この記事では、味の素ヘルシーサプライ株式会社がアグリテクノ社とのパートナーシップの基で提供しているバイオスティミュラント製品「テカミンフラワー」について、対話形式でやさしく解説します。
2回目となる今回は、味の素・アグリテクノ社のテカミンフラワーを適切に施用いただくため、植物の開花プロセスについて解説します。ぜひお気軽にお読みください。
目次
【登場人物】
■池田亜美(あみちゃん)
農家を営む親戚がいることから、農業に興味を持ち始めた小学6年生の女の子。研究熱心で親戚からいろいろ教わっている。
■アグリ先生
あみちゃんの親戚で農業を営んでいる。農業資材にも詳しく、あみちゃんからは先生と呼ばれ慕われている。
1.花芽充実の重要性
アグリ先生
ー 前回は、テカミンフラワーというバイオスティミュラントについて説明したけど、どんなものか分かったかな?
あみちゃん
ー はい、テカミンフラワーは花が咲くプロセスをサポートするバイオスティミュラントなんですよね。
アグリ先生
ー そのとおり!それじゃあ、花が咲くのを助けると、どんな良いことがあるのかな?
あみちゃん
ー えーっと、花がたくさん咲くと、キュウリやトマトみたいな実がたくさんなるんですよね。
アグリ先生
ー そうそう。トウモロコシやダイズ、イネもそうだね。「花芽」と呼ばれる花のもとが多いと果実の数も増えて、最終的な収量も増えることになるんだ。

それに、花芽は収量だけじゃなくて、品質にも関わってくる。受粉がうまくいって花芽が健康に育つと、果実の品質も上がるよ。
もちろん、収量や品質は、その植物の品種特性に左右されるし、樹の状態や環境条件からも影響を受ける。だからこそ、まずは花芽が充実していることが重要なんだ。

あみちゃん
ー 開花プロセスは、果実の収穫のためにとても大事な時期ということですね。
アグリ先生
ー そうなんだよ。この開花プロセスは、5つの段階に分かれているんだ。花成誘導期→花芽分化期→開花期→受粉・受精期→結実期の順に進んでいくよ。

あみちゃん
ー 難しい名前がいっぱい出てきた!
アグリ先生
ー そうだね。でも1つずつ説明していくから大丈夫だよ。それぞれの時期にどんなことが起こるのか、またその時期に気をつけるポイントなどを話していくね。
2.開花プロセスと課題
1)花成誘導期
アグリ先生
ー はじめは、花成(かせい)誘導期。花成とは花芽形成のことなんだ。最初、芽は花になるか葉になるか決まっていないんだけど、いろんな要因の影響を受けて育ちながら、花か葉のどちらになるかを決める。この段階を花成誘導期というよ。

あみちゃん
ー 葉っぱも花も、もともとは同じものなんですね。一度決めたら、もう変えられないの?
アグリ先生
ー それがそうでもなくて、ある時点までは成長先を変えられるんだ。だから、花を選んでも葉に変わることもあるよ。これにはいろんな要因があるんだ。例えば、季節によって気温が違うし、昼の長さも変わるよね。そういった環境条件や植物ホルモン、栄養状態、糖分の量などに影響を受けるんだ。
あみちゃん
ー 植物も季節の変化が分かるんですね。
アグリ先生
ー そういうことだね。葉は、日の長さを感じ取ってフロリゲンという物質を作るんだ。これを、師管という管で茎の先端まで送るよ。
師部は植物の維管束系の一部で、光合成産物を植物体内で輸送したり、様々な信号を伝える重要な役割を果たしているんだ。フロリゲンはこの師部の中にある師管と呼ばれる細長い細胞を通って移動するんだよ。このフロリゲンが、花成を誘導する主な植物ホルモンなんだ。植物が開花へ移行する信号を伝える役割ということだね。つまり、植物の成長を栄養成長から生殖成長へとシフトさせるんだよ。こういう役割だから、フロリゲンは植物ホルモンの一種として花成誘導に大きく関わっているということになるんだ。

