微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.1(全3回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Fertigrain Foliarにはどういった効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

今回から3回にわたり、バイオスティミュラント製品の「ファーティグレイン・フォリアー」について詳しく紹介します。ファーティグレイン・フォリアーは穀物類に特化したバイオスティミュラントで、水稲、豆類、小麦やトウモロコシなどの畑作に利用されています。

Vo.1となる今回は、現代農業におけるバイオスティミュラントの役割を確認するとともに、ファーティグレイン・フォリアーの特徴や主要成分、その必要性について詳しく解説します。

ファーティグレインフォリアー
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目次

    現代農業におけるバイオスティミュラントの役割

    バイオスティミュラントの重要性

    [現代農業の課題]

    現代の農業は、さまざまな課題に直面しています。そのひとつに土壌の栄養不足という問題があります。植物はいろいろな栄養素を土から取り込んでいるため、土壌の栄養状態は植物の生育に大きな影響を与えます。特に、鉄、亜鉛、モリブデン、銅などの微量要素の欠乏が世界各地で報告されています。なぜなら、元来これらの微量要素は土壌に含まれる量が少ない上に、植物が日々これらの微量要素を吸収しており、長年の栽培の結果、土壌中の栄養素が年々少なくなってきているからです。

    また、昨今は世界的に異常気象と呼ばれる状態が頻発しています。気候変動は植物の健康的な成長にさまざまな影響を及ぼします。高温により酵素の働きが弱くなると、光合成率の低下や糖・エネルギーの減少といった問題が起こります。そのほかにも塩害や冷害、乾燥や低温などは、植物の成長におけるストレス要因となります。

    土壌や気候といった環境による課題に加え、農業従事者の高齢化や農業人口の減少による労働力不足の問題もあります。これらの問題も生産性低下の要因となっています。

    [バイオスティミュラントの役割]

    現代農業におけるこれらの課題に対し、バイオスティミュラントはどのような役割を担っているのでしょうか。

    バイオスティミュラントは、植物の成長を自然に促進する物質や微生物を含む製品です。これらは化学肥料が提供する栄養素を植物に直接供給するのではなく、植物のストレス耐性を高めることや、栄養素の吸収を助けることで間接的に成長をサポートします。特にストレス環境下においては、生育環境全体の改善を図りながら植物の本来もつストレス耐性や健全な成長をサポート・強化する資材です。

    例えば栄養不足の植物に対し、バイオスティミュラントを葉面に散布することで、素早く栄養を供給することができます。またバイオスティミュラントを土に撒くことで土壌中の微生物活動が活発になり、アミノ酸などの栄養素の生成促進や、土壌中の病原体や害虫発生の抑止などの効果が期待できます。

    バイオスティミュラントには、植物のストレス耐性を向上させる効果も期待できます。植物が成長する過程では、水不足、高温、低温、塩分などの環境ストレスが発生する可能性があります。バイオスティミュラントはこれらに対抗する力となり、光合成の減少や細胞の劣化といった課題の解決をサポートします。

    バイオスティミュラントは植物の代謝を活性化させ、成長を促進し、開花や着果を改善する働きもあります。品質の高い作物をより多く収穫できるようになれば、生産性を上げることが可能です。

    バイオスティミュラントにはいろいろな種類があり、効果を発揮する分野は異なります。したがって、それぞれの農作物に合ったバイオスティミュラントを、適切なタイミングで使用することが重要です。

    「ファーティグレイン・フォリアー」とは

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    [製品概要]

    ファーティグレイン・フォリアーは、穀物専用のバイオスティミュラントで、アミノ酸と微量要素が含まれています。微量要素とは亜鉛やマンガンなど植物に必要な栄養素で、かつその必要量がごく少量のものをいいます。必要とされる量は極めてわずかですが、非常に重要な栄養素です。

    ファーティグレイン・フォリアーは、穀物に必須のアミノ酸と微量要素を素早く供給することで生育を促進し、収量や品質の向上をサポートします。

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    植物に必要な栄養素には、微量要素、副次的多量栄養素、主要栄養素があります。

    • 微量要素 ホウ素(B)、鉄(Fe)、塩素(Cl)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)
    • 副次的多量栄養素 カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S) 
    • 主要栄養素 窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)

    多くの生産者はNPKと呼ばれる主要栄養素は与えていますが、カルシウムやマグネシウム、その他の微量要素の供給はしばしば見過ごされがちです。ファーティグレイン・フォリアーを与えることで、不足している微量要素を補い、植物の健全な生育をサポートすることが可能となります。

