花芽の充実と果実の質を高めるテカミンフラワーの科学 Vol.2(全3回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Tecamin Flowerにはどういった効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します 」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

前回のVol.1では、テカミンフラワーの特徴や配合成分ごとの役割と効果、pH値について詳しく解説しました。テカミンフラワーには豊富な栄養素が含まれており、それぞれが花芽の成長促進に有効に働く成分です。花芽の成長促進により、花数、結実量、ひいては収量の増加も期待できます。

特にモリブデンとホウ素が配合されているのが特徴ですが、これらは花芽の充実には欠かせない栄養素です。他にも保証成分として三大栄養素やアミノ酸、多糖類が含まれることにより、植物全体の成長もサポートします。

また、テカミンフラワーはバイオスティミュラント製品であるため、あらためてバイオスティミュラントの基礎知識についてもお伝えしました。バイオスティミュンラントの定義や得られる効果など、より理解を深めていただけたかと思います。

さて、今回のVol.2では、テカミンフラワーが成長促進をサポートする花芽における開花のプロセスやメカニズムを中心に解説します。ぜひ最後までお読みください。 

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目次

    開花プロセスの理解

    植物の開花プロセスとは、芽が形成されてから開花までの生殖活動期間のことを指しています。そこでは様々な要素が影響しあっており、極めて複雑なメカニズムであるとされています。

    そのため、植物の健康的な成長を望むなら、植物が成長し開花するまでの仕組みを理解し、それを適切に管理することが重要です。また、テカミンフラワーなどのバイオスティミュンラントの施用で開花をサポートすることが、結果的に収量や品質向上へと繋がります。

    植物はどのような開花プロセスをたどるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。

    開花の始まりと生理的プロセス

    植物の開花プロセスはいつ、どの段階から始まっているのでしょうか。花が形成されて完全に開花するまで、芽はどのようなプロセスをたどり成長していくのか、順を追ってみていきましょう。

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    開花のタイミング

    今回はブドウを例に開花プロセスを追っていきましょう。まずは下の写真をご覧ください。

    この写真はブドウの芽吹き、開花、結実、房の形成、果実の収穫までを写したものです。この写真のなかで、どの段階を開花プロセスの始まりとするのでしょうか。

    実は、答えはこの中にはありません。一見、花芽が見えた瞬間から開花プロセスが始まりそうではありますが、これらの写真のどの段階も開花プロセスの始まりではなく、途中の段階なのです。

    では、この中にないとしたら植物の開花プロセスの始まりはいつからなのでしょうか。答えは、休眠期間中です。開花プロセスは、蕾の状態や開花が始まった状態から始まるのではなく、もっと前の段階である休眠期間からすでに始まっているのです。

    次の画像をご覧ください。

    この画像は一般的な開花プロセスを示したものです。芽が形成された後、花成誘導により栄養成長から生殖成長へと切り替わることで花か葉への成長を選択します。花芽になると花芽分化が始まり、様々な栄養素やホルモンの影響を受けながら花の器官を形成、やがて開花します。

    植物の開花プロセスは、植物が生育の早い段階で重要な決定を下します。このプロセスの始まりは、芽の形成からです。芽が形成される初期段階は枝のなかにいる状態のため、目には見えません。芽自体が花や葉のどちらかを咲かせる決心をし、枝から飛びだした段階で初めて目視できます。

    芽は、成長するにつれて外部環境の情報を受け取り、それに応じて花を咲かせるか、葉を増やすかの選択をします。この選択は、植物ホルモンと栄養状態に大きく依存しています。

    具体的には、芽が形成されると、それはまず枝の内部に隠れています。この時点では、外部からは見えませんが、芽はすでに活動を開始しています。植物が適切な信号を受け取ると、芽は成長を続け、やがて枝の外に現れます。この段階で、芽は花になるか、葉を生じるかを決定します。この決定は、その後の植物の生殖成功に大きな影響を与えるため、非常に重要です。

    つまり、枝のなかで芽が形成されてから外に出てくるまでが開花プロセスの最初のステップとなります。開花プロセスは、植物内に存在する1つの芽が自身でその先の成長ルートを決定することから始まるのです。

    生理的変化

    植物内に芽が形成されると、芽は静かに「その時」つまり花成誘導のタイミングが来るのを待ちます。そして時期がきたら、芽は頂点分裂組織の後部にある細胞が、花を形成するか葉を形成するかを決めるのです。