あみちゃん
ー 葉っぱで作られたホルモンが、茎の先まで届けられるんですね。花成誘導というのは、いつ始まるんですか?
アグリ先生
ー 花成誘導は植物がある程度成長した後に始まるんだけど、その時期は植物によって大きく異なるんだ。一般的には、葉が光合成を行うのに十分な大きさになって、根が発達して養分の吸収力が高まった段階と考えられているよ。

あみちゃん
ー 葉っぱや根っこから十分栄養を取り入れられるようになったら始まる感じなんですね。
アグリ先生
ー 例えばトマトの場合、種まきしてから約30日後。キュウリは発芽してから約2〜3週間後。

イネは移植してから約30〜40日後、ダイズは発芽してから約3〜4週間後。

そして果物のブドウは実がなる前年の7月下旬〜9月上旬、ミカンなどの柑橘類は実がなる前年の秋、9月〜11月頃だよ。

あみちゃん
ー 果物は、前の年から花成誘導が始まっているんですね。
アグリ先生
ー そうだね。ブドウや柑橘類は花成誘導から実がなるまで1年以上かかるんだ。つまり、実がなっている時、もうすでに来年分の花成誘導が始まっている。
そこで発生するのが隔年結果という課題だよ。これは、豊作の年と不作の年が交互に繰り返される現象のことを言うんだ。果樹栽培では特によく見られる一般的な問題で、農家さんにとっては安定した収穫を難しくする大きな課題なんだよ。

あみちゃん
ー どうして豊作と不作が交互にくるんですか?
アグリ先生
ー それは、エネルギー資源の配分が関係しているんだ。さっきも言ったように、今年の実がなっている時に、翌年の花成誘導が始まっている。ということは、同時に2つのプロセスにエネルギーを使わないといけないよね。

豊作の時は、より多くのエネルギーや糖を今年の果実のために使ってしまうから、翌年の花芽に回す分が少なくなって、結果として翌年の花芽の数が減ってしまい、翌年は不作になりやすくなるんだ。こうして豊作と不作が交互に訪れるから『隔年結果』と呼ばれ、その発生原因としては植物が持つエネルギー配分の特性があるんだよ。
植物自体も、豊作の年はたくさんエネルギーを使ってしまっていて、あんまりエネルギーが残っていない。だから、できるだけ光合成をしてエネルギーや糖を蓄えたいんだ。そのためには多くの葉が必要になる。豊作の翌年に花芽が少なく葉が多いのは、植物が生きのびる戦略なんだよ。

あみちゃん
ー 植物も長生きできるように、エネルギーの使い方を調節してるんですね。
アグリ先生
ー 隔年結果で見られたように、花成誘導がうまくいかないと収量に大きく影響するんだ。だから、いかに適切な量の花芽をつけさせるかが大事なんだよ。
あみちゃん
ー 花成誘導がうまくいかないこともあるんですか?
アグリ先生
ー 花成誘導の失敗にはいろんな形があって、そもそも花成が起こらないケースもある。花成が起こっても、時期が大幅に遅れたり、正常に発達しなかったりすることもある。環境変化に反応して花成が不安定になり、花が枯れてしまうこともあるよ。
あみちゃん
ー 花成誘導がうまくいくように、気をつけることはありますか?
アグリ先生
ー できるだけ多くの花成誘導を行い、枯れさせずに成長させることが重要だね。そのためには光合成を行うのに十分な葉面積を確保し、根を発達させて養分吸収能力を上げることがポイントだよ。
植物ホルモンがしっかり作られるように、昼の長さや温度を植物に適した状態にコントロールすることも大事だね。それから、窒素が多くなり過ぎたり、ホウ素やマンガンが不足したりしないよう、栄養状態も整えることも大切だよ。

