毎年繰り返す「炭疽病」の原因と対策!再発防止へのステップ

基礎知識 更新日:

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】
 



目次

    毎年のように畑や果樹園で発生する炭疽病に頭を抱えていませんか?一度発症すると農薬を散布しても効果が感じられず、結局広がって収穫に大打撃…そんな経験を重ねると、「なぜ防げないのか?」と悩むのも無理はありません。

    しかしご安心ください。炭疽病が毎年繰り返し発生する根本原因を理解し、適切な対策を取れば、被害を最小限に抑えることは可能です 。

    本記事では、炭疽病が防げない理由をひも解き、その上で「炭疽病の根本原因と3つの対処ステップ」をご紹介します。予防に重点を置いた“7割予防・3割初動”のアプローチで、炭疽病サイクルの悪循環を断ち切りましょう。今年から実践すれば、来年以降の再発ゼロも夢ではありません。

    毎年発生する炭疽病…なぜ防げないのか?

    炭疽病は、カビの一種である「炭疽菌」によって引き起こされます。

    葉・茎・果実など、あらゆる部位に感染するのが特徴で、被害の範囲は多岐にわたります。

    炭疽病の代表的な症状は、以下のとおりです。

    • 葉の表面にざらつきが出る

    • 黒っぽい病斑が現れる

    • 葉に穴があく

    • 果実表面が黒く変色し、最終的に腐敗する

    これらの病斑は徐々に広がっていき、最終的には収穫できない状態にまで悪化します。

    たとえ収穫時に外観がきれいでも、 果実内に潜伏感染した菌が貯蔵・輸送中の高湿条件下で発症し、出荷後に腐敗することもあるため、特に注意が必要です。

    潜伏感染とは、外見上は健康に見えても、作物内部ではすでに病原菌が活動している状態のことで、また、果実だけでなく、株そのものを枯らしてしまうほどの被害をもたらすケースもあります。


    農薬をまいても効果が見えない理由とは?

    「ちゃんと農薬をまいているのに、どうして毎年炭疽病が出るのか…」多くの農家が感じるこの疑問には、炭疽病の性質と農薬の使い方のズレが関係しています。

    まず、炭疽病は発病前にすでに作物の中に菌が入り込んでいることが多く、外見上はまだ症状が出ていない潜伏感染の状態で進行します。このため、「見た目に症状が出てから」農薬をまいても、すでに手遅れになっているケースが多いのです。

    また、炭疽病に対しては予防的に作用するタイプの農薬を使うのが一般的ですが、この薬剤はあくまで“菌が侵入する前”に効果を発揮するものであり、すでに感染が成立してしまった後では効果が限定的です。

    つまり、「発症してから農薬をまいても、菌の進行を止めきれない」ということになります。さらに、炭疽病の感染タイミングは気象条件と密接に関係しており、特に梅雨や台風などの高湿度環境で菌の活動が活発になります。

    にもかかわらず、散布のタイミングが晴天続きの時期や、湿度が低い日ばかりに偏っていると、的を外した防除になってしまうのです。農薬が効かないのではなく、「菌の特性に合ったタイミングで、適切な薬剤を予防的に使えていない」ことこそが、効果が見えない理由の正体だと言えるでしょう。


    「発症してから動く」では手遅れになる

    炭疽病対策で陥りがちなのが、「まず様子を見て、症状が出てから動く」という後手の対応です。しかし、炭疽病に関してはこの姿勢が被害拡大の最大の原因になっていることもあります。

    炭疽病は、発症した時点ですでに周囲の株へと菌が広がり始めている可能性が高い病気です。というのも、病原菌は感染から発症までに潜伏期間があるため、見た目には症状がない間に、実際は葉や果実の内部で菌が活動しているケースが珍しくありません。

    さらに、発症部位では短時間のうちに分生子(胞子)が大量に形成され、雨や水はねによって飛散します。これが新たな感染源となり、次々と健康な株へと伝染していくのです。 分生子(胞子)とは、主にカビなどの菌類が無性生殖の方法として形成する胞子の一種で雨で飛散しやすい形態のことです。

    たとえば、梅雨や台風などの高湿度期では、この二次感染が加速度的に広がるため、「病斑が1〜2ヶ所出てきた」と思っている間に、すでに圃場全体に菌が飛び火している可能性があります。このように炭疽病は、“見えてから動く”のでは間に合わない病気です。日頃からの予防管理はもちろんのこと、初期症状を見逃さず、発見と同時に初動対処を行うことが、被害を最小限に抑えるカギとなります。


