微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.2(全3回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Fertigrain Foliarにはどういった効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

前回は、ファーティグレイン・フォリアーとはどのようなバイオスティミュラントなのか、その特徴や主要成分、必要性について解説しました。

Vol.2となる今回は、ファーティグレイン・フォリアーのさまざまな成分が作物の健康と収量にどのように貢献しているのか、また気候変動によるストレス条件下で作物をいかに保護するのかについて解説します。

Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

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目次

    作物の健康への貢献

    [アミノ酸の重要性]

    ファーティグレイン・フォリアーは、穀物に最適化されたバイオスティミュラントです。穀物に最適なアミノ酸と微量栄養素が配合されており、これらを素早く農作物に供給することで、生育促進、品質向上、収量増加に貢献します。例えば、グルタミン酸はタンパク質合成を助け、根の成長を促進することで水と栄養素の吸収効率を向上させます。プロリンは細胞壁の強度を増し、乾燥や塩害などの環境ストレスに対する耐性を高めるのに役立ちます。一方、微量栄養素である亜鉛は、酵素の活性を高め、葉緑素の機能を強化することで光合成を促進します。このように、これらの成分は穀物の生育期間中に細胞レベルでの多様な生化学的プロセスを支え、結果として収量と品質の向上に貢献するのです。

    アミノ酸は、作物の成長にとって非常に重要な栄養素です。なぜなら、組織の成長、受粉、栄養素の輸送など、作物のほとんどのプロセスにアミノ酸が必要だからです。

    また、アミノ酸を与えることで、作物中のエネルギーと糖類を節約できるのも利点です。この節約されたエネルギーは、植物が蓄える余分なエネルギーとなり、花や果実、糖分レベルを高めることに役立ちます。これは、より多くのデンプンを生産することにも繋がり、主要な炭水化物であるデンプンを多く含む穀物類の品質向上や収量増加に貢献します。

    ファーティグレイン・フォリアーには、グルタミン酸、プロリン、アラニン、アスパラギン酸、グリシンの5種類のアミノ酸が含まれています。

    グルタミン酸は葉緑素、すなわちクロロフィルの生成に不可欠であり、プロリンは特に酵素の修復に非常に重要です。アラニンは、植物ホルモンのひとつであるオーキシンの輸送や生産物の保護に貢献します。アスパラギン酸は、気孔の開度を調節し、浸透圧ストレスに対する耐性を高める役割を担います。グリシンは微量要素のキレート剤として非常に優れており、これらを吸収しやすくします。

    これらのアミノ酸のなかでも量的、品質的に特に重要なグルタミン酸とプロリンの役割についてさらに詳しく解説します。それぞれのアミノ酸が、作物の健康と収量にどのように影響するのか見ていきましょう。

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    [グルタミン酸の役割]

    ファーティグレイン・フォリアーに含まれるアミノ酸のうちで最も多くを占めているのが、グルタミン酸です。グルタミン酸は、植物にとって重要なプロセスである光合成に深く関わっています。農作物の栄養成分の9割以上が炭素、水素、酸素ですが、炭素は光合成により取り込まれます。そのため植物が健康に生育するためには、光合成のプロセスを強化する必要があります。光合成はクロロフィルによって行われ、このプロセスの効率化が植物の生育には不可欠です。クロロフィルの合成には多くの酵素と複数の前駆体が関与しています。グルタミン酸自体は直接的にクロロフィルを合成するわけではありませんが、グルタミン酸はタンパク質の合成において重要なアミノ酸であり、光合成に関与する多くのタンパク質の生産に間接的に関与するため、全体のプロセスにおいて重要な役割を果たしています。

    植物は、グルタミン酸を使ってクロロフィルを合成するために、いくつかの酵素を利用します。酵素は非常にデリケートな分子でありタンパク質であるため、酵素の活性は最適温度を外れると低下します。高温は酵素を破壊し、低温はその機能を妨げます。したがって、バイオスティミュラントを施用することで、酵素にも配慮することができるのです。

    グルタミン酸は、いくつかの酵素を介してグルコースから合成されます。このグルコースは光合成から生成されます。つまり、グルコースの生成にはクロロフィルが欠かせません。このように、グルタミン酸の合成にはグルコースが必要であり、グルコースの合成にはグルタミン酸が必要という循環の関係になっています。

    植物にストレスが生じると、グルタミン酸の欠乏、グルコースの不足、酵素の問題が原因となり、グルタミン酸とグルコースのサイクルが壊れてしまいます。そこで、バイオスティミュラントの出番となります。このサイクルを再び正常な軌道に戻すため、あるいは断ち切られたサイクルを修復するためのひとつの方法が、グルタミン酸の供給なのです。なぜグルタミン酸が必要なのでしょうか。このサイクルが停止してしまうと、グルタミン酸の生成も止まってしまうからです。グルタミン酸があれば、このサイクルは再び繰り返されます。