2)花芽分化期
アグリ先生
ー 次に説明するのは、花芽分化期。植物が栄養成長から生殖成長へと移行する最初の段階だよ。栄養成長とは、葉や茎など植物自身のための成長で、生殖成長とは、子孫を残すための成長なんだ。
この時期は、花芽が形成され、花の基本構造が作られる。細胞分裂が起こり、がく片、花弁、おしべ、めしべなど、花を構成する部分ができていくんだ。

あみちゃん
ー 花の部品が作られていくんですね!
アグリ先生
ー 花芽分化期は、花芽形成期→花器官発達→花芽成熟期というプロセスをたどるよ。


花芽成熟期には、花芽が膨らんで、色づきが始まる。花弁と呼ばれる花びらの細胞が急速に大きくなって開花に向けての準備が整うんだ。

あみちゃん
ー 花びらが色づいたら、ずいぶん花らしくなりますね。
アグリ先生
ー そうだね。さっき、花になることを選んでも途中で葉に変わることもあるって話をしたよね。でも花芽分化が始まってある時点を過ぎると、成長先を変えられなくなるんだ。このタイミングは植物の種類によって違うんだけど、多くの植物はがく片が形成され始める時期なんだよ。
このタイミングが特に重要なのは、がく片の形成が花の発達における一つの転換点だからなんだ。がく片が形成され始めると、植物はもう花を作ることに「コミット」したと言えるんだ。つまり、この時点を過ぎると、植物はもう花の発達を止めて葉に戻すことができなくなるんだよ。花の数は植物のエネルギーと資源の使い方に大きな影響を与えるから、収量の観点からも非常に重要なポイントなんだ。がく片って分かるかな?
あみちゃん
ー 花びらの外側にある葉っぱみたいなところですよね。
アグリ先生
ー 正解。こんなふうに花芽分化が進んで花から葉に戻れなくなることは、デメリットや不都合がいくつかあるんだ。
あみちゃん
ー それはどういうことですか?
アグリ先生
ー 簡単に言うと、花から葉に戻れるなら対処できたはずのことが、できなくなってしまう。
例えば花芽が形成されると、その部位では葉が作られなくなってしまうよね。そうすると植物全体の葉の面積もその分減るから、光合成の能力も下がることになる。つまり、植物全体の栄養成長が制限されるんだ。
ほかにも、花芽形成には多くのエネルギーと栄養が使われるから、他の部分に栄養が行きにくくなって、全体的な成長が遅れることもある。
花芽は環境ストレスに弱くなっていて、低温や乾燥などが起こるとダメージを受けてしまう。もう葉に戻れないから、新しい葉を作ってストレスに対処することも難しいんだ。
あみちゃん
ー 花はエネルギーをたくさん使ううえに、デリケートなんですね。
アグリ先生
ー そうだね。花芽形成がうまくいくかどうかは、日長と呼ばれる昼の長さ、温度、栄養状態などに左右されるんだよ。
例えば、低温が必要な植物では十分な低温期間がないと花芽は正常に発達しないし、それぞれの植物に適切な日長条件でないと花芽形成が遅れてしまう。栄養では、ホウ素やリン酸が不足すると花芽形成が不完全になってしまうね。そのほかにも、多過ぎる窒素肥料やホルモンバランスの崩れ、病原菌や害虫の影響などが、花芽形成がうまくいかない要因になるんだ。
あみちゃん
ー 花芽形成がうまくいかないと、どうなるんですか?
アグリ先生
ー 花芽がまったく形成されないこともあれば、花芽が形成されても葉に変わったり、正常に発達しなかったり、成長の途中で落ちてしまったりすることもあるよ。
それから、果樹の多くは、冬に入るとこの時期に休眠するんだ。代謝活動を低下させて、冬の寒さから花芽を保護するためだよ。
あみちゃん
ー 植物も寒い時はあんまり動かないんですね。
アグリ先生
ー うん。春になって気温が上がってくるとまた活動を始めるんだけど、これを休眠打破と言うんだよ。

