【プロ農家必見】春〜初夏に気をつけたい3大病害・べと病・炭疽病・うどんこ病の特徴と対策

基礎知識 更新日:

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】
 



目次

    春から夏へと移り変わるこの時期。作物にとって生育に適した季節である一方で、病気のリスクも高まっていきます。
    中でも、「べと病」「炭疽病」「うどんこ病」は、発生頻度が高く、畑への被害も大きい代表的な病害です。これら3つの病気にはそれぞれの特徴がありますが、共通する原因や注意点も多く、早めの予防と対策が重要です。
     本記事では、それぞれの病害の概要と共通点を、現場の視点でわかりやすく解説します。

    各病害の特徴

    1.べと病

    べと病は、「卵菌類(らんきんるい)」によって引き起こされる葉の病気です。 卵菌類は一見カビに似た形態を持ちますが、真菌とは異なる分類群に属しており、原生生物の一種とされています。

    主な症状:

    • 葉に淡黄色のにじんだ斑点

    • 裏面に灰白色のカビ状胞子

    • 病斑が進行するとステンドグラス状に変化し、葉全体が枯れる

    特に、キュウリ・キャベツ・レタスなどでよく見られ、「気温20~24℃、高湿度の時期(梅雨・秋雨)」に発生しやすくなります。

    2.炭疽病

    炭疽病は、「コレトトリカム属の糸状菌(カビ)」によって引き起こされる病害です。
    葉や果実、茎など、さまざまな部位に感染し、見た目の品質も大きく損なわれます。

    症状の例:

    • 葉に黒っぽくざらついた病斑

    • 茎や果実にへこんだ黒い輪紋(りんもん)

    • 進行すると果実の腐敗や株の枯死

    炭疽病は、梅雨明けや台風後の高温多湿期に一気に広がる性質があり、ナス・キュウリ・果樹類などで特に注意が必要です。

    3.うどんこ病

    うどんこ病は、「うどんこ病菌(糸状菌)」による病気で、葉や茎の表面に白い粉状のカビが現れるのが特徴です。

    よく見られる症状:

    • 初期は葉に白い斑点状の粉

    • 病斑が広がると、粉をまぶしたような状態に

    • 重症化すると葉の縮れ・黄変・枯死

    うどんこ病は葉面が乾燥していても発生する珍しい病気で、風通しが悪い場所や日照不足・肥料切れなどで株が弱っているときに感染しやすくなります。ウリ科やナス科の作物、イチゴ・バラなど幅広い作物に発生します。