    ファーティグレイン・フォリアーに含まれている微量要素は、亜鉛、マンガンのほかに、ホウ素、鉄、銅、モリブデンがあります。微量要素のほかに含まれている成分には、アミノ酸、ベタイン類、糖類、多糖類があります。

    [利用対象]

    ファーティグレイン・フォリアーは、主に穀物などの畑作物、すなわち水稲、豆類、小麦、オーツ麦、トウモロコシ、キャノーラ、ビートなどに使用します。これらの畑作物に適切なタイミングでファーティグレイン・フォリアーーを葉面散布することで、作物が受けるストレスを軽減し、収量の増加が見込めます。例えば、水稲では苗の田植え後や分けつの初期、トウモロコシでは4葉から6葉の間に除草剤と混用しての散布がおすすめです。これにより、これらの重要な成長段階での栄養の吸収が促進され、環境ストレス(例えば乾燥や高温)に対する耐性が強化されます。

    これまで見過ごされがちだった微量要素ですが、生産者たちは徐々にその重要性に気づき始めています。稲作に亜鉛が使われたり、ビート栽培にホウ素が使われたりと、少しずつですが微量要素を使う動きが広がっています。土壌中の微量要素は年々減少しているため、微量要素を補給することは非常に重要です。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

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    製品の主要成分と作用機序

    ファーティグレイン・フォリアーーは、穀物に最適なアミノ酸と微量要素が配合されており、これらを素早く供給できます。ここでは、主要成分のアミノ酸、ベタイン類と糖類、微量要素について、詳しく解説します。

    [アミノ酸]

    ファーティグレイン・フォリアーーには、遊離アミノ酸が8%含まれています。これは、デンプンの多い飼料作物や畑作物にとって好ましい量です。

    植物にとってアミノ酸を摂取する利点のひとつが、植物中のエネルギーとブドウ糖を節約できる点です。この節約されたエネルギーは植物が蓄える余分なエネルギーとなり、花や果実、糖分の品質レベルを高めることにも役立ちます。これは、より多くのデンプンを生産することにもつながります。デンプンは、小麦、トウモロコシ、米など穀物に含まれる主要な炭水化物です。したがって、穀物に特化したバイオスティミュラントであるファーティグレイン・フォリアーにアミノ酸が含まれているのは、理にかなっていると言えます。

    ファーティグレイン・フォリアーに含まれるアミノ酸はグルタミン酸、プロリン、アラニン、アスパラギン酸、グリシンの5種類あります。なかでもグルタミン酸とプロリンが量的にも品質的にも最も重要です。以下にグルタミン酸とプロリンについて詳しく説明します。

    グルタミン酸は、植物の主要な活動である光合成に欠かせないアミノ酸です。

    グルタミン酸は、特に植物がストレス状態にある際のアミノ酸合成において重要で、植物の窒素同化やアミノ酸の合成において重要な役割を担っています。特に光合成において中心的な役割を果たすクロフィルの合成においても欠かせない役割を果たしています。光合成は、クロロフィルが太陽の光を利用し、二酸化炭素と水を反応させて酸素とグルコースを生成する生物化学反応です。生成されたグルコースは植物の成長に必要なエネルギーとなります。グルタミン酸は、いくつかの酵素を介してグルコースから合成されます。

    つまり、グルタミン酸の合成にはグルコースが必要であり、グルコースの生成にはグルタミン酸が必要という関係が成り立ちます。

    植物にストレスが生じると、グルタミン酸の欠乏、グルコースの不足、酵素の問題が原因で、グルタミン酸とグルコースのサイクルが壊れてしまいます。そこで、このサイクルを再び正常な軌道に戻す、あるいは断ち切られたサイクルを修復するために、バイオスティミュラントでグルタミン酸を供給するのです。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

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    次に、プロリンについて説明します。

    プロリンは、特に酵素の修復に非常に重要です。酵素の機能が低下した場合、プロリンがその修復や保護を行います。酵素の中にはプロリンによって直接修復されるものもありますが、一般にプロリンは酵素を保護する役割を持ち、抗酸化作用があります。さらに、乾燥や高温、塩分に対する耐性を高める浸透圧調整作用もあります。また、細胞分裂においてもプロリンは受粉という重要なプロセスに寄与するなど、その重要性は計り知れません。

    昨今の異常気象の頻発で、植物の受粉にさまざまな問題が生じています。特に高温は花粉の生存率に大きな影響を与えます。花粉が生存可能な気温範囲は非常に限られていますが、プロリンを植物に供給することで、受粉可能な状態を増やし、結果として受粉率と花粉の生存率を向上させることができます。

    [ベタイン類と糖類]

