石灰窒素とは?効果・効能、正しい使い方を解説!

チュートリアル 更新日:

「石灰窒素はどんな効果が期待できる資材なのかな?」

「石灰窒素の正しい使い方を知りたい」

「石灰窒素を使うことによるリスクはあるの?」

このようなお悩みを抱えていませんか?石灰窒素は肥料としての利用だけでなく、農薬や土作りにも効果的な資材として注目されています。石灰窒素は新しい技術ではなく、100年以上使われてきた歴史があります。

大量の窒素施肥による環境問題が指摘される中で、石灰窒素は環境にやさしい資材としても評価されている資材です。

そこで本記事では、石灰窒素の「特徴」や「役割」について解説します。「農薬・肥料・土作り」として、どのように活用できるのか紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

また、近年注目を集めているバイオスティミュラントと併用して使うことで、肥効を高め品質を安定させたり、収量を増やしたりすることが期待されています。

 

【石灰窒素と相性の良いバイオスティミュラント】

目次

    石灰窒素とは?

    石灰窒素は「農薬・肥料・土作り」の3つの機能を併せ持った農業資材です。散布直後には農薬として防虫や除草効果があり、散布後3〜10日程度で窒素成分を持った肥料としての役割を果たしてくれます。また有機物の分解を促進して、稲わらや作物残渣を堆肥化する土作りの資材としても活用可能です。

    石灰窒素を利用することで、大量の施肥を行わなくても少しずつ作物に窒素を補給できます。そのため石灰窒素は作物の栽培に効果的なだけでなく、大量の窒素施肥による地下水汚染などの抑制につながる資材としても注目されています。

    石灰窒素の特徴

     

    石灰窒素とは「窒素・石灰・炭素」を原料とした資材です。主な成分は、カルシウムシアナミドで、その他酸化カルシウムなどが含まれてます。

    圃場に散布した直後はカルシウムシアナミドが農薬として働き、その後アンモニアに分解されて肥料成分として作物に吸収されます。また、石灰は土壌の酸性(pH)の矯正が可能です。

    石灰窒素がアンモニアに変わるまでの期間は、春と秋は7〜10日程度、夏は3〜5日程度です。ただしアンモニアへの分解が終わる前に播種や定植を行うと、枯死などの障害が発生する可能性があります。

    散布直後の農薬と分解後の肥料・土作りの成分は、以下の表をご確認ください。

    石灰窒素は散布直後には農薬として土壌中で分解された後には、肥料・土作りとしての効果があります。そのため、1つの資材で3つの機能を合わせ持っていると言われています。

    石灰窒素の役割

    石灰窒素は「農薬・肥料・土作り」の3つの機能を持った資材です。こちらでは、機能別に効果・効能について紹介します。

    農薬としての効果・効能

    石灰窒素は、農薬としての殺虫や除草効果があります。殺虫や除草効果は、石灰窒素が水分と反応して分離するシアナミドによる影響です。

    シアナミドの殺虫効果は、畑ではセンチュウ、水稲ではジャンボタニシやユリミミズに効果があると言われています。いずれも作付前に畑では50〜100kg/10a、水稲では20〜30kg/10a程度を全面散布して利用します。

    また、シアナミドは植物の根から吸収されることで、雑草の抑制に効果的です。とくに、コナギやイヌビエなどの1年生の雑草の防除に効果があります。

    肥料としての効果・効能

    石灰窒素は肥料効果が持続する期間が長く、作物の窒素不足を抑えられます。石灰窒素が分解されてできたアンモニアは、土に吸着しやすく硝酸に変化しにくい特徴があるためです。アンモニアが土壌中に安定して存在でき、長期間に渡って作物に少しずつ吸収されていきます。

    石灰窒素を他の肥料と併用する場合には、アンモニアや水溶性りん酸を含んだ資材は避けましょう。石灰窒素は石灰を豊富に含んでいるため、アンモニア性の窒素肥料と混ぜると、アンモニアが気化してしまいます。また水溶性りん酸を含んだ肥料と併用する場合は、開花や結実を促進するりん酸の効果が薄れます。

    土壌改良剤としての効果・効能

    石灰窒素を利用することで、稲わらや収穫後残渣などの有機物を活用した効率的な土作りができます。石灰窒素には、有機物の腐熟を促進して堆肥する効果があるためです。

    例えば、水稲では稲刈後にコンバインで裁断された稲わらの発酵を促進できます。稲わらは、水が加わっただけでは腐りにくい特徴があります。有機物の腐熟には窒素分が一定量必要ですが、稲わらには十分な量が含まれていないためです。そこで稲わらに石灰窒素を加えれば、必要な窒素分が補給され腐熟の速度が上がります。