あみちゃん
ー 動物の冬眠みたいですね。ところで、花芽分化期はどんなことに気をつけたらいいですか?
アグリ先生
ー できる限り多くの花芽形成を進めて花芽を成熟させ、枯れたり葉に戻ったりしないように成長させるのが大事だよ。そのためには、日長、温度、窒素量を適切にコントロールするのがポイントだね。

3)開花期
アグリ先生
ー 次は、開花期。開花期は、植物が花を咲かせる時期のことだよ。つぼみが形成され、細胞が増えて花びらが徐々に大きくなっていく。そして、つぼみが膨らみ色づいて、花びらの細胞が急激に大きくなるとともに、吸水量が増える。最後に、花びらの表側の成長が裏側より速くなって、花が開くんだ。

あみちゃん
ー とうとう花が咲くんですね!でもやっぱり、開花がうまくいかないこともあるんですよね。
アグリ先生
ー そうだね。開花が遅れたり、花が開かなかったり、つぼみのまま落ちてしまったりすることもあるよ。そのほかにも、花の色や形が普通と違う、早くしおれる、おしべやめしべに異常があるなど、開花期に起こる不具合はいろいろあるんだ。
あみちゃん
ー せっかくここまで成長したのに、花が咲かなかったらがっかりしますね。どういう原因があるんですか?
アグリ先生
ー 開花がうまくいかない原因には、いろんなことが考えられる。環境ストレス、栄養状態、ホルモンバランス、日長条件、病害虫、遺伝的要因などがあるね。こういった要因を総合的に管理して、開花がうまくいくようにするんだ。
あみちゃん
ー 気をつけないといけないことがたくさんありますね!
アグリ先生
ー そうだね。開花の成功は、果実の収量や品質の向上につながるからね。具体的には、暑すぎたり寒すぎたりを避けて、適度な水分管理を行うなどの環境ストレス対策が必要だよ。栄養状態では、窒素が多くなりすぎないよう、またホウ素やマンガンの不足が起こらないように、肥料をバランスよく与えることが大事。ホルモンバランスにおいては、ジベレリンが過剰になって開花を抑制しないよう、また、アブシシン酸が花芽の発達を抑制しないように整えることが大切だね。ほかにも、病気や害虫を予防したり、その植物に適した日長条件をコントロールしたりしないといけないね。

4)受粉・受精期
アグリ先生
ー 次は、受粉・受精期。あみちゃん、受粉は知ってるかな?
あみちゃん
ー はい。おしべの花粉がめしべの先に付くことですよね。
アグリ先生
ー 正解。ミツバチなどの昆虫や風によって花粉が運ばれる場合や、風による振動で花粉が落ちて受粉する場合もあるんだ。同じ花や同じ株から受粉する場合を自己受粉、異なる株の花から受粉する場合を他家受粉と言うよ。
あみちゃん
ー 受粉はどんな仕組みになっているんですか?
アグリ先生
ー 花粉がめしべの先に付くと、糖や水分を吸収して発芽するんだ。発芽した花粉から管が伸びるんだけど、これを花粉管と言って、めしべの中心にある胚珠(はいしゅ)という部分まで到達するよ。

あみちゃん
ー 管が伸びるんですか。
アグリ先生
ー 花粉管は、胚珠の中にある胚嚢(はいのう)まで到達し、そこに2つの精細胞を届けるんだ。そこで、受精が行われるよ。
被子植物のように、胚珠が子房(しぼう)に包まれている植物の場合、2つの精細胞は、それぞれ異なる細胞と受精するんだ。1つは卵細胞と受精して受精卵を形成し、胚に成長する。もう1つは中央細胞と受精して、胚乳を形成する。胚乳は胚の栄養源となるよ。このように、花粉管は精細胞を胚珠内の特定の部位で受精させる役割を持っているんだよ。
あみちゃん
ー 2つあるうちの1つが栄養になるんですね。

