植物の⽣産性を⾼める秘訣:テカミンブリックスの科学Vol.3(全3回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Tecamin Brixにはどういった効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

当連載のVol.1では、テカミンブリックスの主要成分とその機能について、そしてVol.2ではテカミンブリックスの作用原理について紹介しました。

当連載の最後となる今回は、テカミンブリックスを実際に植物に施用した事例を用いながら、その効果を確認します。また、効果的な使用方法についてもお伝えします。

テカミンブリックスの詳細はこちら

目次

    テカミンブリックスの圃場での効果と事例

    トマトでの事例

    はじめに、トマトの例です。モロッコのムハンマド一世大学で行われた試験の結果です。

    露地栽培のトマトにテカミンブリックスを散布し、テカミンブリックスを施用していない対照群と比較し、糖度や色づき、収穫時期の違いを観察する試験です。3リットルのテカミンブリックスを1,000リットルの水で希釈し、15日ごとに散布しました。

    その結果、テカミンブリックスを使用したトマトは収穫期が1週間早まり、色とブリックス度(糖度)が向上しました。これにより、トマトの重量は平均で17%増加し、ブリックス値が一貫して増加するなど品質改善も実証されました。重量が増加した理由は、糖度やその他の可溶性固形分の増加によるものと考えられます。可溶性固形分とは液体の中に溶けている物質のことで、砂糖や糖分はすべて可溶性です。つまりこの固形分が重量を増加させます。

    また、この試験ではトマトの硬度が向上しました。硬さが増したことは、収穫物の市場価値を高める要素で、非常に重要です。生産者は通常、熟成を進めて色と糖度を向上させたいと考えますが、それが原因で果実をやわらかくさせてしまうことがあります。しかし、テカミンブリックスを使用することで、色と糖度を向上させつつも硬さを低下させることなく、むしろ硬さを増すことができました。

    次に、日本のトマトジュース会社がポルトガルの加工用トマトを使って得た結果です。

    加工用トマトにテカミンブリックスを施用した試験で、ブリックス値、酸性度、リコピンの含有量、着色がテカミンブリックスを施用していないコントロール群と比較してどのように変化するかを調べました。1ヘクタール当たり原液3リットルのテカミンブリックスを希釈して、初回散布から20日ごとに3回から4回施用しました。

    この事例では、色や糖度の増加は見られませんでしたが、収量の増加が見られました。最も収量が増えたのはテカミンブリックスを4回散布した事例で、27%の増加となりました。これは、テカミンブリックスがトマトの品質改善においてどのように効果的であるかを示す良い例です。

    トマト産業においては、収穫の早期化より収量の増加に関心が高くなっています。収穫は通常の時期に行われるため、例えば7月末の収穫予定であれば7月末に行われます。したがって、テカミンブリックスで糖度が上がっても、通常の収穫時期まで待つことで、最終的にはコントロール群と糖度が変わらないことがあります。テカミンブリックスを与えると糖度は素早く上がるのに対し、コントロール群の糖度はゆっくり少しずつ上がっていくということです。

    トマトジュース会社では、より早く収穫できる可能性があったにもかかわらず収穫を行わなかったため、最終的には糖分の増加が見られませんでした。しかし、収量の向上には成功しました。

    トマトにテカミンブリックスを使ってみる

    スイカでの事例

    スペインのスイカ栽培試験では、テカミンブリックスの使用により収穫を6日前倒しすることが可能となりました。また、収穫時の果実の色や大きさに影響を与えることなく、糖度の向上を実現しました。

    このデータは、テカミンブリックスを散布したスイカと散布していないスイカ(コントロール)の糖度を測定し、糖度の上がり方を比較したものです。テカミンブリックスの施用が果実の糖度に与える影響が計測できます。

    テカミンブリックスを与えるスイカには、収穫約1ヶ月前の6月13日、6月20日、6月29日の3回、毎回1ヘクタール当たり3リットルを散布しました。その後、7月6日、7月13日、7月19日の3回で糖度を測定しました。

    7月6日には、処理された果実の糖度がコントロール比で5%、糖度として0.5度高くなりました。翌週の7月13日には糖度の増加が若干減少し、コントロール比4.6%、糖度として0.46度の増加にとどまりました。そして、7月19日には糖度の増加はさらに小さくなり、コントロール比1.3%、糖度として0.14度のわずかな増加となりました。