    また、石灰窒素に含まれる石灰は、土壌の酸性度を矯正する効果がある点でも腐熟の促進に効果的です。有機物は腐熟が始まると、有機酸が生じて酸性になります。有機物を腐熟させる微生物は微酸性~中性が適しているため、石灰窒素で土壌の酸性度を矯正することで、より有機物が腐熟しやすい環境が作られます。

    稲わらをすき込む場合は、石灰窒素を10a当たり10〜20kg添加すると良いでしょう。石灰窒素を使った堆肥づくりは、畑の収穫残渣や緑肥でも効果的です。

    石灰窒素のメリット・デメリット

    石灰窒素は、農薬や肥料などの効果が期待できる一方で、使用方法を誤ると作物が枯れるリスクがあります。石灰窒素のメリット・デメリットについて理解しておきましょう。

    [メリット] 

    石灰窒素の大きなメリットは、1つの資材で「農薬・肥料・土作り」の3つの効果が期待できることです。石灰窒素だけでは作物に必要な農薬や肥料をすべて賄えるわけではありませんが、効率的な作物栽培ができる資材と言えます。

    また、石灰窒素の利用は窒素成分を含む肥料による環境汚染の抑制に効果的です。大量の窒素施肥は、地下水の硝酸汚染や亜酸化窒素が大量発生するなど深刻な環境問題の要因です。石灰窒素は、大量の窒素施肥が必要なく栽培が行える資材として注目されています。

    独立行政法人野菜茶業研究所では、茶園において石灰窒素の使用による窒素施肥の抑制効果を実験によって明らかにしています。実験によれば「石灰窒素40kg」と「慣行肥料110kg」を使った茶畑で、いずれも土壌中に無機態窒素が同程度残存していることが確認されました。

    石灰窒素の利用は、慣行栽培による窒素肥料の利用抑制につながり、窒素施肥による環境汚染を食い止める可能性が示されています。

    [デメリット]

    石灰窒素のデメリットは、農薬成分が分解されるまで作付できないことです。カルシウムシアナミドはアンモニアに分解される前に播種や定植を行うと、土壌の水分と反応してシアナミドを分離します。シアナミドは殺虫や防草効果を持っており、作物を枯らしてしまいます。

    カルシウムシアナミドがアンモニアに分解されるには、春・秋では7〜10日程度、夏は3〜5日程度必要です。カルシウムシアナミドの分解までの期間を考慮して、石灰窒素の散布計画を立てましょう。

    石灰窒素の使い方

    石灰窒素は誤った使用をすると、作物が枯れる原因になります。石灰窒素の正しい使い方を理解しておきましょう。

    使用時期

    石灰窒素を利用する際は、カルシウムシアナミドがアンモニアに分解されて、農薬効果が切れてから作付けします。農薬効果がある間に作付けをすると、シアナミドが根から吸収されてしまい、作物が枯れてしまいます。

    カルシウムシアナミドがアンモニアに分解されるには、春・秋では7〜10日程度、夏は3〜5日程度の時間を置くことが必要です。アンモニアに分解される時間を考慮して、作付計画を立てましょう。

    散布方法

    石灰窒素の製品は「粉状」と「粒状」の2つのタイプがあります。畑では50〜100kg/10a、水稲では20〜30kg/10a程度を全面散布します。田んぼで稲わらをすき込む場合は、石灰窒素を10〜20kg/10aが目安です。

    散布の際には、マスクや長袖長ズボンの着用が基本です。石灰は口から吸い込むと肺に悪影響があり、肌に付着するとかぶれの原因になります。作業後には洗眼やうがいを行い、被服は他の洗濯物とは別にして洗いましょう。

    石灰窒素は用法を守って使用すれば、除草や施肥を1度に行える資材です。しかし、石灰窒素だけで作物に必要な農薬や肥料の効果を期待できるわけではありません。肥料については、関連記事の「肥料の種類一覧|原料や成分、効果、使い方、形状による種類について」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

    まとめ

    石灰窒素は「農薬・肥料・土作り」の3つの使用用途のある資材です。農薬としては殺虫や除草効果が期待でき、肥料としては窒素分の補給として利用できます。また、収穫後には田んぼの稲わらの分解や畑の残渣や緑肥による堆肥づくりとしての活用も可能です。

    石灰窒素は散布直後に農薬としての効果を発揮し、散布後3〜10日程度でアンモニアに分解された後に肥料として効果が現れます。ただし分解前に作付を行うと、農薬の効果によって作物が枯れるので注意が必要です。

    石灰窒素の活用は、大量の窒素施肥による地下水汚染などの抑制につながります。石灰窒素に関心のある方は、本記事を参考にしてぜひ活用してみてください。

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