アグリ先生
ー ところで、果実は種が多いほど品質が良いと言われているのは知ってるかな?
あみちゃん
ー 知らなかったです。どういうことですか?
アグリ先生
ー 種には、果実の成長を促すホルモンを出したり、果実に栄養を引き込んだりする力があるんだ。だから種が多いほどその能力も高くなって、果実は大きく成長し糖度や風味も増すんだよ。同じ理由で、種が多ければ果実内のホルモンや栄養の分布が均一になりやすいから、果実の形やサイズがそろって見た目の品質も上がるんだ。
あみちゃん
ー うまくできてるんですね。
アグリ先生
ー 種が多い植物では、1つの花に多くの胚珠があるんだ。それぞれの胚珠に1つずつ卵細胞があって、それぞれ受精するよ。重要なのは、1つの胚珠が1本の花粉管のみを受け入れる「1対1 誘引」が正確にコントロールされていることなんだ。
あみちゃん
ー 1対1だと、花粉が無駄になりませんね。
アグリ先生
ー そうだね。でも、受粉や受精に関しても、やっぱり失敗することもある。風や雨のせいで、花粉がめしべの先につかないとそもそも受粉できないし、受粉しても花粉の質が低くて発芽しないこともある。花粉の発芽まではうまくいっても、温度や湿度の環境条件が悪く、花粉管がうまく伸びないと胚珠までたどりつけないよね。胚珠にたどりついても、ホルモンバランスの乱れで受精がうまくいかないこともある。
あみちゃん
ー この段階でもいろんな課題があるんですね。
アグリ先生
ー そうなんだよ。受粉に失敗すると、基本的に野菜や果物が実らないんだ。そうなると収穫量が大幅に下がってしまうよね。それから、部分的にしか受粉が成功しなかった場合、キュウリなんかだとねじれた形になってしまうんだよ。

あみちゃん
ー 見たことある!
アグリ先生
ー そういう野菜はお店に出せないことが多いし、糖度や風味が落ちることもあるんだ。だから、できる限り多くの花に適切に受粉させ、受精させることがポイントだね。

5)結実期
アグリ先生
ー いよいよ開花プロセスの最後、結実期の説明だよ。結実期とは、実がなって種ができる時期だね。胚と胚乳を含む胚珠は種子、つまり種に成長し、種子のまわりの子房は果実になるよ。

あみちゃん
ー めしべの一部だった子房が果実になるんですね。
アグリ先生
ー 発達した果実と種子は、だんだん成熟していくよ。トマトで見てみると、緑だった実が赤くなり、酸味が減って甘みが増し、果肉がやわらかくなっていくんだ。

あみちゃん
ー トマトだと想像しやすいですね。
アグリ先生
ー 種子は成熟すると、水分が減って代謝活動が低下するんだ。活動を休む休眠状態で、発芽に適した条件が整うまで待つよ。
あみちゃん
ー 結実期はどんなことに気をつけたらいいですか?
アグリ先生
ー 結実期の失敗もいろいろあって、せっかく実ができても途中で落ちてしまったり、果実が正常な形に成長しなかったりすることもあるよ。それから、栄養不足やホルモンバランスの乱れで果実が大きくならなかったり、栄養状態や環境条件が悪くて糖度や風味が低下したりすることもあるね。
結実期は、糖が葉から果実へ適切に送られることが重要なんだ。それを「糖の転流」と言うんだけど、果実の品質、特に糖度や果実の肥大には大切なことだよ。それから、果実と種子の発達のためには、栄養やホルモンバランス、環境を適切に整えることがポイントだね。