    次に、ベタインについて説明します。

    グリシンベタインは、細胞の脱水を防ぎ、光合成を維持する重要な役割を持っています。これは花粉の生存率向上においても非常に重要で、花粉の脱水を防ぐことができます。乾燥による悪影響だけでなく、塩分、放射性物質、高温や低温による悪影響からも保護することが可能で、特に低温による植物体内の冷害を防ぐのに適しています。

    高品質の花粉、そして生存率の高さを維持することは非常に重要です。なぜなら、まさしく1粒の花粉から最高品質の果実や穀物が生産されることになるからです。このような微細な要素が、最終的に収穫物の品質に大きな影響を与えます。気温の極端な変化は、多くの粒が実を結ばなくなる可能性があるため留意が必要です。

    [微量要素]

    ファーティグレイン・フォリアーに含まれている微量要素はどれも必要なものですが、特に大切なのは亜鉛、ホウ素、モリブデンです。これらは受粉、受精、花粉の形成において非常に重要な役割を果たします。これらの栄養素が不足している状態を放置するわけにはいきません。なぜなら、これらの栄養素は植物の生育に不可欠な要素だからです。

    図に示されたこれらの要素が基盤となり、生産性や収量、特に作物の受精を最適化するための基礎となります。光合成の重要性は皆さんもご存知のとおりですが、亜鉛、ホウ素、モリブデンは収穫量を増やすために特に重要です。これらの要素は受精プロセスにおいて不可欠な役割を果たします。

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    微量要素の必要性と「隠れた栄養不⾜」

    微量要素の重要性

    なぜ、作物に微量要素の供給が必要なのでしょうか。土壌にある微量要素は、はじめに述べたように植物によって消費され続けているため、年々減少しています。したがって、微量要素を人為的に補給することは非常に重要です。

    また土壌の中では、さまざまな肥料成分が相互に関係し、拮抗作用が起きています。そのため、植物が十分な微量要素を吸収することが難しくなっています。一方、ファーティグレイン・フォリアーを葉面に散布すれば、微量要素を効果的に供給できるのです。

    多くの生産者は、窒素、リン、カリウムの主要栄養素には気を配り供給していますが、微量要素の供給は怠りがちです。これは、微量要素が不足しても、目で見て分かりやすい問題として現れないこともあるからです。しかし、必要な微量要素が必要量だけ供給されている植物は少ないと考えられます。

    「隠れた栄養不⾜」

    微量要素が不足すると、作物の生育や収量にどのように影響するのか、トウモロコシの例を見てみましょう。トウモロコシの場合、栄養素の欠乏は葉に顕著に現れやすくなっています。そこでトレンドとしては亜鉛の施用が一般的です。これにより葉に現れていた欠乏症状が現れなくなります。しかし、症状が見られないからと言って、栄養素の欠乏が存在しないわけではありません。

    つまり、栄養素の欠乏があっても目に見える症状が現れない場合、実際には期待される収量や潜在的な最大収量よりも少ない収量になってしまうということです。このような状態を「隠れた栄養不足」といいます。そのため、収量を増加させたい、あるいは少なくとも収量を減少させたくないという場合は、植物に必要な微量要素を供給することが重要なのです。

    まとめ

    今回は、ファーティグレイン・フォリアーとはどのようなバイオスティミュラントなのか、その特徴や主要成分、必要性について解説しました。

    ファーティグレイン・フォリアーは、穀物専用のバイオスティミュラントです。穀物にとって最適なアミノ酸と微量要素が配合されており、生育促進や収量・品質の向上をサポートします。

    アミノ酸は、植物の光合成プロセスをサポートし、環境ストレスへの耐性を向上させます。また、植物中のエネルギーとブドウ糖を節約し、より高品質な穀物の生産に貢献します。

    多くの生産者は、農作物に亜鉛やホウ素などの微量要素を与えることを怠りがちです。なぜなら、微量要素が欠乏していても、葉などの見た目の症状として現れないこともあるためです。しかし、微量要素の不足は収量の低下を招くため、ファーティグレイン・フォリアーでそれらを葉面から供給するのが効果的です。微量要素は花粉の形成においても重要な役割を担っており、生産性や収量の向上に寄与します。

    ファーティグレイン・フォリアーが、作物の健康と収量にどのように貢献するかを想像できたでしょうか。

    次回Vol.2では、製品の主要成分と作⽤機序がそれぞれどのように影響し、どのような結果をもたらすのかについて具体的に⾒ていきましょう。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

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    【次回Vol.2はこちら↓】

     微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.2(全3回) (agritecno-japan.com)

     

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