、それぞれの栄養素の供給が必要不可欠です。

    2、ホウ素不足による典型的な症状と早期に識別し対処する方法

    ホウ素は受粉や結実時に大きく作用する役割があり、ホウ素が細胞に不足するとホウ素欠乏症を発症します。特に葉先や花、果実といった先端部で発症する傾向にあり、次のような症状があらわれます。

    • 受粉不良:雌しべに花粉が受粉されない
    • 葉の硬化や変色:葉が硬くなる、緑から黄色に変色する
    • 葉の枯死:先端部分が枯れて茶色くなる
    • 茎の伸長不良:茎のサイズが小さく細くなる、硬くなる
    • 果実の表面の乾燥、中心部の変色:果実の表皮が乾燥し、シワができる

    以上のような症状が確認された場合、ホウ素不足の疑いがあります。植物内での移動性の低さによるものと考えられますが、原因はそれだけとは限りません。本来、ホウ素は土壌中に存在している栄養素です。はじめから土壌に十分な量のホウ素が含まれていない場合や、雨により土壌中のホウ素が流出した場合など、そもそも土壌中のホウ素が微量である可能性があります。

    また、土壌にホウ素が豊富に含まれていても、pHや乾燥など土壌の環境が原因になることも忘れてはいけません。特に土壌のpHがアルカリ性に偏っていると根がうまく吸収できず、不足状態となってしまう可能性があるのです。

    ホウ素欠乏症は早期発見し、早めに対処するのがポイントです。先ほどのような症状が出ていないか、植物をよく観察しましょう。症状が深刻になる前に、対策を施す必要があります。同時に、ホウ素は過剰障害が発生する微量要素でもあり、その症状は欠乏症とよく似ています。例えば、葉焼けや葉の枯死はホウ素欠乏症でもホウ素過剰でも発生します。ホウ素過剰の症状をホウ素欠乏と判断し、更にホウ素を追肥で散布したような場合は、植物の症状を更に悪化をさせる危険があります。

    解決策としては、ホウ素水溶液による葉面散布が望ましいでしょう。症状を悪化させないよう、ホウ素を植物全体に補給し、すばやく細胞壁へ運ぶ必要があるからです。

    根からの吸収ではホウ素の移動性が障壁となり、先端の細胞まで到達するのに時間がかかりますが、葉面散布であれば一度に広範囲の補給が可能です。根から遠い葉や花、果実まで、隅々まで行き渡らせることができます。

    土壌環境の改善も視野に入れつつ、ホウ素不足を補うホウ素水溶液の施用を検討ください。

    カルシウムとホウ素についてまとめ

    Vol.1、2の2回にわたり、植物栄養におけるカルシウムとホウ素について解説しました。カルシウムとホウ素のどちらも、植物が成長するためには必要不可欠な栄養素であることがおわかりいただけたでしょう。

    これら2つの栄養素はいずれも細胞壁を構成する要素であり、細胞壁の主成分となるセルロースを結合させるペクチンを架橋する役割を担っています。それにより、細胞壁の強度を高め、柔軟性をもたらしています。

    植物が成長するためには、細胞分裂が必須です。根より運ばれた栄養を各細胞が吸収することで大きく成長し、細胞分裂により新しい細胞を生み出します。当然、細胞分裂するたびに細胞壁は作られるため、細胞壁を構成するカルシウムとホウ素が重要であり、必要不可欠となるのです。

    したがって、カルシウムやホウ素が不足すると細胞壁の形成に支障をきたし、成長プロセスにおいて様々な弊害が生じます。たとえば、カルシウム欠乏症やホウ素欠乏症と呼ばれる症状です。葉の変色や枯死、果実の変色、裂果、尻腐れ病など植物の先端に影響が及びます。これは、カルシウムとホウ素の栄養吸収面での問題によるものです。

    どちらの栄養素とも根から吸収され、水に溶けた状態で植物内に運ばれています。しかし、移動性が低い性質のため、根に近い下部の細胞に吸収されやすい傾向にあります。結果、上部や葉、果実といった先端の細胞にまで必要量が運ばれず、不足状態となってしまうのです。

    細胞壁内でカルシウムとホウ素が不足すると、強度や柔軟性の維持ができずに細胞壁はゆるみ、脆い状態となります。結果的に、細胞内に蓄えていた養分や水分の流出や外部からのウイルスや害虫の侵入に抵抗できず、植物の健康状態に影響を及ぼすでしょう。また、細胞壁が正常に形成されなくなることで細胞自体が変形し、葉や果実にその症状が反映されてしまうことも十分に考えられます。

    さらにホウ素にいたっては、亜鉛とモリブデンと合わせて受粉や結実といった繁殖プロセスに大きく貢献する役割も担っています。受粉量や結実の良し悪しや果実の成熟は、直接的に収量や品質に影響します。

    このように、カルシウムとホウ素は植物成長にとって重要な栄養素であり、不足しないように計画を立てて管理する必要があるのです。とはいえ、カルシウムもホウ素も常時与えるべきものではありません。供給過多とならないよう、タイミングと補給量に注意が必要です。

    カルシウムもホウ素も、土壌からの吸収では植物全体に運ばれるまでに時間がかかるため、葉面散布での補給が適しています。葉面散布には様々な点においてアミノ酸キレート剤が適しています。テクノケルアミノCaBには、キレート化されたカルシウムや錯体化されたホウ素を配合したバイオスティミュラントのため、カルシウムとホウ素の欠乏症の予防や症状の改善が期待できます。

    そこで次回のVol.3では、テクノケルアミノ製品について詳しく解説します。テクノケル製品を施用することで栄養吸収においてどのような利点があるのか、栄養素の適切な管理方法など活用方法をお伝えしますので、どうぞご期待ください。

     

     

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