    時間が経つにつれてコントロール群のスイカの糖分は増加した一方で、テカミンブリックスを散布したスイカの糖分増加は止まってしまいました。これは、テカミンブリックス散布区では7月6日に糖度がピークに達していることを示しており、テカミンブリックスが糖度を高めているという証拠です。つまり、7月6日が収穫の適期であると言えるわけです。

    しかし、コントロール区では収穫時期が7月20日か7月22日でした。その時点でコントロール区の糖度は、テカミンブリックス散布区と同じレベルに達していました。つまり、テカミンブリックスを散布した果実は、着色を促進しながら糖度を上げることができ、コントロールよりも早く成熟し必要な糖度に到達したのです。結果として、より早く収穫が可能となりました。これがテカミンブリックスの効果のひとつです。

    この実験では色の変化は観察されませんでしたが、それはスイカの内部に葉緑素が存在しないためです。葉緑素は果実の外側にのみ影響を及ぼします。つまり、果実内部にクロロフィルが存在しないという事実は、果実内部のクロロフィル量を減少させた結果というわけではありません。単純にクロロフィルがないのです。そのため、果実内部の色はクロロフィルの量に左右されることはありません。糖度が高まり、色も鮮やかになるケースでは、果実の色づきにクロロフィルは必要です。

    トマトとスイカの事例で異なる効果が観察される理由として、作物の生理的特性と栽培環境が挙げられます。トマトは果実の発育期間中にエネルギーの大部分を糖の合成に使用しますが、スイカは大量の水を果実内部に蓄えることが特徴です。そのため、同じテカミンブリックスを施用しても、作物によって蓄積される糖の量や品質への影響が異なるのです。この違いを理解することは、作物ごとに最適なテカミンブリックスの使用方法を決定する上で非常に重要です。

    スイカにテカミンブリックスを使ってみる

    オリーブでの事例

    アルゼンチンでのオリーブの事例です。オリーブにテカミンブリックスを使用することで、オリーブの木や果実の脂肪含有量が増加しました。これにより、オリーブオイルの品質が向上し、より価値の高い製品を生産することが可能になります。

    テカミンブリックスを与える量を変えて、オリーブの脂質含有量を測定しました。1ヘクタール当たり10リットル散布で脂質は16.9%、20リットル散布で17.8%、30リットル散布で17.5%の結果となりました。テカミンブリックスを与えていないオリーブの脂質含有量16.5%をすべて上回っており、テカミンブリックスを散布したオリーブは、脂質含有量が増加することが分かりました。

    また、オリーブの保持力が向上し、収穫前の自然落下が予防できました。

    オリーブにテカミンブリックスを使ってみる

    成果の概要

    これらの事例は、テカミンブリックスがさまざまな作物において早期収穫、糖度の向上、品質改善に貢献することを示しています。特に、品質の向上は消費者の満足度を高め、農業生産者の収益性向上に直結します。

    テカミンブリックスを使用すると、糖分の蓄積が早く進むため、早期収穫が可能になります。テカミンブリックスは糖分を直接的に上げるわけではなく、糖分の蓄積を促進しているのです。果実のサイズが大きくなる場合もありますが、これは必ずしも常に起こるわけではありません。

    テカミンブリックスの使用により、果実は収穫に必要な糖度と適切な色に早く達することができます。このことは、収穫を早める手助けとなります。植物が本来持っている力を引き出し、ストレスに対する抵抗力を高めて成長を促進することで、収穫の効率化につながります。

    テカミンブリックスで収穫促進する

    テカミンブリックスの使⽤⽅法

    効果的な使⽤⽅法

    テカミンブリックスは、生育期間中の植物に対して定期的に適用することで最大の効果を発揮します。散布は、植物の成長段階や気象条件を考慮して行う必要があります。

    収穫を早め、糖度を上げ、色づきを早めるためには、包括的なプログラムに従い適切な施用計画を立てる必要があります。そうすることで、果物の品質向上に関して良好な反応を得ることができます。テカミンブリックスは組成がシンプルである一方で、その効果を完全に理解するには少し複雑な側面があります。特定の作物に適用する際には、その作物の特性や課題に合わせたアプローチが必要です。

