植物の⽣産性を⾼める秘訣:テカミンブリックスの科学 Vol.1(全3回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Tecamin Brixにはどういった効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

今回から3回にわたり、果物に最適なバイオスティミュラントであるテカミンブリックスについて紹介します。テカミンブリックスにはどのような成分が含まれているのか、また、それぞれの成分が植物に対してどのような効果があるのかを詳しく見ていきましょう。 

テカミンブリックス

 

目次

    テカミンブリックスとは

    テカミンブリックスは、果物の収穫促進と品質向上を⽬的とした、先進的なバイオスティミュラントです。この製品は、カリウム、ホウ素、海藻エキス、メチオニン、多糖類などの成分を含んでおり、植物の成長と発達に重要な役割を果たします。テカミンブリックスを散布することで、果実は必要な糖度と適切な色合いに達し、早期収穫が可能になります。

    テカミンブリックス

    注⽬される理由

    現代の農業では、品質の⾼い果物を効率的に⽣産することが求められています。テカミンブリックスは、果物の⾊づきと糖度(ブリックス度)を改善することで、収穫物の市場価値を⾼めることができるため、多くの農家から注⽬を集めています。

    テカミンブリックスの効果

    農業⽣産者は、果実の不均⼀な⾊づき、低い糖度、不⼗分な収穫量などの課題に直⾯しています。テカミンブリックスは、これらの課題に対応するために設計されており、エチレン生成を促進したり、葉緑素の減少を促すことで、果実の成熟を加速させます。また、光合成の効率を⾼め、果実の糖度を⾃然に向上させることが可能です。テカミンブリックスを使うことで、果実の色づきが良くなり、糖量の増加や果実のサイズアップが期待できます。

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    テカミンブリックスの主要成分とその機能

    テカミンブリックスに含まれている主要な成分は5つあります。まず肥料成分として、カリウムとホウ素、そして有機成分としてメチオニン、海藻エキス、サッカライド(糖類)が含まれています。

    テカミンブリックスの主な役割は、果実の生育を促進することにあります。この製品は、収穫をより効率的に進めるために開発されました。具体的にいうと、この製品は果物の色の改善と糖度の向上に寄与し促進することで、果物をより早く収穫できる状態にするのです。

    果物の着色と糖度を向上させる際には、必ずしも総収穫量を増やしているわけではありません。また、糖度や色を向上させることで、果実の品質に悪影響を与えることなく収穫を促進しているという点は非常に重要です。テカミンブリックスを散布することで、果実は必要な糖度と適切な色合いに達し、それによって収穫時期を前倒しにすることができます。この早期収穫こそが、我々が重視すべきポイントのひとつです。この概念を把握するには、単に色づきを促進することと、色の質を向上させることの違いを理解することが大切です。糖度についても同様で、単に糖度を上げることと、糖度の質を高めることは異なります。

    それでは、テカミンブリックスに含まれるそれぞれの成分が、どのように果実の色の質を向上させ糖度の質を高めるのか、具体的に見ていきましょう。

    テカミンブリックスの詳細はこちら

    カリウムとホウ素

    テカミンブリックスに含まれる中で非常に重要な肥料成分であるのがカリウムとホウ素です。カリウムは、植物の光合成プロセスを支援し、糖分の合成に関与します。またカリウムは、植物内での水分の移動と電解質バランスを維持することにより、糖の間接的な分布を支援します。。一方、ホウ素は糖の直接的な輸送に関与し、師部を通じて果実や他の組織への糖分の移動を助けます。このようにして、カリウム、ホウ素ともに植物体内での糖の合成や輸送に関わる成分であり、テカミンブリックスが果実の品質を向上させる基盤を形成します。

    カリウムの主な役割は、植物内の糖分を増加させることにあります。糖は光合成を行う器官、主に葉で作られます。カリウムは光合成に関わる酵素の活性化を助け、光合成プロセスを支えます。光合成によってグルコース、すなわちブドウ糖が生産されるため、カリウムは結果として糖分の生成を促進しています。

    葉などの光合成器官で作られたブドウ糖は、そのままでは移動できないため、ショ糖に変換されます。具体的にはブドウ糖が果糖に変わり、果糖がブドウ糖と合わさってショ糖になります。このようにして変換されたショ糖は、葉などのソース細胞から師部を通って果実や根などのシンク細胞に輸送されます。このショ糖が葉から師部に移動する際に、カリウムが働き、このプロセスを増加させます。