    炭疽病の発生原理と感染のメカニズム

    「なぜ毎年のように炭疽病が出るのか?」──

    この問いの答えは、炭疽病菌の生存戦略と感染の仕組みにあります。

    炭疽病は、コレトトリカム属の糸状菌によって引き起こされ、葉・茎・果実などあらゆる部位に感染します。野菜・果樹を問わず発生しやすく、特に高温多湿の条件下で活発に広がることが知られています。

    この章では、こうした炭疽病のメカニズムについて、以下の3つの観点からさらに詳しく見ていきます。

    • 前年の残渣が“火種”になる

    • 雨風とともに広がる目に見えない感染

    • 株の“弱り”が発症の引き金に

    前年の残渣が「火種」になる

    炭疽病が毎年のように発生してしまう最大の原因は、病原菌が前年の作物残渣や落ち葉に残ったまま越冬し、翌年の感染源となっている点にあります。

    例えば、前の年に炭疽病が出た葉や果実を圃場内に放置していた場合、それが菌の“越冬場所”となり、春から初夏にかけて再び活動を始めるのです。見た目にはすでに枯れていても、炭疽病菌はその中で静かに生き続け、湿度と気温が揃う梅雨や台風の季節に合わせて再び畑の中で拡散を始めます。このようにして再浮上した菌は、雨風で飛ばされ、周囲の健全な作物に付着。葉や果実に傷があれば、そこから菌が侵入して感染が成立します。

    つまり、前年にしっかりと圃場を清掃・処分していなければ、翌年もまた同じ場所から炭疽病が出る可能性が高くなるということです。このようなリスクを避けるためには、

    • 収穫後の落ち葉や病斑の出た果実・枝などを圃場に残さない

    • 必ず圃場外に搬出し、焼却または埋却する

      といった対応を徹底することが重要です。

    炭疽病は「翌年に持ち越さない」意識がとても重要な病害です。目に見えない“火種”を絶つことが、最大の予防策につながります。


    風雨によって広がる目に見えない感染

    炭疽病が厄介なのは、感染のスピードと拡散範囲が非常に広いことです。しかも、その感染は目に見えない形で静かに進行していきます。

    炭疽病菌は、感染した葉や果実などの病斑部に分生子と呼ばれる胞子を大量に形成します。この胞子は水に溶けやすく、雨が当たると跳ね返った水とともに周囲の作物へ飛び散り、飛沫感染を引き起こします。

    また、風によってもこの胞子が圃場内を移動し、さらなる感染を誘発します。雨と風が合わさるタイミング──たとえば梅雨や台風、秋雨の時期などは、まさに炭疽病が一気に広がるリスクが高まる時期といえます。

    さらにやっかいなのは、これらの感染が外見ではわからない「潜伏期間」に行われていることです。病原菌が付着し、作物内部に侵入してから実際に病斑として現れるまでに時間差があるため、感染源に気づいたときにはすでに複数の株に広がってしまっている可能性があります。つまり、雨が続いたあとに「急に広がった」と感じるのは、実際にはその前から感染が進行していた証拠です。こうした目に見えない拡散を防ぐには、予防的な管理と早期の察知が何より重要になります。


    株の弱りが感染の原因に

    炭疽病は、単に病原菌が付着したからといって必ず発症するわけではありません。実は、菌が侵入してもすぐに病斑が現れないのは、作物側がある程度の抵抗力を持っているためです。しかし、株が弱っていると話は別です。たとえば、以下のような状態は炭疽病の発症を引き起こしやすくなります:

    • 肥料の過不足による栄養ストレス

    • 梅雨時の過湿状態や排水不良

    • 病気・害虫などの影響で樹勢が低下している

    • 強剪定や風害などで傷が多くついている

    このように、炭疽病の発症には「菌の存在」だけでなく、「株のコンディション」が深く関わっています。特に注意したいのが、高温多湿の時期に樹勢が落ちている状態です。菌にとっては、弱った株こそが“狙い目”。感染から発症へと進む確率が一気に高まります。

    つまり、炭疽病の防除は、病原菌だけを見るのではなく、株の健康状態を保つことも同じくらい重要だということです。日ごろから栄養管理・排水管理・剪定の方法などを見直し、株に無理をさせない育て方を意識することで、炭疽病に負けない圃場づくりが可能になります。


    炭疽病対策の実践ステップ

    炭疽病に繰り返し悩まされている方にこそ、実践していただきたい考え方があります。それは、「予防7割・初動3割」というバランス感覚です。

    炭疽病は、一度発生してしまうと病斑が現れた部分の完全な回復は難しく、作物の品質や収量に大きなダメージにつながりかねません。そのため、「そもそも発症させない」ための予防的な管理が対策の中心になります。