    各病害の対策方法

    1.べと病の対策

    ① 環境管理

    • ハウス内ではこまめに換気を行い、湿度の滞留を防ぎます。

    • 畑では密植を避け、風通しを確保します。

    • 排水対策や、敷きわら・ビニールマルチの活用で葉面への水滴の跳ね返りを抑えましょう。

    • 同一作物の連作は避け、土壌中に残る病原菌のリスクを下げることも有効です。

    ② 肥料管理

    • 窒素の過剰施肥は徒長と軟弱な生育を招くため注意が必要です。

    • 肥料不足による草勢低下も病害の誘因となるため、適切なタイミング・量で施肥を行いましょう。

    • カルシウムやマグネシウムなどの微量要素も見直し、細胞強化を図ります。

    ③ 薬剤防除

    • 雨の多い時期や結露が続く時期には、発病前の予防的な薬剤散布が効果的です。

    • 葉の表裏両面へムラなく散布することがポイントです。

    • 同じ系統の薬剤を連続で使用すると耐性菌が出るため、FRACコードを確認しながらローテーション使用を行います。

    ④ 感染株の早期処分

    • 病斑を発見したらすぐに葉や株を圃場外へ除去・焼却処分します。

    • 放置すると他株への空気感染・飛散のリスクが高まるため注意が必要です。

    べと病の被害を防ぐには、「湿気・栄養・密度」の3つの管理が重要です。日々の観察と予防を徹底することが収量・品質の維持につながります。

    2.炭疽病の対策

    ① 環境管理

    • 圃場の風通しを良好に保ち、湿気が滞らないようにします。

    • 雨よけ施設の設置や高設栽培の導入により、水はねによる飛散を抑えます。

    • 落ち葉や前年の残渣は必ず片付け、菌の越冬・再感染の機会を減らしましょう。


    ② 薬剤防除

    • 予防的な薬剤散布は、梅雨入り前・台風シーズン直前などタイミングを意識して行います。

    • 病害発生後は、治療効果のある薬剤(浸透移行性)を使用し、圃場全体にまんべんなく散布します。

    • 耐性菌リスクを防ぐため、作用機構の異なる薬剤をローテーションで活用します。

    ③ 感染部の除去と圃場衛生

    • 病斑が出た部位は早期に切除し、圃場の外へ持ち出して焼却・埋却処分を徹底します。

    • 感染が広範囲の場合は、株ごと除去し、後処理として防除剤の全体散布を実施。

    • 土壌に残った病原菌にも注意し、再発防止のための土壌消毒や資材投入も検討しましょう。

    炭疽病の広がりは非常に早いため、「感染させない・広げさせない」の2つの観点を持った現場管理が大切です。日頃からの衛生管理と早期対応が被害軽減のカギを握ります。

    3.うどんこ病の対策

    ① 環境管理

    • ハウス栽培では定期的な換気を行い、過度な乾燥と湿度の停滞を防ぎます。

    • 露地では適度な剪定や株間の確保を行い、空気の流れをつくることが基本です。

    • 灌水は朝方に行い、葉が長時間濡れたままにならないように管理します。


    ② 感染葉の除去

    • 白い粉状の病斑を確認したら、早めに病葉を取り除き、圃場の外で処分します。

    • 圃場内に放置すると胞子が飛散し、他の株への感染源となります。


    ③ 農薬の予防・防除

    • 初期段階では、登録された殺菌剤を葉の表裏両面にまんべんなく散布します。

    • 既に病気が広がっている場合でも、菌糸や胞子が残るため、肉眼で見えない部分も含めて丁寧な処理が必要です。

    • FRACコード(作用機構の分類)を確認しながら、異なる系統の農薬をローテーションで使い、耐性菌の発生を防ぎます。

    農薬を使っていると、「前に効いた薬なのに、今回は効きが悪い気がする…」そんな経験はありませんか?実はそれ、病原菌が薬に慣れてしまっている(=耐性がついている)可能性があるのです。

    これは、風邪薬をずっと同じものばかり飲んでいると、効きにくくなるのと同じような現象です。このような“効かなくなるリスク”を防ぐために、農薬は「同じタイプを続けて使わないこと」が大原則です。ここで役立つのが、「FRACコード」という仕組みです。

     

    FRACコードってなに?

    FRACコード(Fungicide Resistance Action Committee code)は、その農薬がどんな仕組み(作用機構)で病原菌に効くかを示した分類番号です。

    お店で売っている農薬のラベルに「FRACコード:11」や「FRAC:3」などと書かれていることがありますが、これはまさにその農薬が「どのグループに属しているか」を表しています。つまり…

    • FRACコードが同じ薬は、同じ仕組みで効く=連続使用はNG

    • FRACコードが違う薬は、違う仕組みで効く=交互に使えばOK

    という使い分けの目安になるのです。

     

    使い方のイメージ

    たとえば…

    • 1回目にFRAC【11】(アゾキシストロビン)を使ったら

    • 2回目はFRAC【3】(テブコナゾール)など、違う番号の農薬に切り替える

    これが「ローテーション防除」と呼ばれる、病気を賢く防ぐテクニックです。連続で同じ番号を使わないようにするだけで、耐性菌のリスクを大きく減らすことができます。

     

    よく使われるFRACコードと特徴(家庭菜園・露地栽培向け)

    FRACコード

    作用機構の概要

    主な薬剤の種類・例

    特徴

    M群(M1, M3, M5)

    多作用点型(接触型・古典的)

    ボルドー液、マンゼブ、石灰硫黄合剤など

    耐性が出にくい。葉の表面にとどまり予防中心。

    3

    ステロール生合成阻害(DMI)

    テブコナゾール、ミクロブタニルなど

    広く効くが連用注意。作用点が一つで耐性化しやすい。

    7

    コハク酸脱水素酵素阻害(SDHI)

