微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.3(全3回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Fertigrain Foliarにはどういった効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

当連載のVol.1ではファーティグレイン・フォリアーの特徴や利点についてvol.2ではファーティグレイン・フォリアーの成分がどのように作物の健康に貢献するかについて解説しました。

最終回となる今回は、ファーティグレイン・フォリアーの効果的な使用方法とその経済的な利点について、詳しく紹介します。

目次

    使用方法と最適化

    散布のタイミングや量など最適な使用方法

    [散布タイミング]

    ファーティグレイン・フォリアーは、農薬と一緒に混合して使用されることが一般的です。この場合の農薬とは、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤などを言います。また、散布には適切なタイミングがあります。具体的に、どのようなタイミングで散布するのか見ていきましょう。

    ファーティグレイン・フォリアーの散布は通常2回行われ、1回目の散布は6葉期に達するまでの成長段階に合わせて除草剤と混合して行われます。2回目の散布は通常、開花前、または1回目の散布から数週間後に行われます。植物が穂をつける前の成長段階、具体的には穂が形成され始める直前に散布することが理想です。これにより、植物が生育期間中に最適な栄養を受け取ることができ、健康的な成長が促進されます。」

    しかし、トウモロコシの場合は植物の背が高くなるため、開花前まで待って散布することは困難です。したがって、最初の散布から15日後または3週間後に再度散布されることが多くなっています。このようなタイミングでも十分な効果が期待できます。

    ファーティグレイン・フォリアーを試してみる

    [適切な散布量]

    ファーティグレイン・フォリアーの推奨散布量は、作物の種類、土壌の状態、および気象条件によって異なります。一般的に、1ヘクタールあたりの基本散布量は約1リットルですが、以下の要因に基づいて0.5リットルから2リットルの範囲で調整することが推奨されます。

    適切な施用量を決定する際には、いくつかの要素を考慮する必要があります。最初に考えるべきことは、作物の生育見込みです。作物が高い市場価値を持ち、収穫時の等級が非常に高いと予想される場合、1ヘクタールあたり2リットルまたは1.5リットルの散布を推奨しています。これは、より多くのコストをかけても投資に対するリターンが高いと期待できるためです。

    一方で、予想される市場価値が非常に低い場合、コスト削減を優先することが重要になります。その場合は散布しないよりは、最小限の施用量として1ヘクタールあたり0.5リットルを散布した方が良い結果が得られます。このようなアプローチにより、限られたリソースを最も効率的に活用し収益性を確保することができます。

    もちろん気温、湿度、土壌条件などの環境要因は、施用量を決定する際に考慮すべき点です。作物の生育条件が悪い場合、特に受粉前や受粉後に高温が予想される場合には、通常よりも投与量を増やすとよいでしょう。これはファーティグレイン・フォリアーが、ストレス条件下における植物の生存と成長をサポートする役割をもっているからです。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

    ファーティグレイン・フォリアーを使ってみる

    農薬や殺菌剤との併⽤に関するガイドライン

    [併用の利点]

    ファーティグレイン・フォリアーはバイオスティミュラントであるため、肥料や農薬の完全な代替品ではなく補完的な役割の製品です。除草剤や殺菌剤のように雑草や病害虫に直接働きかけるものではありません。したがって、ファーティグレイン・フォリアーは除草剤や殺菌剤と混合して使用するのが一般的です。

    この製品は、植物が環境ストレス、例えば乾燥や塩害、極端な気温変動などにより生じるストレスから回復しやすくするために設計されています。バイオスティミュラントは、植物の自然な防御機構を活性化し、根の成長を促進し、栄養吸収を助けることで、植物の全体的な健康と耐性を向上させます。これにより、病害虫や環境からのストレスに対する植物の抵抗力が強化されるのです。

    病害虫などの生物的なストレスに対しては農薬で対応し、高温などの環境による非生物的ストレスに対してはファーティグレイン・フォリアーでサポートします。バイオスティミュラントを併用することで、成長初期の栄養吸収が促進され、環境ストレスに対する耐性が強化されます。農薬とファーティグレイン・フォリアーの併用が相乗効果を生み、最終的な収量増加や品質の向上が期待できます。

    ファーティグレイン・フォリアーの散布を行った場合、次のような効果が期待できます。

    • 収量の増加
    • 不稔粒の減少
    • 粒の重量の増加
    • 穀物内のタンパク質含量の増加
    • より健康な植物の育成

    特に、稲のような作物では、倒伏の軽減や、より生産性の高い有効分げつの発生も期待されます。

    ファーティグレイン・フォリアーを散布すると、穀物の品質が常に向上することが注目されています。これは殺菌剤や殺虫剤ではないにもかかわらず、植物がより健康な状態を保つことができるためです。アミノガードを使用した場合と同様に、菌類病害が減少する効果も報告されています。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

