うどんこ病の発生原因と再発防止の決定版!

基礎知識 更新日:

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】
 



目次

    「農薬をまいても、またうどんこ病が出てしまった…」

    そんな悩みを毎年抱えていませんか?特に40〜50代の経験豊富な農家の方々ほど、「同じことを繰り返している気がする」と感じているかもしれません。実はうどんこ病には、発生しやすくなる“見落としがちな原因”と、再発を止めるための確かな方法があります。農薬の選び方や使い方だけでなく、畑の環境や日々の管理にこそ、再発の原因と解決策が隠れているのです。

    本記事では、うどんこ病のメカニズムから防除のコツまでを徹底解説。読み終えるころには、「もう発生させないために今やるべきこと」がはっきり見えてくるはずです。

     

    毎年繰り返すうどんこ病…なぜ防げないのか?

    農薬をまいても効かない「根本原因」とは?

    「きちんと農薬をまいているのに、またうどんこ病が出た」毎年同じように発病してしまうと、何が悪いのか分からず困ってしまう方も多いのではないでしょうか。

    うどんこ病がやっかいなのは、見た目に見える白いカビを取り除いても、病原菌そのものが完全にいなくなるわけではないからです。この病気の原因となる「うどんこ病菌」は、Erysiphales目に属するカビの一種で、植物の表面に寄生し、菌糸を伸ばしながら栄養を吸収して増殖していきます。症状は以下のように進行します。

    • 最初:葉や茎に白い点状のカビが出現

    • 中期:粉をまぶしたように斑点が広がる

    • 後期:葉や茎が縮れたりねじれたりして変形

    • 最終:葉が黄変し、枯死する場合もある

    つまり、白い粉が見えなくなっても、葉の裏や隙間、さらには内部に残った菌糸や胞子が再び活動を始め、発病が繰り返されるのです。加えて、農薬の散布にも注意が必要です。葉の表面だけでなく裏面までしっかり薬剤がかかっていないと、完全な防除にはなりません。 また、同じ系統の薬剤を長く使っていると病原菌が耐性を持つようになり、効き目が弱まることもあります。


    「うちだけ発生する…」のには理由がある!

    「隣の畑では出ていないのに、なぜ自分の畑だけ?」こうした疑問も、うどんこ病ではよくある話です。実は、うどんこ病は圃場の環境条件と管理状態のわずかな違いでも発生しやすさが変わってきます。特に以下のような環境では、病原菌が好んで繁殖します。

    • 通気性が悪く湿度がこもりやすい

    • 日照が不足して株が弱っている

    • 肥料不足または過剰施肥で株が軟弱になっている

    • 前作で感染した葉を畑に放置した

    このような環境では、植物の抵抗力が落ち、うどんこ病菌の侵入を受けやすくなります。さらに重要なのが、前年の病葉や枯れた株が処分されずに圃場に残っていること。うどんこ病菌は植物の残渣に付着したまま越冬・越夏し、翌年に再び発病源として働きます。


    うどんこ病の発生要因と広がりのメカニズム

    葉の裏に残る菌糸

    うどんこ病菌は、葉や茎の表面に寄生するカビ(糸状菌)の一種で、感染初期は白い点状の斑点から始まります。しかし本当に厄介なのは、見えている“粉”の奥に、目に見えない菌糸が葉の裏や細胞間にまで入り込んでいるという点です。

    この菌糸は、葉の養分を吸いながら成長し、やがて分生胞子(白い粉状の胞子)をつくって風に乗せて飛ばし、他の葉や株へと感染を広げていきます。いわば、「感染源が自ら撒き散らす仕組みを持っている」のが、うどんこ病のしぶとさの理由です。

    しかも、この菌は環境条件がそろえば短期間で再活性化します。たとえ目立つ病斑が消えても、葉の裏や小さなひび割れ部分、あるいは茎の基部などに菌糸や未発芽の胞子が残っているため、再発するリスクが非常に高いのです。