    しかし、師部から果実へのショ糖の輸送に関しては、カリウムの効果は期待できません。例外として、植物が糖分を取り込むのに必要な酵素やタンパク質を十分に持っていないというような状況の場合は、カリウムは効果的です。このような状況では、植物はカリウムも利用して、糖分を生成する酵素が果実の細胞内に入るのを助けることができます。つまり、カリウムは、このプロセスのサポートはしてくれますが、全てを担うわけではありません。したがって、師部から果実へのショ糖の輸送には、さらに別の栄養素や刺激が必要です。

    そこで、そのひとつがホウ素です。ホウ素は、師部から果実への糖の輸送に貢献しています。

    上の図の赤い点が糖トランスポーターであり、糖が果実に浸透するのに必要な要素です。ホウ素は、これらの糖トランスポーターの発現レベルを高めることが実証されています。つまり、植物にホウ素を与えると、より多くの糖トランスポーターが生産され、糖の輸送と果実への浸透が促進されます。これは、葉から果実への糖輸送を効率的に行うためにホウ素が不可欠であることを意味しています。ホウ素は、糖が師部を通って果実や根などのシンク細胞へとスムーズに流れることを助ける重要な要素です。

    ホウ素は光合成のプロセスで必要な栄養素であり、テカミンブリックスにおいて非常に重要な役割を果たします。光合成を効率的に行うには十分な量のホウ素が必要ですが、常に植物にホウ素が足りているというわけではありません。そこで、外部からホウ素を供給することが必要なのです。

    光合成で生産されたブドウ糖や果糖などの一次糖は、ショ糖に変換されなければ移動できないことは先ほど述べました。ショ糖に変換される過程は、特定の酵素によって促進されます。この変換には、2つの酵素が活動し、その活性化と形成にはホウ素が必要とされます。植物にホウ素を供給すると、植物はより多くの酵素を生成するようになり、結果としてより多くのショ糖が生成され輸送されるようになります。

    また、ホウ素は細胞壁の構成要素であり、細胞壁をつないで植物体を丈夫にする働きがあります。テカミンブリックスの散布により細胞壁が強化され、さまざまなストレスの影響を受けにくくなります。

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    海藻エキスとメチオニン

    海藻エキスは、下図にあるように、植物内で多岐にわたる役割を果たします。植物の自然な防御システムを強化し、ストレス条件下でも植物の成長を促進します。この耐性が向上することで、果実は病気や害虫から保護され、品質が保持されます。また、海藻エキスに含まれる成分が果実の熟成を助け、糖度を高め、色づきを良くすることも知られています。

    この分野には多くの書籍や論文が存在し、柑橘類の果実の早期成熟や、ブドウの果実の品質向上について記されています。これは、糖度を上げることによって成熟を促進し、果実の品質、食味、品質全般を向上させるということです。多くの研究で、海藻エキスが食品の品質を向上させることが示されています。

    海藻エキスは、アルギン酸、ラミナラン、フコイダン、さまざまな糖類、有機物、タンパク質など多くの異なる成分を含む複合製品です。これらの成分がどのようにして果実の糖度や色を向上させるのかについての具体的なメカニズムはまだ完全には解明されていません。科学的な証拠に基づいて、海藻エキスが果実の品質向上に寄与する可能性は示唆されていますが、個別の成分がどのように作用するかはさらなる研究が必要です。アグリテクノでは、さまざまな海藻エキス原料をテストし、果実の色と糖分の増加に最も効果的なものを選んでいます。しかし、それが何の成分により効果が出ているのか、今のところ明確には特定できていません。。アグリテクノでは、効果的な成分を特定するための継続的な研究とテストを行っており、将来的にはより詳細な情報を提供できることを目指しています。

    海藻エキスには、植物ホルモンであるジベレリンのような生理活性化作用があります。これは炭水化物の輸送に重要です。茎や根にデンプンの形で蓄積された糖がある場合、このジベレリン様活性はデンプンを動員し、それをブドウ糖、果糖、ショ糖に変換するのに役立ちます。そして、変換された糖は果実に運ばれ、蓄積されます。これも海藻エキスの重要な特徴なのです。そして、このジベレリン様活性は、海藻エキスによって、また海藻エキスを生産している会社によって変化します。テカミンブリックスで使用している海藻エキスは、多くの海藻エキスを試験した結果、最も効果が優れていたものを選んでいます。その具体的なメカニズム、作用機序はよく分かっていません。