    開花プロセスにおける最初の分岐点は、植物成長において重要なポイントとなります。なぜなら、もし芽が葉を形成することを選択した場合、その植物には花が咲かないからです。1つの芽からは葉か花のどちらかにしか成長しないため、葉を選べば花は咲かなくなります。葉を選ぶ芽ばかりになれば、その植物の1株に対して花数は圧倒的に少なくなるでしょう。だからこそ、芽の成長先が葉か花かを決定づける最初のステップが重要であるのです。

    このステップはブドウに限らず、柑橘類を含む他の果樹においても、同様のプロセスが起こっています。

    オルタネート・ベアリングの理解

    オルタネート・ベアリングという言葉をご存じでしょうか? オルタネート・ベアリングは隔年結果とも呼ばれており、開花プロセスを理解するうえで知っておくべき現象です。また、多くの果樹に該当する現象のため、安定した収量と品質を担保するためには避けられない問題となっています。

    ここからはオルタネート・ベアリングとは何か、なぜこういった現象が起きてしまうのか、原因とメカニズムを解き明かしていきましょう。 

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    オルタネート・ベアリング(隔年結果)の定義

    オルタネート・ベアリングとは、果樹類において1年ごとに収量が上下する現象のことです。たとえば、ある年は豊作となった果樹が、翌年には収量が激減してしまったものの、さらに翌年には豊作になるといった、収量が上下するサイクルが起きる状態です。

    オルタネート・ベアリングは隔年結果とも呼ばれており、主にレモンやみかんなどの柑橘類を始め、りんご、柿、桃、栗など多くの果樹に隔年結果がみられます。

    原因とメカニズム

    なぜ多くの果樹類でオルタネート・ベアリングが起きるのでしょうか。まずは、オルタネート・ベアリングが起きるメカニズムを紐解きましょう。

    植物の生理プロセスには、膨大な成長エネルギー源が必要です。植物は光合成や根から吸収した栄養素をもとに成長するに従ってエネルギーを蓄え、細胞分裂を繰り返しながら成長します。もちろん、植物の生命活動において重要な意味を持つ花や果実の形成にも、より多くのエネルギーを費やします。

    つまり、多くの花を咲かせ果実を形成した年は特に大量のエネルギーを消費しており、植物内のエネルギー量が激減している状態なのです。そしてその結果が花芽の成長選択に影響を及ぼします。

    花が成長するには、多量の栄養分が必要です。花の形成に必要なエネルギー源が不足していては、花芽は葉を選ばざるを得ません。

    そのため、豊作の年には花芽は葉への成長を選択し、花の形成に必要なエネルギーを植物内に十分に蓄え、翌年の花の成長へと活かすのです。

    このようなエネルギー不足による葉の成長ルートの増加は、あくまでも一因に過ぎません。オルタネート・ベアリングが起こる原因のなかでも重要なポイントではありますが、ほかの原因による影響で花芽が花への成長を選択できない場合もあります。

    たとえば、以下のような影響が考えられています。

    • 植物ホルモン:植物ホルモンのバランスが変化する
    • 病害虫:外的ストレスを受けて植物成長にダメージを受けている
    • 天候や気温などの気象状況:気温、日照時間、降雨などによる成長プロセスへの影響
    • 品種:植物の品種によりオルタネート・ベアリングが起こりやすさが違う

    ただし、これらの影響がオルタネート・ベアリングの原因となりうるとされているものの、実際には植物によって個体差があります。どれかひとつが原因となりオルタネート・ベアリングが起こるわけではなく、様々な原因が複雑に影響しあって引き起こされているのです。

    しかしながら、オルタネート・ベアリングのメカニズムを理解しておくことで、ある程度の予防を講じることが可能です。そのためにも、植物栽培においては栄養補給という栽培管理が重要となるのです。

    開花誘導の詳細

    開花誘導とは、芽が形成され花芽となってから開花するまでのプロセスのことです。花成誘導により花への成長を選択した芽は、次に花芽分化のプロセスを経て花芽を形成し、準備が整ってはじめて開花できます。

    ここからは、開花誘導のなかの花芽分化について触れていきましょう。 

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    花芽分化のプロセス

    花芽分化とは、細胞分裂により花の器官が形成されるまでのプロセスのことです。植物により花芽分化の時期にズレはあるものの、おおむね温かい時期から始まり、冬の休眠期間を経て蕾となります。

    一般的に、花芽分化をたどるためには以下の要素が必要です。

    • 日照時間
    • 温度
    • 栄養バランス
    • 植物ホルモン

    ほかにも、栽培環境や植物の加齢なども花芽分化に影響します。花芽の細胞は、分裂し始めの頃は分裂速度が非常に遅く、花も小さい状態から始まります。そして様々な影響を受けながら花は比較的ゆっくりと成長し、雄しべや雌しべ、花弁など花の器官を形成していくのです。