    乾燥した空気・通気不足

    うどんこ病菌のもうひとつの特徴は、「乾燥」していても繁殖するカビであるということです。

    一般的なカビは多湿を好むイメージがありますが、うどんこ病菌はその逆で、葉面が乾燥していても胞子が発芽・感染できるという性質を持っています。農研機構の資料によると、うどんこ病菌は相対湿度が40〜70%と比較的乾燥した状態でも活動が活発であり、逆に梅雨時期の高湿度では活動が鈍ることもあります(※出典:農研機構 病害資料)。

    そのため、風通しが悪くて湿度がこもりやすい場所や、日陰で葉が乾燥しにくい場所では、うどんこ病の発生リスクがぐっと高まります。ハウス栽培では特に、換気不足や葉の過密によってこうした条件が揃いやすいため、注意が必要です。

    うどんこ病は一見、軽度な病害に見えることもありますが、放置すると品質や収量の著しい低下を招くため、早期の対応が不可欠です。

    発生条件としてよく「乾燥を好む病気」と表現されることがありますが、これは真夏や梅雨時のような極端な高温・多湿環境では菌が活動しづらく、発生が少ないことを意味しています。うどんこ病菌は高温(30℃以上)や持続的な多湿条件下では活動が抑制される、または死滅しやすい性質があるため、梅雨時や真夏にはむしろ発生しにくくなるのです。

    一方で、春や秋のような「20〜25℃の適温」かつ「夜間に湿度が高くなる」時期、あるいは風通しが悪く局所的に湿度がこもりやすい環境では、発生リスクが高まります。特に夜間の高湿度(97〜99%)は胞子形成を促進し、日中はやや乾燥気味(湿度40〜70%)であることで胞子が風で拡散しやすくなります。この「夜間多湿+日中やや乾燥」という環境は、まさにうどんこ病菌にとって理想的な条件です。

    そのため、「湿気を嫌うはずのうどんこ病が、通気不足で発生しやすい」というのは矛盾ではなく、“極端な多湿は苦手だが、局所的・一時的な湿度の上昇”は好条件であるという、菌の性質の違いによるものです。

    結論としては、うどんこ病の対策では以下のようなポイントが重要です。

    • 真夏や梅雨のような「高温・持続的多湿」は発生しにくい

    • 春秋の「適温+夜間多湿」や「風通しが悪く湿度がこもる場所」は発生しやすい

    • 特にハウス内や密植状態では通気を確保することが大切

    このように、うどんこ病の発生環境は一見複雑に見えますが、「適温+局所湿度の高さ」という条件に注目することで、より的確な予防対策がとれるようになります。

     

    弱った株は感染しやすい

    うどんこ病菌は、元気な作物よりも、弱った株を好んで侵入する傾向があります。たとえば、以下のような状態では感染リスクが上がります。

    • 日照不足で光合成が不十分

    • 肥料が足りず生育が遅れている

    • 水切れや根傷みで株が弱っている

    これらはいずれも作物の抵抗力が落ちているサインであり、うどんこ病菌にとっては格好の侵入口となります。


    うどんこ病を防ぐ3つの実践ポイント

    ①環境を整える:剪定・日照・風通し

    うどんこ病は、「湿度が低く、風通しが悪く、日陰になりやすい環境」で特に発生しやすくなります。つまり、予防の第一歩は“環境の見直し”にあります。たとえばハウス内では、密植や換気不足によって空気が滞留し、病原菌にとって快適な空間を生んでしまいます。そこで重要なのが、次の3つの環境改善策です。

    • 剪定・整枝を行い、葉の重なりを減らす

    • 日当たりを確保できるよう、枝葉の密度を調整する

    • 朝夕の換気で湿気をこもらせない

    特に露地栽培では、風の通り道を作るために畝間に余裕を持たせることや、混み合った株の間引きが効果的です。ハウスでは、夜間や曇天時の結露防止のため、サイド換気や天窓を活用し、常に空気が巡る状態を保つよう心がけましょう。

    ②農薬を正しく使う:葉の表裏+FRACコード

    うどんこ病に対する農薬散布は、発病前の予防的な処理が基本です。発病してからでは、すでに菌糸が広がっていることが多く、防除効果が下がってしまいます。重要なポイントは以下のとおりです。