    次に、メチオニンです。メチオニンはアミノ酸のひとつで、エチレンの前駆体です。前駆体とはその物質が生成される前の段階の物質のことで、メチオニンがなければエチレンは生成されません。エチレンは気体状の植物ホルモンで、果実の熟成プロセスにおいて重要な役割を持っており、果実を色づけ、柔らかくし、糖度を向上させるなどの働きがあります。これにより、果実の収穫時期を前倒しできるだけでなく、色づきと糖度の向上にも寄与します。

    ※留意点:栽培条件や果実の種類によっては他の要因への依存度が高く、早期収穫につながらないこともありえます。

    果実の色づきを促進するプロセスには2段階あり、緑色のクロロフィルを減少させる段階と、色素を形成する段階に分けられます。色素の形成は、主にエチレンとアブシジン酸によって制御されます。エチレンとアブシジン酸が生成されるためには、酵素の働きと何らかの外部環境の刺激が必要となります。つまり、これらの化合物の生産には、酵素が非常に重要な役割を果たしています。 

    テカミンブリックス

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    多糖類

    果実の品質を上げるには、糖をより多く生産する必要があります。まず必要なのは、植物自身が光合成によって糖を生産することですが、糖を外部から供給することも可能です。テカミンブリックスに含まれる多糖類は、植物が自然に光合成で生産する糖類を補助する重要な役割を持ちます。具体的には、植物が自然に生産する単糖や二糖が果実やその他の組織に蓄積される過程で、多糖類がこれらの糖の利用効率を高めることで果実の糖度を向上させます。多糖類は、植物体内での糖の代謝を促進し、それによって果実がより多くの糖を蓄積し、甘味が増すことを助けます。このプロセスは、果実の糖度の質と量の両方に寄与し、結果として市場での価値を向上させる魅力的な果実を生産します。

    貯蔵器官への糖の蓄積は、主に供給される糖の量に依存すると言えます。テカミンブリックスを使用すると、植物に糖が供給されます。フルクトースを植物に供給した場合、この糖、すなわちグルコースはスクロース(二糖類)に変換されます。スクロースを直接供給した場合は、そのままスクロースとして果実に運ばれ、蓄積されます。糖に関する機序は非常にシンプルです。私たちが植物に与える糖はそのままの形で効果を発揮するのです。

    科学的背景と作⽤機序

    テカミンブリックスに含まれている成分は、植物の⾃然な⽣理活動を強化しストレスに対する耐性を⾼めることで、植物の健康を維持し、最終的な収穫量と品質の向上を実現します。メチオニンがエチレン⽣成を促進することや、カリウムが光合成効率を上げることなど、各成分の作用機序は科学的に証明されています。これらの科学的背景は、テカミンブリックスが植物の成長と収穫にどのように貢献するかを理解するうえで重要です。植物のメカニズムは植物の種類やその品種によって異なっているため、製品の作用機序を理解することで、製品をより効果的に使用できます。

    テカミンブリックス

    テカミンブリックスで果物の収穫を促進をする

    まとめ

    今回は、果物に適したバイオスティミュラントであるテカミンブリックスについて、その主要成分と具体的な機能や効果を中心に紹介しました。

    テカミンブリックスは、果実の収穫促進と品質向上を目的としており、果実の色の改善や糖度の向上に寄与する製品です。

    テカミンブリックスの主要成分は、カリウム、ホウ素、海藻エキス、メチオニン、糖類です。これらの成分は、光合成プロセスを促進して糖の生産量を増やしたり、ストレスからの影響を緩和したりする効果を持っています。テカミンブリックスを使用することで、植物の糖度を自然に上げ、果実の成熟を加速させます。その結果、高品質な果実の効率的な収穫が期待できるのです。

    次回はテカミンブリックスの作⽤原理について解説します。

     【次回Vol.2のリンクはこちら ↓ 】

     植物の⽣産性を⾼める秘訣:テカミンブリックスの科学 Vol.2(全3回) (agritecno-japan.com)

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