
当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】小麦へのバイオスティミュラント施用 農業技術の専門家が科学的に解説します。 」の内容をテキスト化してご案内しています。
目次
前提条件の確認

まず始めに、小麦へのファーティグレインフォリアーの施用やその他色々について議論をし始める前に、いくつか前提条件について話をさせて下さい。
というのも概念や言葉の定義について認識を合わせておくことは非常に重要だからです。まず小麦の成長プロセスについて、お互いの記憶を再確認しましょう。
まず播種をして発芽がします。こちらの写真ですね。次に分げつが起こります。分げつとは植物が側枝を形成する過程のことです。

分げつはこちらの写真です。幼穂分化が起こると次に、節間伸張が続きます。茎はどんどん長くなります。

次は止葉期に入り、これが止葉ですね、次は穂ばらみ期です。この段階では、植物のこの部分が大きくなります。なぜなら、穂が内部にあるからです。
次に、穂が現れる過程があります。次に開花期、小さな花が開き、受粉が起こる時です。その後、登熟期があります。右上のこの写真は、穂ばらみ期の写真です。
小麦の成長プロセスの詳細
一つずつ詳しく見ていきましょう。まず分げつがあります。分げつ、つまりは茎の分枝が形成される過程は、小麦の栄養分配と光合成能力を高めるために重要です。分げつの段階で形成される茎の数は、最終的にどれだけの穂が形成されるかに直接影響を与え、それが穀粒の数と収穫量を決定します。より多くの側枝が形成されることで、穂の数が増加し、それぞれの穂が持つ穀粒の数にも寄与します。このため、分げつのタイミングに適切な栄養管理と水分供給が求められるのです。
次に止葉は非常に重要です。
私たちにとっても重要で、止葉が出るタイミングは、ファーティグレインフォリアーを施用すべきタイミングであるからです。止葉は穂が出る前の最後の葉です。この植物にはこれ以上葉がつくことはありません。ここに見えるのが止葉です。
この株は穂が着生しようとしており、この止葉の下のこの中に穂があって、まさに出穂しようとしているのがわかります。

言葉の定義も改めて確認しましょう。これが穂です。この細い毛のようなものは芒です。無論、これが茎でこうやって葉が展開されています。さて、この穂の拡大図を見てください。

これが小穂です。小穂は穂の中に花を形成する小さな単位です。穂のこの部分です。小穂の中にはいくつかの小花があります。この写真ですと1つ、2つ、3つ、4つありますね。このイラストでは3つの小花がありますね。
花粉をつける雄しべの葯や、子房、柱頭などの雌しべ、つまり植物の雌雄の部分が確認できますね。これで名称の確認は終わりです。
小麦の花の生存率は、適切な環境管理に大きく依存します。特に、開花前後の温度と水分は重要です。理想的には、温度は20°Cから25°Cの範囲を保つことが推奨されます。この温度範囲を超えると、花粉の活性が低下し、受精率が減少します。また、水分ストレスは花の生存に致命的であり、適切な灌漑計画が必要です。例えば、開花期間中には、土壌の水分を一定に保つために、日に1回の軽い灌漑を行うことが推奨されます。さらに、花の生物学的プロセスを理解することも重要であり、雄しべと雌しべの構造と機能を詳しく理解することで、受精の効率を高める管理計画を立てることができます。
小麦の発芽と成長
次に、小麦の成長段階について見て行きましょう。生産者にとって重要なタイミングには名前がついています。たとえば、英語でヘッディングというのは頭のことではなく出穂のことです。