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    [プロリンの役割]

    次に、プロリンが酵素の修復と保護にどのように関与しているのか、詳しく見ていきましょう。

    プロリンは、高温などのストレス条件下で細胞の浸透圧を調節することにより、細胞内環境の安定に寄与します。酵素が機能低下した場合、その修復や保護を行います。高温などのストレスを受ける環境下では、酵素が働かなくなることがあります。その場合、プロリンが分子シャペロンとして機能し、酵素の機能低下を防いでいます。分子シャペロンとはタンパク質の一種で、酵素を安定させ活性化させる働きがあります。酵素の中にはプロリンによって直接修復されるものもありますが、一般的には酵素を保護する役割を持ち、抗酸化作用があります。

    さらに、乾燥や高温、塩分に対する耐性を高める浸透圧調節作用もあります。気温が高い場合は水分が外に出てしまう蒸散が起こりやすいため、水分が奪われないようにプロリンが保護します。浸透圧調節作用は、植物細胞内の水分を正常に保つ働きです。

    また、細胞分裂においてもプロリンは受粉という重要なプロセスに寄与しており、その重要性は計り知れません。受粉は温度に左右されやすく、特に高温は花粉の生存率に大きな影響を与えます。過度な高温や低温は花粉の生存率を低下させ、受粉の機会を奪いますが、プロリンを植物に供給することで受粉可能な状態の花粉を増やし、結果として花粉の生存率および受粉率を向上させることができます。花粉の生存率や受粉率が上がることで、最終的な収穫物の品質向上や収量増加が見込めます。

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    ファーティグレイン・ フォリアーの施用事例

    続いて、ファーティグレイン・フォリアーを実際に農作物に使った事例を紹介します。

    [稲]

    稲は、ファーティグレイン・フォリアーをよく散布する作物のひとつです。下の図は、非ストレス条件下における水稲へのグリシンベタインの施用試験の結果です。

    グリシンベタインを1ヘクタールあたり2キログラム使用しただけで、稔実率が14%向上しました。最終収量は13%増、充填粒数は22%増、一粒あたりの未充填粒数は29%減となりました。これは、花粉粒への影響がその花粉粒だけに留まらず、他の花粉粒にも波及する可能性があることを意味します。結果として穀物の収量が増加し、畑の粒数が増え、不稔粒の割合が減少しています。

    ある国々では、稲作への亜鉛の供給が行われています。特に、技術が進んでいる熱帯国では、亜鉛の使用が盛んです。土壌が酸性である場合、穀物の亜鉛吸収は不十分になりがちなのですが、亜鉛とマグネシウムの供給によってこれを補うことができます。亜鉛は、受粉、受精、花粉の形成において、非常に重要な役割を果たします。受精プロセスに関わる成分であるため、生産性や収量増加が見込まれます。

    [トウモロコシ]

    トウモロコシの場合、栄養素の欠乏は葉に顕著に現れやすくなっています。トレンドとして亜鉛の施用が一般的で、亜鉛を使用することで欠乏症状が現れなくなります。

    しかし、症状が見られないからと言って、栄養素の欠乏が存在しないわけではありません。つまり、栄養素の欠乏があっても症状が現れない場合、実際には期待される収量や潜在的な最大収量よりも少ない収量になってしまいます。そのため、収量を増加させたい、または少なくとも収量を減少させたくない場合は、植物に必要な微量要素を供給することが重要です。

    [キャノーラ]

    キャノーラについては、油分の増加に関するデータは現在のところありません。しかし、油の量を向上させるための試験を始めることは良いアイディアかもしれません。これにより、ファーティグレイン・フォリアー散布の効果をより広範囲に検証し、具体的な利益を明らかにすることができるでしょう。

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    気候変動への対応

    現代では世界中においてさまざまな異常気象が観測されています。高い気温が続いたり、乾燥したりすることは作物にストレスを与え、健康な生育を妨げます。ファーティグレイン・フォリアーを使うことで、これらの環境ストレスにどのように対応できるのか、詳しく紹介します。

    異常気象がもたらす影響とファーティグレイン・フォリアーの役割

    [作物生育への挑戦]

    農作物の生育は、気候などの環境から大きな影響を受けます。特に高温や乾燥、塩害などは、作物にとって大きなストレスとなります。過度な高温は光合成の能力を低下させ、作物の成長を停滞させてしまいます。乾燥は、植物内の水分が奪われるため、細胞への水の流れが悪くなります。雨や曇りの日が続くと、太陽光エネルギーを使えず光合成が十分にできません。