    ファーティグレイン・フォリアーを併用してみる

    [使用上の注意]

    ファーティグレイン・フォリアーの施用量は、1ヘクタールあたり2リットルが一般的な上限とされていますが、それぞれの作物やその成長段階に応じて適切な量を選択することが重要です。

    例えば、小麦、稲、オーツ麦などの作物では、最初の散布は通常、分げつ期に行われます。これは、除草剤の散布と同時に行われることが多く、2回目の散布は止め葉が出現するタイミングで実施されるのが一般的です。これらの時期にファーティグレイン・フォリアーの散布を行うことで、作物の生育をサポートし、最終的な収量と品質の向上が期待できます。

    生産者は通常、農薬や殺菌剤の散布を行うタイミングを選択します。トウモロコシの場合、分げつではなく、4葉から6葉の間に散布されることが多くなっています。この時期には、除草剤と一緒に散布されるのが一般的です。その後、約2〜3週間後に通常の散布が行われ、この時期には進行状況に応じて殺菌剤や殺虫剤も散布されます。

    稲や小麦に関しては、葉が3枚になった時点で2回目の除草剤を散布しますが、そのタイミングで1回目の散布、開花前に2回目の散布をします。

    生産者の皆さんは、実際の条件や作物に合わせて資材の施用タイミングを選択する必要があります。例えばダイズでは3葉期と開花期、キャノーラでは6葉期以前と開花期、甜菜では6葉期と8葉期など、それぞれのタイミングに合わせて散布計画を立てる必要があります。

    ファーティグレイン・フォリアーを試してみる

    経済的観点

    それでは、ファーティグレイン・フォリアーの利用価値について、経済的観点からも見ていきましょう。

    [利益の最大化]

    ファーティグレイン・フォリアーを施用した場合、収量や品質はどのように変わるのでしょうか。

    スペイン南部のグラナダ大学で行われた試験によると、ファーティグレイン・フォリアーを施用することで、窒素利用効率の向上が確認されました。窒素利用効率(NUE)とは、利用可能な窒素の単位あたりのバイオマス生産量のことで、どれだけのバイオマスが生産されるかという指標です。つまり、土壌に存在する一定量の窒素が植物によって効率よく吸収されると、その結果としてより多くのバイオマスが生産されます。ここで言うバイオマスの増加とは、葉、根、花、そして穀物の増加を意味します。窒素の利用効率にはデンプンの生産も含まれます。この効率は主に、窒素の吸収効率(NUpE)とその利用効率、この2つの要素によって決まります。

    窒素吸収効率(NUpE)が高いほど、植物は土壌からより多くの窒素を吸収することができ、結果として植物内の窒素濃度が高くなります。第二の要素である吸収した窒素の効率的な利用は、植物体内での窒素の変換プロセスを指します。窒素が植物体内に取り込まれると、それは葉、根、花、穀物そしてデンプンの形成に利用されます。このように、畑作物に適切な量の窒素を供給する理由は、植物が吸収した窒素を100%活用するためです。

    グラナダ大学の結果では、ファーティグレイン・フォリアーを散布しない対照区と比較して、ファーティグレイン・フォリアーを散布した区では、窒素利用効率(NUE)が65%も向上しました。また、吸収した窒素の利用効率(NUpE)は19%向上し、全体的な窒素利用効率(NUtE)は39%向上しました。このような向上が見られる理由は、ファーティグレイン・フォリアーが光合成を向上させ、植物の水利用効率を高め、酵素活性を向上させたからです。

    また、アミノ酸とタンパク質の生産量も増加しています。これらは連動しており、アミノ酸の生産量が増えると、それに伴いタンパク質の生産量も増加します。アミノ酸の増加により酵素の保護がなされますが、酵素自体がタンパク質であるため植物における酵素の生産向上につながります。私たちが果物やトウモロコシその他の穀物を食べるとき、摂取しているのはタンパク質だけではないということです。

    ファーティグレイン・フォリアーをよく散布する作物のひとつである稲は、グリシンベタインを1ヘクタールあたり2キログラム使用すると、40%の稔実率が14%向上したという事例があります。穀物の収量が増加し、畑の粒数が増え、不稔粒の割合が減少するため、微量要素の供給は重要です。トウモロコシに関しても、亜鉛の供給により欠乏症状が見られなくなり、収量の増加が期待できます。