〜アグリ先生の補習講義〜 花芽分化に影響を与える重要な要素
花芽分化は、植物の開花プロセスにおいて重要なステップです。花芽分化をはじめ開花プロセスに影響を与える重要な要素を以下にまとめます。
重要な要素 | 植物が受ける影響 | |
---|---|---|
植物ホルモン | フロリゲン | 葉で合成され茎頂に到達し、花芽形成を促進 |
ジベレリン | 過剰供給は一部の植物で花芽形成を抑制 | |
オーキシン類 | バランスが崩れると、花芽形成・果実の発達を阻害 | |
環境要因 | 温度 | 特に、休眠打破と花芽分化の再開に大きな影響 |
光周期 | 日中の時間の長さを感知し、花芽分化を開始 | |
光質や光強度 | 不適切な場合、花成に必要な光条件が満たされない | |
水分 | 過剰な水分や乾燥は、花芽形成を阻害 | |
湿度 | 花粉の付着や花粉管の伸長を阻害、果実の腐敗 | |
風雨 | 受粉の成功率低下、果実の脱落 | |
ストレス条件 | 乾燥ストレスや塩ストレスで花成が抑制 | |
栄養素 | 窒素・リン・カリウム | 花芽分化をサポートするために、十分な量を必要とする |
リン | 細胞分裂に不可欠な要素 | |
カルシウム | 細胞分裂に重要な役割を果たす | |
ホウ素・リン酸 | 不足は花芽形成の不完全、受粉の失敗をまねく | |
窒素肥料 | 過剰になると花芽形成・花や果実の形成が抑制 | |
炭水化物 | 十分な糖分 | 花芽分化を促進、花の品質と数を向上 |
糖分の急激な減少 | プロセスが逆行し、花芽が葉芽に戻る可能性 | |
植物時計 | 概日リズムの乱れ | 適切な時期に花成誘導シグナルが伝達されない |
花粉要因 | 花粉の質 | 花粉が不稔の場合、受粉が成功しない |
花粉の量 | 適切な量でないと、受粉の失敗や花粉管の伸長を妨げる | |
受粉者の不足 | ミツバチや蝶の減少で、受粉が成功しにくくなる | |
T6P(トレハロース-6-リン酸) | FT遺伝子の発現制御 | T6Pレベルの上昇により、重要な花成遺伝子であるFT (フロリゲン)の発現を促進 |
SnRK1キナーゼの抑制 | エネルギー感知キナーゼであるSnRK1の活性を抑制 し、花成を促進する遺伝子の発現を増加させて花芽分化を促進 |
|
SPL遺伝子の制御 | SPL遺伝子を制御し、花芽分化のプロセスを促進 | |
糖シグナリングとの統合 | 糖の利用可能性と花成のタイミングを結びつける。糖の 蓄積を感知し、花芽分化を促進するシグナルを出す |
|
栄養状態と花成の統合 | 植物の栄養状態を反映し花成を促進するため、植物は 適切なタイミングで生殖成長へ移行できる |
|
環境シグナルとの統合 | 日長や温度などの環境シグナルと植物の内部栄養状態 を統合し、最適な花成タイミングを決定 |
|
病害虫の影響 | 病害 | 花芽・果実の発達の阻害、受粉の失敗、果実の品質低 下 |
害虫 | 花芽の脱落・葉芽に変化、受粉の失敗、果実の発達を 阻害 |
|
遺伝的要因 | 花成制御遺伝子 | 花成制御遺伝子の変異や過剰発現 |
遺伝的多様性の欠如 | 遺伝的に均一な集団では、花芽形成が不完全になるこ とがある |
|
突然変異 | 花芽形成・果実の発達を阻害 | |
エピジェネティックな制御の異常 | DNAのメチル化やヒストン修飾の異常により、花成関連遺伝子の発現が適切に制御されない |
3.まとめ
今回は、植物の開花プロセスを5つの時期に分けて解説しました。花成誘導期、花芽分化期、開花期、受粉・受精期、結実期において、植物はさまざまな要因から影響を受けながら変化していきます。
果実の品質を上げ、収量を増やすには、花芽を充実させ多くの花を受粉させることが重要です。テカミンフラワーは、花芽の充実や着果の向上をサポートします。
次回は、テカミンフラワーの機能と含有成分について詳しく解説します。ぜひご覧ください。
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