    • 葉の表と裏、両面にしっかり薬剤をかける

    • 散布量を守り、まんべんなく丁寧に処理する

    • 使用する農薬の系統(作用機構)を意識する

    同じ系統(作用機構)の農薬を連続使用すると、病原菌が薬剤耐性を獲得するリスクがあります。これを防ぐために、「FRACコード」を確認し、異なる系統の農薬をローテーションで使うのが有効です。

    農薬を使っていると、「前に効いた薬なのに、今回は効きが悪い気がする…」そんな経験はありませんか?実はそれ、病原菌が薬に慣れてしまっている(=耐性がついている)可能性があるのです。

    これは、風邪薬をずっと同じものばかり飲んでいると、効きにくくなるのと同じような現象です。このような“効かなくなるリスク”を防ぐために、農薬は「同じタイプを続けて使わないこと」が大原則です。ここで役立つのが、「FRACコード」という仕組みです。

     

    FRACコードってなに?

    FRACコード(Fungicide Resistance Action Committee code)は、その農薬がどんな仕組み(作用機構)で病原菌に効くかを示した分類番号です。

    お店で売っている農薬のラベルに「FRACコード:11」や「FRAC:3」などと書かれていることがありますが、これはまさにその農薬が「どのグループに属しているか」を表しています。つまり…

    • FRACコードが同じ薬は、同じ仕組みで効く=連続使用はNG

    • FRACコードが違う薬は、違う仕組みで効く=交互に使えばOK

    という使い分けの目安になるのです。

     

    使い方のイメージ

    たとえば…

    • 1回目にFRAC【11】(アゾキシストロビン)を使ったら

    • 2回目はFRAC【3】(テブコナゾール)など、違う番号の農薬に切り替える

    これが「ローテーション防除」と呼ばれる、病気を賢く防ぐテクニックです。連続で同じ番号を使わないようにするだけで、耐性菌のリスクを大きく減らすことができます。

     

    よく使われるFRACコードと特徴(家庭菜園・露地栽培向け)

    FRACコード

    作用機構の概要

    主な薬剤の種類・例

    特徴

    M群(M1, M3, M5)

    多作用点型(接触型・古典的)

    ボルドー液、マンゼブ、石灰硫黄合剤など

    耐性が出にくい。葉の表面にとどまり予防中心。

    3

    ステロール生合成阻害(DMI)

    テブコナゾール、ミクロブタニルなど

    広く効くが連用注意。作用点が一つで耐性化しやすい。

    7

    コハク酸脱水素酵素阻害(SDHI)

    フルキサピロキサド、ボスカリドなど

    予防と治療に有効。耐性リスクが高いグループ。

    11

    ストロビルリン系(QoI)

    アゾキシストロビン、クレソキシムメチルなど

    非常に広く使われているが、耐性化しやすい。予防中心。

    33

    有機リン・リン酸塩系

    ホスエチルアルミニウム(例:ホスホナト)

    吸収移行型。病気予防と植物の体力サポートの両面あり。

    40

    アミノ酸代謝阻害(新規機構)

    キノキサフェンなど

    新しいタイプで治療効果もあり。交互使用向き

    U群(U1, U6など)

    その他・分類不能

    バチルス菌由来の生物農薬など

    抵抗性リスクが低く、有機・環境配慮型の栽培でも使用可。


    🧾 FRACコードの確認方法
    • 農薬ラベルや製品説明書に「FRACコード:○○」と書いてあることが多いです。
    • 日本では「作用機作分類」「作用性コード」などと表記されている場合もあります。


    ③初期症状を見逃さない

    うどんこ病は、早期発見・早期対処が何よりも重要です。


    初期症状としてよく見られるのは、

    • 葉や茎の表面に小さな白い斑点がぽつぽつと現れる

    • 指でこすると粉のように落ちる

    • 主に葉裏や下葉に最初に現れる傾向がある

    この段階で対応すれば、被害の広がりを最小限に食い止められます。見回りの際は、葉の裏側や茂みの内側など、普段見逃しがちな場所を丁寧にチェックしましょう。初期に見つけたら、速やかに