また穂ばらみはブーツのように膨らむためブーツと呼ばれています。これらの重要なタイミングは、植物の外側の目に見える部分だけでなく、内部で何が起こっているかにも同時に注目することが重要です。
まず種子が発芽しますが、その時植物内ではスライド①の写真のように植物内で成長する様子を観察することができます。わざわざ顕微鏡を用意することもなく、拡大鏡で十分に見る事ができます。次に②を見ると葉が成長し始めるのがわかります。本当に急速に成長を続け、分げつ直前に、花と穂が分化して始め、成長を始めます。
次に③の写真を見てください。これは穂が形成されている様子です。すごく小さな穂ですね。そして分げつの終わりにナイフで作物を割いて、拡大レンズで見てみるとこの④のような小さな穂が観察できます。③の写真の小穂が、④の段階では小穂分裂がすでに終わっています。
この小穂は大変小さいのですが、内部を見てみると中には非常に小さな花が育っているのが分かります。⑤の写真ですね。これがなぜ非常に重要なのかは後ほど説明します。こちらの⑥を見てください。これも興味深い現象です。
花芽形成がここで始まっているのです。葉の分裂組織が花になる分裂組織、つまり生殖細胞に変わることを意味しています。この時点で、植物の成長過程の非常に初期段階において、このような減数分裂が起こっているのです。
この花成誘導は、私たちが果樹等の樹木で見られる花成誘導と似ているかもしれません。私もそうだとは言い切れませんが。しかしこれは重要な観点です。樹木と小麦を比較することでより理解できることもあるでしょう。これは後ほど説明します。
ここでもう一度、小穂の写真を見て見ましょう。これが花で、この中ひとつひとつにこの図のように小花が入っています。
収穫量の向上について

では、私たちにとって最も重要なこと、つまり収穫量の向上に関する議論を始めましょう。言うまでもなく、それは栽培者の目標でしょう。収穫量を増やすこと、これが日本の研究者が言っていることですが、小麦の場合、粒数が他の収量要素よりも収量に密接に関係していることはよく知られています。
従って、我々が最も重視しなければならないのは、粒数を増やすことです。もちろん、粒数を増やすためには、分げつの数を増やす必要があります。そして、分げつにより茎が形成されたら、その茎に穂をつけるようにする必要があります。しかし、全ての茎が穂をつけるわけではありません。よって茎そのものの数ではなく、実際に穂をつける生産的な茎の数について注意を払うべきです。
穂の中を見てみると、一つの穂の内部には多数の小穂が形成され、それぞれの小穂の中には多くの小花が形成されています。そして問題は、それぞれの花が穀粒になるかどうかです。
受粉した花は穀粒をつけますが、受粉しなかった花はつけません。この点については、後で詳しく説明します。穀粒が形成されると、それは栄養を吸収し続けて成長し、実を結びます。しかし収量を増やすと言う観点においては、これはそれほど重要ではありません。確かに収穫量を増加に結びつきますが、もっと重要なのは穀粒の数です。穀粒の数に焦点を合わせるべきなのです。
私たちは、一つ一つの穀粒の重さを増やすことよりも、より多くの穀粒を、穀粒の数を得ることを望んでいます。
バイオスティミュラントの種類と施用タイミングは収穫量に大きな影響を与えます。特に、テカミンフラワーのような製品は、小麦の分げつ期に適用することで、T6Pにより特定の遺伝子の活性化を促し、植物がより多くの花穂を形成することを支援します。この遺伝子は炭水化物の動員を促進し、結果的に花芽の発育と穀粒の形成を促します。この遺伝子は特に、植物のストレス反応中に重要な役割を担い、花芽の生存率を高めることが示されています。このため、バイオスティミュラントを施用する最適なタイミングは、生理的な変化が活発になる前、具体的には分げつの初期または中期に施用することが推奨されます。

通常、一つの花穂には24から28の小穂が含まれています。そして一つひとつの小穂には、2から6の小花が含まれています。さらに、通常、一つの花穂には45から50の穀粒、小麦の種子が含まれます。