    フルキサピロキサド、ボスカリドなど

    予防と治療に有効。耐性リスクが高いグループ。

    11

    ストロビルリン系(QoI)

    アゾキシストロビン、クレソキシムメチルなど

    非常に広く使われているが、耐性化しやすい。予防中心。

    33

    有機リン・リン酸塩系

    ホスエチルアルミニウム(例:ホスホナト)

    吸収移行型。病気予防と植物の体力サポートの両面あり。

    40

    アミノ酸代謝阻害(新規機構)

    キノキサフェンなど

    新しいタイプで治療効果もあり。交互使用向き

    U群(U1, U6など)

    その他・分類不能

    バチルス菌由来の生物農薬など

    抵抗性リスクが低く、有機・環境配慮型の栽培でも使用可。


    🧾 FRACコードの確認方法
    • 農薬ラベルや製品説明書に「FRACコード:○○」と書いてあることが多いです。
    • 日本では「作用機作分類」「作用性コード」などと表記されている場合もあります。

     

    各病害に共通する3つのポイント

    この3つの病害には、共通した注意点があります。以下の3つを意識することで、幅広い病害に備えることができます。

    ①湿度と風通しが大きく関係

    • べと病・炭疽病は高湿度・高温の環境で急速に進行

    • うどんこ病はやや乾燥気味でも広がるが、風通しの悪さが共通のリスク

    • ハウス栽培では特にこまめな換気が重要

    ②肥料管理と草勢管理が鍵

    • 窒素過多による徒長・過繁茂は病気を招きやすい

    • 肥料不足による草勢低下も同様にリスクに

    • 微量要素(カルシウムなど)の補給も意識する

    ③早期発見と除去・ローテンション防除

    • 病斑が出てからでは、完全な回復は難しい

    • 病気が出た葉や果実は、早めに圃場外で処分

    • 薬剤は、作用の異なる系統をローテーション使用し、耐性菌の発生を防ぐ


    健全な生育を支えるバイオスティミュラントという選択肢

    こうした病害に対するもう一つのアプローチとして、バイオスティミュラントの活用も広がっています。「Tecamin Max(テカミンマックス)」は、アミノ酸を主成分とし、作物の体力維持・回復力のサポートに優れた製品です。

    バイオスティミュラントとは、植物そのものの生理機能を活性化させ、ストレス環境下でも健全な成育を保つために用いられる農業資材のことです。農薬のように病原体を直接攻撃するのではなく、植物の免疫力や代謝機能、根の活性や養分吸収能力を高めることに主眼が置かれています。

    たとえば、高温や乾燥、肥料ストレス、病気による一時的な草勢の低下などに対して、植物の自己回復力を後押しするのが、バイオスティミュラントの役割です。

    とはいえ、「バイオスティミュラント」と聞くと、家庭菜園ユーザーの方にはまだ馴染みがないかもしれません。しかし実際には、“薬に頼る前に植物を丈夫にする”という考え方は、限られた環境・資材で栽培する家庭菜園にこそフィットするアプローチとも言えます。

    べと病:湿害でも負けない株づくり、草勢維持に

    炭疽病:樹勢が落ちた株の体力回復と、初期対応の補強に

    うどんこ病:日照不足や肥料不足下でのストレス耐性の向上に

    病気を「防ぐ」のではなく、かかりにくい状態を保つためのサポート資材として、農薬との併用も可能です。回復促進や健全な成長を助ける“非農薬的”な補助資材であり、病気にかかっても負けにくい体をつくる目的で使用されます。

    なお、薬剤を使用する際は、発症後の対応はあくまでも拡大抑制が目的であることを理解し、予防的な散布と早期対応を徹底することが基本です。また前述のとおり、FRACコードを活用したローテーション防除を実践することで、耐性菌リスクを最小限に抑えることができます。

    まとめ

    病気が出てからでは遅く、日頃からの管理がすべての土台になります。
    今回ご紹介した「べと病・炭疽病・うどんこ病」は、どれも日々の環境づくりと早期対応によって、被害を大きく減らすことができます。

    「湿度・換気・肥料バランスを整え、株の状態をこまめに観察し、必要に応じて防除とバイオスティミュラントを活用する」この春〜夏、作物が健康に育つ環境づくりの参考になれば幸いです。

     

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