    • 感染葉を除去し、畑の外で廃棄する

    • 残った株に農薬をまんべんなく散布する

    • 周囲に感染が拡大していないか確認する


    もう出さないために、今できること

    再発ゼロは「気づきと管理」の積み重ね

    うどんこ病を「今年こそ出さない」と誓っても、いつの間にかまた発生してしまう。そんな経験をお持ちの方も多いと思います。しかし、うどんこ病の再発は決して「運」ではありません。日々の“気づき”と“管理の積み重ね”こそが、再発ゼロのカギです。具体的には、以下の3つを意識するだけでも、発病リスクは大きく下がります。

    • 日々の見回りで異常を早期に察知する

    • 病気が出た葉は即座に取り除く

    • 株が弱る前に肥料・水・環境を調整する

    加えて、「うどんこ病がよく出る場所」「よく出るタイミング(例:5月下旬〜6月)」など、自分の圃場の“傾向”を記録しておくことも大切です。過去の発生履歴を見返せば、次回の予防が一歩先手で打てるようになります。


    次作に向けて「今こそ」見直すタイミング

    うどんこ病は、作付け前〜栽培初期の「準備」で大きく差が出る病気です。次作のうどんこ病発生を防ぐには、栽培に入る前に以下の点を見直しておきましょう。

    • 前作の残渣を完全に除去し、圃場をクリーンに保つ

    • 植え付け間隔を見直して風通しを確保する

    • 抵抗性品種の導入を検討する

    • 使用予定の農薬を“RACコード”で分類・計画する

    JAグループでも「次作に向けた事前準備が発病リスクを下げる」と繰り返し注意喚起されています。特に「前年の病葉を畑に残さないこと」「圃場周辺の雑草除去」は、最も基本かつ効果的な予防策です。また、農薬を計画的に使用することで、いざという時も慌てず対応できる備えになります。防除暦の見直しと、RACコードの把握を今のうちに済ませておきましょう。


    健全な成長を支えるバイオスティミュラントという選択肢

    ここまで、農薬による予防・防除を中心とした病害対策を紹介してきましたが、実はそれとは異なるアプローチとして、近年注目されているのが「バイオスティミュラント」の活用です。バイオスティミュラントとは、植物自身の生理機能や自然な回復力を高めることを目的とした農業資材の総称で、農薬や肥料とは異なるカテゴリーに位置づけられています。

    より専門的に言えば、アミノ酸・海藻抽出物・微生物代謝物などを含み、植物のストレス耐性や養分吸収能力、根の発達などをサポートするものです。これらは病原菌を直接攻撃するのではなく、植物が「病気にかかりにくい体づくり」をするための土台を整える資材と考えられています。

    たとえば、高温や乾燥、肥料ストレス、病気による一時的な草勢の低下などに対して、植物の自己回復力を後押しするのが、バイオスティミュラントの役割です。

    とはいえ、「バイオスティミュラント」と聞くと、家庭菜園ユーザーの方にはまだ馴染みがないかもしれません。しかし実際には、“薬に頼る前に植物を丈夫にする”という考え方は、限られた環境・資材で栽培する家庭菜園にこそフィットするアプローチとも言えます。

    「Tecamin Max(テカミンマックス)」は、アミノ酸を主成分とし、作物の体力維持・回復力のサポートに優れた製品です。病気を「防ぐ」のではなく、かかりにくい状態を保つためのサポート資材として、農薬との併用も可能です。

     

    まとめ

    うどんこ病は、毎年発生しやすく、完治が難しい病害のひとつですが、発生のメカニズムと対策のポイントを押さえることで、確実にリスクを減らすことができます。

    • 原因は菌の“残りやすさ”と“見えにくさ”

    • 乾燥した通気不良の環境で発生しやすい

    • 弱った株が侵されやすく、早期対応が重要

    • 環境改善・薬剤の正しい使用・初期発見がカギ

    今すぐできる対策から、次作に向けた準備まで、一歩ずつ着実に積み重ねることが、うどんこ病に負けない栽培への近道です。

    関連コラム

    関連商品

    お問い合わせ

    AgriTecno-Japanロゴ

    味の素グループアミノ酸肥料オンライン販売

    お問い合わせフォームへ
    公式YouTubeバナー 公式YouTubeバナー

    Tecamin Max (テカミンマックス)

    容量
    数量