こちらをご覧ください。全員が目指しているのは穀粒の数を増やすことです。これはある肥料研究所のデータです。彼らは、1ヘクタール当たり10トンの目標収穫量に対して、1平方メートルあたり420の花穂、1つの花穂につき48の穀粒、ひと粒あたり50ミリグラムの穀粒を得ることを目標にしています。水分含有量は15%です。
しかし1ヘクタール当たり6トンが収穫目標量である場合においても、花穂あたり48の穀粒を目指べきと言っているのです。この基準に従うと、収量目標にかかわらず穀粒の数は可能な限り最高レベルにすべきと言うことになります。1花穂当たりの最大穀粒の数は50となっています。目標は48以上にせざるをえません。48未満は良くないと言うことになります。
それでは小麦の成長過程で何が起こるかを見ていきましょう。まず最初に、種子の発芽です。
そして発芽後に4枚か5枚の葉が現れた時点で、見た目には分かりませんが小穂は既に形成されています。
もし私たちが一つの花穂に多くの小穂を持たせたい場合、このタイミングから対策を始めるべきです。分げつが終わると小穂の発生も終わります。分げつとは植物が側枝を形成する過程のことを指し、小穂は穂の中に花を形成する小さな単位です。この段階が植物の成長と穀粒生産において重要な役割を果たします。
小穂にとって大変重要なタイミングはいつでしょうか。それはこの小穂が発生するタイミングで、分げつの直前です。分げつの直前に小穂が発生するのです。小穂の発生は、ここ止葉の下ですが、この部分が膨らみ始めると終了します。
この瞬間、穂ばらみのタイミングに、減数分裂が発生します。減数分裂のタイミングで、花粉や子房が形成を始めます。減数分裂は、花粉や胚珠が形成される非常に重要なタイミングです。なぜなら、花粉や卵巣がうまく形成されない場合、その花は肥沃でなくなる可能性がある、つまり十分な栄養素やエネルギーを蓄えられないからです。
その後、開花まで、花粉や柱頭はもちろん、雄しべ、雌しべが全体が成長し、成熟していきます。この減数分裂の期間は、小麦の成長過程において最もストレスに弱い時期です。
この期間中、小麦はストレスに非常に敏感であり、温度の変化や栄養不良による影響を非常に受けやすく、最終的には収量減に繋がります。小花は発生しても、そのうちの多くが枯れて死んでしまいます。多くの小花が枯れるのは問題ですが、注目すべき点は、その後、小花が成長し、開花すると穀粒が形成され、その穀粒が登熟していく過程です。
発芽の段階
ここで、発芽の最初の段階に立ち返って見ましょう。播種をして発芽した段階で、平方メートルあたりの小麦の株数が決まってしまうわけですが、通常、これはどのように決めているのでしょうか?それは次のように行います。言うまでもなく適量の種子を散布します。
通常、種子の発芽率は95%と言われていますが、それは種子の品質次第です。もし多くの植物を発芽させたい場合、非常に高品質の種子を使用すれば、発芽率を98%くらいまで高めることができるでしょう。発芽率が98%を想定する場合は、栽植密度をよく検討して選ぶ必要があります。
発芽率によらず、栽植密度は計画しなければいけませんが、この点はそれほど重要ではありません。次に、一つの花穂に含まれる小穂の数は、一平方メートルあたりの穀粒の数に影響します。ここを見て下さい。この期間に、各植物の花穂の数が定まります。
この期間は非常に長いです。その後、この期間に、各小穂における穀粒の数が決定されます。そして最終的に穀粒の総数が決まり、最後に穀粒の重さが決まります。それでは、この過程を順を追って見ていきましょう。
植物の成長初期の対策

我々ができることは何か?見て行きましょう。まず、植物の成長初期の出芽期と茎立期を見てみましょう。我々ができることは何か?見て行きましょう。まず、植物の成長初期の出芽期と茎立期を見てみましょう。
出芽期には二つの段階があります。初期の出芽期と後期の幼苗期です。それぞれの重要性を見ていきます。成長過程の最初の段階で、小麦の茎数と一株あたりの花穂の数は決定されています。