    このような環境ストレスにより作物の健康な生育ができなくなると、期待される収量が得られなかったり、作物の品質が低下したりしてしまいます。穀物は特に炭水化物を多く含むため、光合成プロセスの維持が重要です。気候変動は農業にとって、安定した品質と安定した収量を脅かす問題となっています。

    [ファーティグレイン・フォリアーの役割]

    ファーティグレイン・フォリアーは、高温や乾燥、塩害などの環境下で、植物を保護し、耐性を高める働きがあります。ファーティグレイン・フォリアーに含まれるアミノ酸は、微量栄養素を各器官に届ける働きがあり、アミノ酸自身も作物の成長に不可欠な栄養素です。

    先ほど説明したとおり、光合成に必要なクロロフィルは、アミノ酸のひとつであるグルタミン酸から合成されます。植物が環境ストレスにさらされると、グルタミン酸やグルコースが減少し、酵素の働きが低下してしまいます。その結果、グルコースからグルタミン酸を合成し、グルタミン酸からクロロフィルを合成し、クロロフィルを使って光合成によりグルコースを生成するというサイクルが壊れてしまいます。ファーティグレイン・フォリアーを与えることで作物にグルタミン酸を供給し、このサイクルを正常に戻します。

    また、ファーティグレイン・フォリアーに含まれるプロリンは、高温などにより作物の酵素が働かなくなった時、分子シャペロンとして機能し酵素活性を高めます。酵素活性を高めることで環境から受けるストレスを和らげ、作物の耐性を向上させます。

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    受粉の重要性とグリシンベタインの役割

    [植物の生育における受粉の重要性]

    近年の気候変動は、植物の受粉にさまざまな問題を生じさせています。特に高温は花粉の生存率に大きく関わるストレス要因です。花粉が生存可能な温度範囲は非常に狭いため、外気温は高すぎても低すぎてもいけません。

    花粉の品質や生存率の高さが重要である理由は、高温や低温など気温の極端な変化によって、多くの粒が実を結ばなくなる可能性があるからです。果実や穀物は花粉から生産されるため、花粉の健康状態を軽視すると、高品質な収穫物や収量の増加は見込めなくなります。

    [ファーティグレイン・フォリアーによる保護]

    ファーティグレイン・フォリアーは、このような環境ストレスから花粉を守ります。ファーティグレイン・フォリアーに含まれているグリシンベタインには、乾燥や高温などの非生物的ストレスから光合成装置を保護する重要な役割があります。また浸透圧バランスを整え、細胞の脱水を防ぐ働きも持っています。これは花粉の脱水を防ぐことでもあり、花粉の生存率に大きく関わるため非常に重要な役割です。

    グリシンベタインは、テンサイから発見されたアミノ酸誘導体で、植物の葉緑体で生成されます。アミノ酸誘導体とは、アミノ酸の一部を変化させたものです。

    グリシンベタインは、乾燥による悪影響だけでなく、塩分、放射性物質、高温や低温による悪影響からも植物を保護することが可能です。細胞膜とタンパク質を安定化させる機能があるため、特に低温による植物体内の冷害を防ぐのに適しています。これらのことから、ファーティグレイン・フォリアーを施用することで、花粉の生存率および受粉率の向上が期待できます。

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    まとめ

    今回は、ファーティグレイン・フォリアーのさまざまな成分が作物の健康と収量にどのように貢献するか、また、気候変動によるストレス条件下でどのように作物を保護するかについて解説しました。

    穀物に最適化されたバイオスティミュラントであるファーティグレイン・フォリアーは、アミノ酸と微量栄養素が含まれています。アミノ酸は作物の成長になくてはならない重要な栄養素で、その中でも特に重要なのがグルタミン酸とプロリンです。グルタミン酸はクロロフィルのもととなり、光合成のサイクルに不可欠な成分です。高温ストレスにより植物の酵素の働きが低下しても、グルタミン酸を供給することで光合成のサイクルを正常に戻すことができます。プロリンは酵素の修復や保護をすることで、作物の耐性の向上に貢献します。これらの成分が作物の健康な生育と収量の増加に貢献しています。

    実際にファーティグレイン・フォリアーを施用した例では、稲の稔実率が上がり、トウモロコシの栄養素の欠乏が改善しています。

    次回はファーティグレイン・フォリアーの具体的な事例と最適な使用方法と経済性について、見ていきましょう。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

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    【次回Vol.3はこちら↓】

    微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.3(全3回) (agritecno-japan.com)

    【過去の記事はこちら↓】

    微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.1(全3回) (agritecno-japan.com)

     

     

     

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