    一方で、いくら予防に努めていても、長雨や高湿度といった気象条件が揃えば、どうしても発症してしまうこともあります。そんなときに重要なのが、初動のスピードと判断力です。この章では、「予防7割・初動3割」の実践を支える3つの具体的なステップを紹介します

    • 落ち葉・病残さは圃場に残さない

    • 湿度が上がる前の“予防散布”が鍵

    • 発症時は即処理!迷わない対処法

    日々の圃場管理の中にこの3ステップを組み込むことで、炭疽病の発症リスクをぐっと抑えることができます。


    ①落ち葉、病残さは圃場に残さない

    炭疽病の最大の予防策は、病原菌の“越冬場所”を作らないことです。そのためにまず取り組むべきが、落ち葉や病残さの撤去です。

    炭疽病菌は、前年に発病した葉・果実・茎などの中に潜んで越冬します。そして、梅雨や台風など湿度が高くなる時期に再び活動を始め、風や雨を介して新たな作物に感染します。つまり、畑や果樹園に放置された病残さが、翌年の感染源=“火種”になるのです。この火種を断つには、以下の点を徹底する必要があります

    • 収穫後の落ち葉・剪定枝・病果を圃場に放置しない

    • 病斑のある葉や果実は圃場外に持ち出して焼却または深く埋却

    • 堆肥化する場合も高温発酵を確実に行う(不完全だと菌が残るおそれ)

    特に注意すべきは、剪定後の放置です。園地の片隅に積んだままにしていると、そこから炭疽病菌が再び圃場へと広がってしまうケースが多く見られます。

    たったひとつの病葉が、来年の被害につながる可能性もあります。「小さな手間が大きな予防」につながると心得て、作業のたびに丁寧に片付けを行いましょう。


    ②湿度が上がる前の「予防散布」が鍵

    炭疽病対策において、農薬の効果を最大限に活かすには、「いつまくか」が非常に重要です。ポイントは、症状が出てからではなく、症状が出る前=感染が成立する前に予防的に散布するということです。

    炭疽病菌は高温多湿を好み、特に気温25℃前後・湿度80%以上の条件下で活発に増殖・拡散します。つまり、梅雨入り前や長雨の予報が出ているタイミングこそが、予防散布の最重要ポイントです。実際の対策としては

    • 梅雨の2週間前を目安に初回の予防散布

    • 雨が続く期間中は7〜10日おきに継続散布

    • 散布前後の天候も考慮し、降雨直前を避けて乾いた時間に施用

    このようにして、作物の表面をあらかじめ薬剤でカバーしておくことで、病原菌が付着しても感染を防ぐことができます。

    また、ハウス栽培の場合は、雨の直接被害は少ないとはいえ、結露や蒸れによる湿度上昇でも炭疽病が広がることがあります。ハウスでも油断せず、予防散布のスケジュールを立てておくことが肝心です。農薬は、ただ「まく」のではなく、“予測して先回りする”意識で使うことが成功のカギ。それが「予防7割」の最も重要な実践です。


    ③発症時は即処理!迷わない対策法

    どれだけ予防に努めていても、長雨が続いたり気温・湿度の条件がそろってしまえば、炭疽病が発生してしまうこともあります。そのときに問われるのが、「どれだけ早く・的確に動けるか」です。

    炭疽病の病斑が確認された場合、対応は一刻を争います。というのも、病斑部にはすでに大量の胞子(分生子)が形成されているからです。これらが雨や水はねによって飛び散れば、周囲の健康な株へあっという間に感染が広がってしまいます。このため、初動対応としては次のような処置を行いましょう

    • 症状が軽ければ、病斑のある葉や果実のみを切除

    • 広範囲に広がっている場合は、株ごと抜き取って圃場外へ搬出

    • 処分は必ず焼却または深い埋却で、圃場内に放置しない

    • 周囲の株にも治療効果のある農薬を速やかに散布し、拡大を防ぐ

    「まだ少ししか出ていないから」「収穫期だから残したい」――そうした迷いが被害の拡大を招きます。炭疽病は治療より隔離・除去が有効な病気と割り切り、思い切った対応をとることが、結果的に圃場全体を守ることにつながります。

    また、発病株の周辺には、目に見えない潜伏感染株がすでにあると考え、接触を避ける管理や、株間の見直し、作業順序の工夫なども意識しましょう。「迷わず、すぐに、確実に」――これが、初動3割の鉄則です。


    再発0に向けて、今始めること

    炭疽病対策で最も重要なのは、「今年だけしのげればいい」という発想から抜け出すことです。炭疽病は、一度出ると圃場に菌が残りやすく、翌年以降も繰り返し発生しがちです。逆に言えば、いまの行動が、来年・再来年のリスクを減らす投資になるということでもあります。