つまり、これらの茎や主茎と分げつした側枝が穂をつけて、更に実をつけるかどうかが決まります。茎の数も重要ですが、何よりも重要なのは穂をつける生産的な茎の数です。
どうすればこれらの茎に穂をつけるのか、生産的にできるのか見ていきましょう。もちろん、最終目標は穀粒の数を増やすことです。穂の数は生産的な茎の数によって決まります。
まず、生産的な良い茎を育てるにはどうすれば良いのでしょうか?まずはファーティグレイン・スタートの使用をお勧めできます。ファーティグレインスタートは日本ではまだ発売していませんね。この製品は播種前に種子をコーティングするバイオスティミュラントです。
発芽直後にファーティグレインフォリアーを施用することもできますが、発芽直後の最初の時点では、私はアグリフルの施用の方をお勧めします。小麦ではなく米での事例ですが、アグリフルを使って非常に良い結果が得られました。アグリフルは分げつを増やすには非常に効果的です。
しかし、分げつを増やすには、当たり前ですが分げつの前に、この期間中に、アグリフルを施用する必要があります。世界中の事例で、割とよくファーティグレイン・フォリアーは、分げつの前、分げつが始まったタイミングや分げつ中ではなく、分げつの終盤に側茎の形成が終わる頃に施用されることがあります。しかし実はこれでは分げつを増やす効果はありません。
分げつの終盤に使用しても、施用した時点ですでに分げつがあらかた進行していて、側茎の数も決まっているからです。この生育初期にファーティグレイン・フォリアーを施用するなら、施用するタイミングが重要です。分げつが始まる前に施用する必要があるのです。
分げつが形成された後は、分げつした側茎の花成誘導に注目すべきです。実は、花成誘導はこのタイミングに始まっています。まさに分げつが始まる直前です。つまり、小花の成長、開花プロセスはこのタイミングから始まっているのです。
このタイミングに、私たちは何をすべきなのでしょうか?より多くの花穂をつけるようにするために改善できることは何でしょうか?説明してきた通り、このタイミングで多くのことが決まるので、このタイミングは非常に重要で、そのため、このタイミングで対策をすべきです。
もしあなたの圃場が、分げつはうまく進むのに、花穂の数が少ない圃場の場合は特に対策すべきです。

成長過程をより深く理解しましょう。花成誘導はこのタイミングに始まります。収量増のためには、すべての茎に花穂がついて欲しいでしょう。この花成誘導の開始はすなわち開花プロセスが始まったということでしょうか?
もしそうなら、このタイミングにテカミンフラワーを施用して穂の数を増やすことができます。つまり、より多くの茎が花穂をつけるようにするのです。実のところ、果樹や他の植物と同様に、小麦においてもこの花成誘導の開始が開花プロセスの開始なのかどうなのかついては、まだ定かではありません。

もしそうだとすると、このタイミングでのテカミンフラワーの施用には効果があるはずです。テカミンフラワーについて解説したことを思い出して下さい。テカミンフラワーはT6Pという物質により特定の遺伝子を活性化させます。この遺伝子により、植物により多くの花をつけさせたり、開花プロセスを開始させることができます。
開花プロセスとは、茎の分裂組織において、成長すると葉をつける芽、すなわち葉芽が、成長すると花序や花になる芽、すなわち花芽に変わるタイミングに開始されます。開花プロセスとは、茎の分裂組織において、成長すると葉をつける芽、すなわち葉芽が、成長すると花序や花になる芽、すなわち花芽に変わるタイミングに開始されます。
この仮説を実際に試験したことはありません。しかし、試してみたいと考えています。テカミンフラワーが花穂の数を増やすかどうかを確かめる試験は遅かれ早かれ実施すべきと考えています。勿論、圃場でのオペレーションを考慮して現実的かどうかも考えるべきです。
施用するタイミングは播種後の非常に早い段階であり、通常、生産者はこの時期に何も散布しません。除草材を散布するとしても、通常はもう少し後になるでしょう。つまり単材で散布することになるわけですが、それをわざわざ実施する価値があるのか、試験後に現実的に圃場で散布できるほど作業に余裕があるかなど試験前に議論すべきでしょう。
現段階では、このタイミングでテカミンフラワーを施用すれば、花穂の数を増やすことができる可能性があるとまでしか言えません。しかし、生産者はバイオスティミュラントを単剤で散布することには消極的でしょう。それが100%必要でない限り、手間暇をかけて投資することはしないでしょう。
こう言ったことを全て考慮すると、初期の対策としてはアグリフルを施用することが、分げつの数を増やすのに最適だと思っています。このタイミングで、テカミンフラワーを施用すると、根圏を改善するなど他にも良い効果があるでしょう。しかし、根圏を改善する点ならアグリフルの方が最適でしょう。
このタイミングでテカミンフラワーやアグリフルを施用することは良い選択です。しかし、経験上、圃場で本当に施用することは困難でしょう。栽培者はこのタイミングで他に何も施用しないのですから。