    開花誘導のなかでは、花芽分化は花成誘導の次にたどる重要なプロセスであり、特定の植物に限らず、ほとんどの果樹に共通して起こります。

    花芽分化には最初のステップでひとつ問題となる事象があります。それは、一旦、花になると決めた芽は再び葉には戻れないということです。たとえば、ある蕾が花に成長するルートを選んだとしましょう。特定の条件下においては、ある程度までは葉に成長するルートに変更可能ですが、ある時点を過ぎてしまうと葉への変更が不可能になります。逆に言えば、蕾が花になると決定した後、数日後であれば葉に成長するように変更することも可能なのです。

    ある時点までは芽の成長ルートが変更可能である事実は、開花プロセスにおいて重要なポイントとなります。

    冬季の休眠と活動の再開

    植物の花芽分化プロセスにおいて、重要となるのは休眠期間です。多くの場合、休眠期間の終わりにその基盤が設定されます。冬が訪れると、植物の成長活動は一時停止し休眠期間に入ります。植物が栽培環境に適応し、生き延びるためには休眠期間が必要不可欠です。これは厳しい冬の寒さを乗り越えるために、消費するエネルギーを必要最低限にするためです。この時期に、植物は次の成長サイクルのための重要な内部調整を行いますが、実際の花芽形成や花成誘導は、休眠を終えた後、適切な環境条件下で始まります。休眠期間中には、植物はエネルギーを蓄積し、再び成長を始める準備をしています。

    この間、生殖活動となる分化プロセスも同様に休止しますが、春になり再び暖かい気温に戻ると分化プロセスは再開されます。そして、休眠状態から再び生育プロセスを再開させることを休眠打破と言います。

    休眠打破は植物ホルモンや気温の変化、日光といった様々な要因がきっかけで起こる現象です。特に気温と日照時間が重要となります。一定期間、低温で過ごすことで休眠打破がおこると、植物は再び開花に向けての準備を始めるのです。

    そうして植物は冬の間に止まっていた細胞分裂を再開させ、さらに幾重にも分裂を繰り返すことで花芽を成長させていきます。長い時間をかけて成長し準備が整った花芽は、新たに日照時間や気温の影響を受けて、ようやく開花するのです。

    休眠と細胞分裂の活性というの流れは花芽分化の基本的なプロセスです。花成誘導から開花するまで繰り返し続いていきます。

    したがって、開花プロセスの開始と言えるのは、実際に花芽が形成され、成長の方向性が決定される時点です。これは、植物が春の温かい気温と増える日照に反応して開始されるプロセスです。休眠期間は、開花プロセスの準備段階として重要であり、植物が生理的に開花に必要な条件を整えるための静かな時期です。

    まとめ

    今回は、テカミンフラワーを施用するにあたり必要な知識でもある、植物の開花プロセスに焦点をあてて解説しました。

    植物の生殖活動となる開花プロセスは、いくつかの段階に分れています。開花プロセスの始まりは、枝の中で芽が形成された時です。芽ができた段階では、まだ花になるか葉になるかは決まっておらず、その後に受ける影響により花成誘導が起き、一つひとつの芽自身が成長先を決定付けます。この際、花を選んだ芽だけが花芽分化プロセスに進みます。しかし、ある時点までは成長先を変更することも可能であり、花を選んでも様々な影響を受けることで葉に成長先を変わってしまうこともあり得ます。この点は忘れずに理解しておきましょう。

    花成誘導により芽の成長先が決まれば、次に花芽分化のプロセスへと移ります。花芽分化とは花となるために必要な器官を形成するプロセスのことで、細胞分裂と休眠を繰り返しながら雄しべや雌しべ、花弁などを形成し、開花までの準備を整えます。花を形成する細胞分裂はとても遅く、ゆっくりと成長していきます。その中で休眠期間をとり、開花する際のエネルギーを蓄えながら、花成誘導のタイミングがくるまで準備をしているのです。

    今回解説した開花プロセスをふまえて、次回のVol.3ではテカミンフラワーが植物生理に及ぼす具体的な影響について解説します。テカミンフラワーを与えることで遺伝子の活性化や開花プロセスに及ぼす影響をはじめ、実際にテカミンフラワーを施用するうえでの最適なタイミングや施用方法などについて具体的にお伝えします。次回も参考になる情報ばかりですので、ぜひご覧ください。 

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     【次回Vol.3のリンクはこちら ↓ 】

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