    Fertigrain Foliar(ファーティグレインフォリアー/ファーティグレインフォリア)

    ファーティグレイン・フォリアーを使ってみる

    [コスト削減]

    ファーティグレイン・フォリアーを散布することで、作物の主要栄養素である窒素酸化物やリン酸、カリウムの使用量を減らせるのでしょうか。これらの量を減らすことができれば、農業における資材コストを削減できる可能性があります。

    窒素が非常に少ない土壌では、利用可能な窒素量も限られており、植物の生育に必要な窒素量の50%しか利用できない場合があります。このような状況では、窒素の利用効率は自然と低下します。では、ファーティグレイン・フォリアーを散布した場合はどうでしょうか。上の図の右部分が示すように、窒素吸収効率が23%減少していることが観察されますが、植物体内での窒素の利用能力は、すでに22%増加しています。これは植物体内の窒素がより効率的に働き、結果として植物がより多くのバイオマスを生産するようになることを意味します。つまり、植物はより多くの葉、根、花を生産し、光合成やその他の生理活動を活発化させることができるのです。しかし、植物は十分な窒素を吸収していない状況です。

    さらに試験を進め、窒素酸化物、リン、カリウムの量を減らすことによって資材コストを削減できるのか、そして、窒素を50%削減した場合、植物が利用可能な土壌中の窒素量はどう変わるのかを検証してみました。結果として、25%や30%の削減であれば可能ですが、50%の大幅な削減は、植物に必要な窒素の半分しか供給できなくなるため、ファーティグレイン・フォリアーの散布を行うのは適切ではないかもしれません。

    ファーティグレイン・フォリアーでコスト削減してみる

    まとめ

    これまで全3回にわたり、穀物用のバイオスティミュラントであるファーティグレイン・フォリアーについてお伝えしてきました。

    Vol.1では、ファーティグレイン・フォリアーの特徴とその利点や必要性について説明しました。

    ファーティグレイン・フォリアーは稲、豆類、小麦などの穀類に特化したバイオスティミュラントで、アミノ酸と微量要素が配合されているのが特徴です。主要栄養素であるNPKについてはほとんどの生産者が与えていますが、微量要素については見過ごされがちであるため、これらの供給は重要です。気候変動や土壌の栄養不足、農業従事者の高齢化など、現代農業が直面する課題はさまざまあり、農作物の品質低下や収量の減少が懸念されています。ファーティグレイン・フォリアーを施用することで、農作物が環境から受けるストレスを軽減し、収量の増加や品質の向上が期待できます。

    Vol.2では、ファーティグレイン・フォリアーのさまざまな成分が作物の健康や収量にどのように貢献しているのか解説しました。

    ファーティグレイン・フォリアーに含まれるアミノ酸は5種類あり、なかでも重要なのはグルタミン酸とプロリンです。グルタミン酸は光合成に必要なクロロフィルの合成に使われます。プロリンは酵素の保護や修復機能を持ち、花粉の生存率を高めます。これらを供給することで、農作物の光合成や受粉のプロセスをサポートし、品質向上や収量増加に導きます。光合成や受粉は気温などの環境ストレスから影響を受けやすいため、グルタミン酸やプロリンを供給することでストレスを軽減し、気候変動に強い作物の生育に貢献します。また、微量要素の亜鉛、ホウ素、モリブデンは、受精プロセスにおいて不可欠で、収量や生産性の向上につながります。

    そして最終回となる本記事Vol.3では、ファーティグレイン・フォリアーの具体的な使用方法を紹介し、経済的な観点からの利用価値についても考察しました。

    ファーティグレイン・フォリアーは除草剤や殺菌剤との併用が一般的です。1回目は作物サイクルの初期に除草剤と混合して散布、2回目は開花前など、作物の種類によって適切な散布タイミングがあります。収穫物の市場価値に合わせて、1ヘクタールあたりの使用量を調整することで、より収益性を高められます。

    今回の連載では、穀物類に特化したバイオスティミュラントであるファーティグレイン・フォリアーについて詳しく紹介しました。ファーティグレイン・フォリアーは、アミノ酸でキレート化された微量要素を効率よく作物に供給し、農作物の品質向上や収量増加に効果を発揮します。微量要素は作物に不可欠でありながら、見過ごされることの多い栄養素です。ぜひファーティグレイン・フォリアーの施用を検討してみてください。

     【過去の記事はこちら↓】

    微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.1(全3回) (agritecno-japan.com)

    微量要素で作物を強化:ファーティグレイン・フォリアーの全貌 Vol.2(全3回) (agritecno-japan.com)

     

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