次に進みましょう。成長過程の初期段階で対策をして最大限の分げつ数、花穂の数を得られたとしたら、次に検討すべきは、一つの花穂の中の小穂の数、更に一つの小穂の中にある小花の数を、それぞれ最大にすることです。どうすればよいか見ていきましょう。
小穂の形成はこのタイミングで始まります。花成誘導、または開花のプロセスは分げつの直前に始まります。分げつの期間に、ファーティグレインフォリアーを初回施用するのが一般的です。そして2回目の施用は茎伸長の半ばで、止葉が形成されるタイミングです。
このタイミングであれば、止葉が少し見え始めた時でも、止葉が形成された穂ばらみ期の直前の段階でも問題ありません。分げつ期間の散布は、小穂形成と小花の発生に良い影響を与えます。このタイミングで、花穂ひとつ当たりの小穂の数が決まります。この期間に何が起こっているかを見てみましょう。
一つの穂あたり約28個の小穂が目標です。これは事実上の最大数です。この期間の環境、栄養状況により決定されます。次に小花ですが、このタイミングですでに小花の数が決まりつつあります。ここで知っておいて欲しいことは、小花の数は遺伝子によって決められるということです。
ストレス、栄養状態、天候、気温による影響はゼロではないが少ないのです。品種、遺伝子によって決定されます。小麦はどの品種であれ、生成される小花の数が遺伝子で決まっています。小花の数を大幅に増やしたりすることは、いかなる製品を使用してもほぼ不可能でしょう。
ですので、この時点においては、一つの小穂あたりの小花の数についてあまり心配する必要はありません。遺伝子で自動的に決まるのですから。次に進みましょう。
生殖後期の重要性

出穂期から開花に至る期間、生殖後期は成長過程の中で最も重要なタイミングはここです。他が重要でないという意味ではないですが、このタイミングは非常に、非常に重要です。ここでは出穂期から開花に焦点を当てて考えていきましょう。

生殖後期は、3つの段階に分けることができます。止葉の出現と穂ばらみが開始する茎立期、花穂が出現する出穂期、開花プロセス開始の開花期3つの過程です。では、小花に何が起こるかを見ていきましょう。
すでに述べた通り、小花の数は遺伝的に決定されていますが、実は多くの小花がこの期間に葉が死ぬことになるのです。この期間とは、この穂ばらみが始まるタイミングから、開花までの期間です。そしてこの期間に穀粒の数が決定されます。
生殖後期では、小穂内に小花の原基が発達し、この過程の結果、穂の受精能力が決定されます。だからこのタイミングは最も重要なのです。通常、一つの小穂ごとに6から12の小花の原基が形成されますが、そのほとんどは開花前に退化します。
選択的に退化させるのは小麦の生存戦略であり、いくつかの小花の原基が犠牲になることで、残りの小花が生き残ることを可能にします。すべての小花が成長するための十分な栄養素やエネルギーがないため、いくつかの小花は死ぬことが決まっています。
多くの小花を形成しても、それらすべてに十分なエネルギー、十分な栄養素がなければ、後に穀粒になることはできないので、小花が死ぬことは小麦にとって問題ではありません。穀粒の形成後は花は細胞分裂のために、その後は穀粒の充填のための多くのエネルギーや栄養素が必要です。
小麦が十分な栄養がないと判断すると、より多くの花を枯らせることになり、それが今ここで起こっている現象です。これは非常に小さい小穂が形成されているもので、TSは頂端の小穂という意味で頂花と呼ばれます。第2小穂、第6小穂など、21番目の小穂まで確認できます。
花は小穂の中で発達するのですが、そのうち多くの花が枯れていくのです。多くの花が枯死するのは問題です。生産者はできるだけ多くの花を生き残らせ、できるだけ多くの穀粒を収穫したいからです。