    この章では、炭疽病の“再発ゼロ”を目指すうえで、特に意識しておきたい2つの視点をご紹介します。


    炭疽病を「今年の病気」と考えない

    炭疽病は、たまたま今年の天候が悪かったから出た…という一時的な病気ではありません。その実態はむしろ、前年の管理が不十分だった結果として「今年もまた出た」病気といえます。圃場に残った病葉、剪定枝、病果などの残渣をきちんと処理しなければ、そこに菌が潜んだまま越冬し、翌年ふたたび作物に感染します。

    この「持ち越し型」の感染サイクルを断ち切るには、病気が出た年こそ、圃場内外の衛生管理を徹底する必要があります。また、炭疽病の被害が大きかった年は、翌年の感染リスクも格段に高くなるという意識を持ち、予防対策をより早い段階からスタートさせるべきです。

    「今年を乗り切る」ではなく、「来年に持ち越さない」。この発想の転換が、長期的な炭疽病対策の第一歩です。

    健全な成長を支える「バイオスティミュラント」という選択肢

    ここまで、農薬による予防・防除を中心とした病害対策を紹介してきましたが、実はそれとは異なるアプローチとして、近年注目されているのが「バイオスティミュラント」の活用です。バイオスティミュラントとは、植物自身の生理機能や自然な回復力を高めることを目的とした農業資材の総称で、農薬や肥料とは異なるカテゴリーに位置づけられています。

    より専門的に言えば、アミノ酸・海藻抽出物・微生物代謝物などを含み、植物のストレス耐性や養分吸収能力、根の発達などをサポートするものです。これらは病原菌を直接攻撃するのではなく、植物が「病気にかかりにくい体づくり」をするための土台を整える資材と考えられています。

    たとえば、高温や乾燥、肥料ストレス、病気による一時的な草勢の低下などに対して、植物の自己回復力を後押しするのが、バイオスティミュラントの役割です。

    とはいえ、「バイオスティミュラント」と聞くと、家庭菜園ユーザーの方にはまだ馴染みがないかもしれません。しかし実際には、“薬に頼る前に植物を丈夫にする”という考え方は、限られた環境・資材で栽培する家庭菜園にこそフィットするアプローチとも言えます。

    「Tecamin Max(テカミンマックス)」は、アミノ酸を主成分とし、作物の体力維持・回復力のサポートに優れた製品です。病気を「防ぐ」のではなく、かかりにくい状態を保つためのサポート資材として、農薬との併用も可能です。 「Tecamin Max(テカミンマックス)」は、ストレス環境下での抗酸化酵素活性や代謝維持をサポートすることで、株の回復力や健全性を維持し、結果的に病害に対する抵抗力を支えることにより、炭疽病などの病害に対する間接的な抵抗力向上が期待できます。バイオスティミュラントの活用は病原菌に直接作用する農薬とは異なり、植物自身の健康維持や環境ストレス耐性の向上を助け、結果的に病害への抵抗力を高めるアプローチなのです。

    今シーズンの成功は「今の行動」で決まる

    炭疽病に限らず、多くの病気は発症してからでは被害をゼロにはできません。だからこそ、「まだ出ていない今この時期」にこそ、最も重要な対策を打つ必要があります。たとえば今できる行動としては

    • 圃場に落ち葉や剪定枝が残っていないか確認し、処分する

    • 排水性や風通しを見直し、湿気がこもらない環境をつくる

    • 梅雨や台風シーズン前の予防散布計画を立てておく

    • 発病時の対応フロー(除去・防除範囲・作業順序)を整理する

    これらはすべて、「症状が出てから」では間に合わない内容です。反対に、今ここで準備を始めておけば、いざというときに迷わず行動でき、被害も最小限に抑えられます。「今年はまだ出ていないから大丈夫」ではなく、「今動けるからこそ、再発を防げる」。そう考えて行動することが、炭疽病ゼロ圃場への最短ルートです。

     

    まとめ

    炭疽病は、前年の残渣が原因で毎年繰り返し発生しやすい病気です。対策の基本は、以下の3つに集約されます。

    • 落ち葉や病残さを残さない(越冬源を断つ)

    • 発症前の予防散布(高温多湿期の前が勝負)

    • 発症時は迷わず処理(病株は早期除去・隔離)

    また、「発症してから動く」では遅く、“予防7割・初動3割”の意識が重要です。今年の対策が、来年の炭疽病ゼロにつながります。今からできることを一つずつ始めていきましょう。


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