    テカミンブリックスを試してみる

    適切な散布時期と量

    最後に、テカミンブリックスの適切な散布時期と使用量についてお伝えします。これまでの成功事例に基づくと、開花期や果実の成長初期にテカミンブリックスを適用することが推奨されます。

    テカミンブリックスの具体的な使用量は、作物の種類や栽培条件によって異なりますが、10アールあたり200〜300ミリリットルの施用が基本です。500倍に希釈して、葉面に散布します。

    散布回数は、着果後もしくは肥大期~収穫期に3回以上が目安です。病害虫の防除と合わせて散布すると、より効率的です。果樹類の場合、着果後から果実が色づくまでの間に、300ミリリットルを希釈して葉面散布するのが一般的となっています。

    施用量や施用回数、希釈倍率は生育の具合を見ながら調整することが重要です。過度な使用は控え、濃い濃度で少ない回数やるのではなく、薄くして回数多く散布した方が良い結果が得られています。

    テカミンブリックスを試してみる

    まとめ

    これまで3回にわたり、テカミンブリックスの主要成分とその機能、作用原理、事例と効果、使用方法について紹介してきました。

    ここで、改めて振り返ってみましょう。

    Vol.1では、テカミンブリックスの製品概要と主要成分について説明しました。テカミンブリックスは、果物の収穫促進と品質向上を目的としたバイオスティミュラントです。果物の色づきと糖度の向上を促進することで収穫効率を上げ、商品価値の向上に貢献します。

    テカミンブリックスの主要成分は、カリウム、ホウ素、海藻エキス、メチオニン、多糖類の5つです。それぞれが以下のように重要な役割をもっています。

    • カリウム:光合成プロセスを支援、糖分の合成に関与し、水分の移動と電解質バランスを維持することで、糖の分布を間接的に支援。
    • ホウ素:糖の直接的な輸送に関わり、果実への浸透を促す。
    • 海藻エキス:植物のストレス耐性を高め、成長を促進。個々の成分の作用機序はまだ不明であるが、果物の成熟を促進し、品質向上に貢献する確かな結果が確認されている。
    • メチオニン:果実の成熟を促す植物ホルモンであるエチレンの前駆体として働く。
    • 多糖類:植物に糖を供給することで、光合成によって生産された糖類の利用効率を高め、糖度の向上につなげる。

    Vol.2では、テカミンブリックスが果物の収穫促進にどのように貢献するのか、作用機序の観点から紹介しました。

    • エチレンガスの生成:メチオニンがエチレンガスの前駆体として機能。エチレンガスは果物の色づきや糖度の向上を促進し、成熟を進める。
    • 葉緑素の減少と色づき:果実の糖分を増やして葉緑素を減少させ、果物の色づきを促進。
    • 糖度の向上:多糖類で直接的に向上、カリウムや海藻エキスで間接的に向上。
    • メチオニン:果実の成熟を促す植物ホルモンであるエチレンの前駆体として働く。
    • 光合成の促進:さまざまな成分で光合成の効率を高め、果物の糖度向上に貢献。

    テカミンブリックスを与えることで、これらの生理的プロセスが相互に作用し、収穫の早期化、果実の品質向上につながります。

    そして今回のVol.3では、テカミンブリックスを実際に使用した圃場での事例とその効果、使用方法について紹介しました。

    テカミンブリックスを植物に与え、糖度や色づき、収穫時期がどのように変わるか、テカミンブリックスを使っていないコントロール群の植物と比較しました。それぞれの植物で、収穫時期の前倒し、糖度の向上、色づきの促進などが見られ、テカミンブリックスが果実の品質向上に寄与していることが示されました。

    テカミンブリックスは、開花期や果実の成長初期に使うことが推奨されています。植物の種類や気象条件、栽培環境などを考慮しながら施用量や回数を調整します。

    テカミンブリックスは、果物の成長と発達をサポートし、糖度と色づきを促進するバイオスティミュラントです。果実の品質向上や収穫の効率化に非常に適しています。ぜひ利用を検討してみてください。

    テカミンブリックスを使ってみる

    【過去の記事を読む】

    Vol.1のリンクはこちら↓]

    植物の⽣産性を⾼める秘訣:テカミンブリックスの科学 Vol.1(全3回) (agritecno-japan.com)

    [Vol.2のリンクはこちら↓]

    植物の⽣産性を⾼める秘訣:テカミンブリックスの科学 Vol.2(全3回) (agritecno-japan.com)

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