花がなぜ死ぬのか?すでに述べてきた通り、十分なエネルギー、十分な炭水化物がない場合、炭水化物だけでなく、カルシウム、リン、窒素なども含めて、栄養素が十分ではない場合、花は死んでしまいます。
したがって、花の死は研究者にとって収量増加のための最も重要なテーマの一つとされています。花の原基の生存は花芽分化よりも重要です。つまり重要なのは、多くの花を持つことではなく、花の死を防ぐことです。
穀粒の数は、主に開花時に受精した花の数により決定されるのです。なぜかと言うと、現代品種の小麦では受精した花の90%以上が穀粒を形成するからです。残りの10%が穀粒を形成しないのは、受粉不良が原因である可能性が高いからです。ですから、ここには改善の余地があるわけです。
花の死の原因は何でしょう?それは主に糖の吸収や糖の可用性に関連していますが、それだけではなく、窒素の吸収や可用性も影響しています。しかし、主には糖の可用性が原因と思っています。研究者たちは、植物は、葉が窒素を利用するために、受精した花数を増やすことを制限していることを発見しました。
逆に考えると、植物の葉の窒素利用効率を高めることができれば、受精する花の数を増やすことができるということを意味します。ここで言う「受精した花」とは、これら生きている花のことです。これらの花は死んでいて明らかに受精していません。
研究者たちは、小花の発達速度を上げること、つまり小花を早く成長させることができれば、受精する小花の数を増やすことができ、それによって枯れる花の数を減らすことができるとも見ているようです。
T6P(トレハロース 6-リン酸)遺伝子と花の生存

さて、対策すべき課題が分かりました。さてここで大変有益な遺伝子であるT6Pにより活性化される遺伝子に注目してみましょう。この遺伝子は小麦においてどのような効果があるのでしょうか?それは糖を花に優先的に配分する働きをします。つまり、この遺伝子が刺激されると、糖や蓄積されたエネルギーが、植物の他の部分に行くのではなく、花に向かうようになるのです。
つまりこのT6Pで活性化される遺伝子を活用すると、より多くの花が生存するためのエネルギーを供給することが可能になる、つまり対策・解決策になるのです。このような小麦の花の生存の理由は他の作物や果樹とおそらく同じでしょう。私はむしろ違う点に注目しています。
この遺伝子が行っているもう一つの重要な役割は種子の充填、稔実の制御だということです。これについては後ほど詳しく説明します。このT6Pで活性化される遺伝子を活性化させれば、花序の形成が促進され、花の枯死を防ぎ、穀粒の登熟が改善されます。
このT6Pで活性化される遺伝子は、テカミンフラワーの施用によって活性化されます。覚えていますか?しかしこのタイミングは、生産者は通常は何も散布しないのです。時々、栽培者はここで殺菌剤を散布しますが、毎回散布するわけではありません。
私が知る限りでは、このタイミングでテカミンフラワーを試験したことはありません。しかし、試してみたら非常に良い結果を得られるかもしれません。これが今日の最後のスライドでしたね。最後に、このタイミングにファーティグレインフォリアーを施用したら何が起こると思いますか?
このタイミングにファーティグレインフォリアーを葉面散布を施用すると、穀物の登熟が遅れることになるでしょう。その結果、収穫が遅れる可能性が高いことを認識し、よく理解しておかなければいけません。収穫の遅れは大問題になる可能性があります。なぜなら、この時期は秋の始まりで、最低気温が下がり、日差しも弱くなり、すなわち光量が不足して登熟が進まないことがあるからです。
最終的に未熟な穀粒のまま収穫せざるを得ないでしょう。さて、今日はこれで終わりとさせて下さい。今日は11時に用事があるため、この話は次回に持ち越しましょう。次回、穀物の登熟について詳しく話し合う予定です。もし日本の栽培者がこのタイミングで殺菌剤を使用しているのであれば、テカミンフラワーの混用散布の試験を是非実施してみて下さい。
その結果は大変興味深いです。世界で初めての試験になりますが。質問があればどうぞ。穀粒の登熟をどのように増やすかについては来週話すので、それ以外でお願いします。小麦に対しては、微量養素をどのように施用すればよいかについて知りたいのですね。
日本で発売されている商品をいつどう施用すべきか、まとめ表を作成しましょう。あいにく、日本での小麦の栽培歴については私は詳しく知りませんので、作成前に教えて下さい。生産者が除草剤や殺菌剤やバイオスティミュラントを、通常はいつ何回施用するか等を知りたいです。
バイオスティミュラントは混用が基本と思いますので、他の材と同タイミングでの施用を前提に提案を作る必要があります。施用を制限する要素は、勿論コストも重要ですが、むしろ日本では施用回数と施用タイミングが現実的なのかが重要と考えています。
【本記事で紹介のバイオスティミュラント】
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