アグリテクノの根幹:自然模倣、植物本来の力を引き出すバイオスティミュラント革命 Vol.1(全4回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】アグリテクノの製品はなぜ効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

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目次

    アグリテクノ社のバイオスティミュラントと開発思想

    自然界の植物は、気候による高温や乾燥、塩害などからストレスを受けた際、自らその問題を乗り越えようとする力を持っています。アグリテクノ社では、この自然界の現象に着目しそれを模倣することで、植物にもともと備わっている力を引き出すバイオスティミュラントを開発しています。

    バイオスティミュラントとは、植物の成長や発育を助ける農業資材です。植物に与えることで植物の栄養吸収能力を高めたり、ストレス耐性を向上させたりするなど、植物本来の力を引き出す働きを持っています。植物にバイオスティミュラントを与えることで植物が健康に育ち、高品質な作物を多く収穫することが期待できるため、バイオスティミュラントは今日の農業において重要な存在となっています。

    この記事では、アグリテクノ社のバイオスティミュラントが自然界のどのようなプロセスに基づいて開発されているのかを紹介します。植物に起きている現象とその製品開発への応用について、詳しく見ていきましょう。

    自然界の現象の模倣と農業への応用

    [自然の観察]

    植物は日々、極端な高温など外からの刺激にさらされています。その際、植物はこの高温を感じ取っていろいろなシグナルを送ります。そしてそれらのシグナルは植物の遺伝子を活性化し、特定の酵素を生み出します。この酵素が外部の刺激に反応して活性化する生理活性物質を作り出します。

    例えば、高温にさらされる場合を考えてみます。このとき生理活性物質は、種子や茎、塊茎、根のなかにある細胞など、植物の器官に蓄えられています。つまりこれらの器官には、植物が特定の問題を乗り越えるのに役立つ生理活性物質がふんだんに含まれているのです。

    したがって、高温や他の問題に対する防御策として植物の代謝を向上させたいのであれば、植物の器官から取り出せるこれらの生理活性物質を活用すればよいということになります。

    [模倣の科学]

    植物が高温によるストレスにさらされると、植物に含まれる酵素の働きが熱によって低下してしまいます。その一方で、高温であることを感知した植物はヒートショックタンパク質を作り出して酵素を修復し、正常な生理機能を回復させます。このように、自然界の植物には外部からのストレスに対処するメカニズムが備わっているのです。

    植物が高温ストレスにさらされると、ヒートショックタンパク質の合成が開始されます。この過程は、細胞内での熱感知メカニズムによって制御されており、オリゴ糖などのシグナル分子が重要な役割を果たしています。

    これらのシグナル分子は、特定のストレス応答経路を活性化することで、ヒートショックタンパク質の合成を促進します。オリゴ糖は、細胞壁の断片に含まれています。したがって、植物の細胞壁を壊してその断片を植物に与えると、植物がヒートショックタンパク質を作るきっかけとなるのです。

    アグリテクノ社では、植物が外部からのストレスに対抗するために特定の遺伝子を活性化し、防御酵素や抗ストレスタンパク質の生成を促すプロセス、すなわち植物自体が外部からのストレスに対する防御システムを用いて自力で適応しようとするプロセスに注目しました。植物が外部からのストレスに反応し作り出す生理活性物質を主原料として、バイオスティミュラントを開発しています。

    これらの製品は、特定の遺伝子をターゲットとして機能し、例えば、抗酸化酵素の活性を高めたり、シグナル伝達を促進することで、植物がストレスにより効果的に対処できるようにサポートします。すなわち植物が既に持っている防御機構を活性化させることで、ストレスへの自然な対応を強化しているのです

    こうして作られたバイオスティミュラントを植物に与えることで、植物の遺伝子を活性化させ、植物の持つ防御システムをより有効に働かせることができるのです。

    バイオスティミュラントが農業において重要な役割を果たす理由

    [バイオスティミュラントの役割とは?]

    現代の農業において、バイオスティミュラントは効率性や持続可能性をより高めるためのツールと位置付けられています。バイオスティミュラントの活用は、生産性と環境保全の両方に配慮した農業に取り組む上で不可欠といえます。

    特にバイオスティミュラントは「ストレス耐性の向上」「生育促進」「収量増加」という3点に対し、大きな役割を果たします。

    植物が環境からのストレスを受けることは避けられないものですが、バイオスティミュラントを使用することで植物の免疫系が活性化し、病原体や外部からのストレスに対する防御システムを強化することができます。その結果、植物は病気や気候変動、栄養不足などさまざまなストレスによる負荷を減らし、より健康的に成長することができます。

    また、バイオスティミュラントは光合成効率や水分利用効率も向上させる働きを持つため、植物の生育にも貢献します。さらに、植物の根の成長を促進することで土壌中の栄養素をより効率的に吸収し、株全体の成長を促進するバイオスティミュラントもあります。

    このように、バイオスティミュラントを利用することでストレスに対する耐性が向上し、生育が促進された結果、収量の増加が期待できます。加えて花芽形成や果実の発育も促すため、収量だけでなく作物の品質も向上させることにつながるのです。これらのポジティブな効果は、バイオスティミュラントが植物の生理学的プロセスに負荷を与えず、かつ効果的に機能することで実現されています。

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    [持続可能な農業への貢献]

    バイオスティミュラントを活用すれば、農薬や化学肥料への依存を減らし、環境に優しい農業の実践を促進することにつながります。例えば、バイオスティミュラントの利用は植物の免疫系を活性化させるため、病原体や害虫への自然な抵抗力を高めることになり、植物の自然な防御機構を強化するのです。

    また、バイオスティミュラントは土壌に含まれる微生物の活性化を促すため、土壌の健康維持もサポートします。健全な土壌、健全な生態系は植物の栄養素吸収を促進し、害虫や病原体とのバランスも保つため、結果として農薬や化学肥料の使用削減、ひいては持続可能な農業に貢献します。

    バイオスティミュラントが植物の成長や耐性にどのように作用するのか

    [バイオスティミュラントの基本]

    バイオスティミュラントとは、植物の成長や発育を自然に促進する非栄養素化合物や微生物製剤の総称で、植物の栄養吸収能力を高めたり、ストレス耐性を向上させたりする効果があります。これらは植物の健康をサポートし、最終的に収量や品質の向上に貢献することを目的としています。

    バイオスティミュラントは、非生物的ストレスを緩和することで気候や土壌のコンディションに起因する植物のダメージを軽減し、植物の健全な生育をサポートします。

    バイオスティミュラントは、病気や害虫といった「生物的ストレス」から植物を守る農薬などとは異なり、高温や低温、干害などの「非生物的ストレス」を軽減させるはたらきを持ちます。

    作物は種の時点で遺伝的に収穫時の最大収穫量が決まっていますが、生育の過程で受ける「生物的ストレス」や「非生物的ストレス」によってその収量が次第に減少していきます。バイオスティミュラントは、そのうちの「非生物的ストレス」による収量減少を軽減する役割を担っているのです。

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    [作用機序]

    過度な高温や熱ストレスは、植物にさまざまな影響を及ぼします。例えば、植物の酵素の活動は低下し、そのことが光合成率の低下、糖分・エネルギーの減少へとつながります。細胞内で活性酸素が多く発生するといろいろな物質が酸化し、細胞の劣化や老化、さらにネクローシスと呼ばれる細胞死の可能性も出てきます。細胞内の水分が奪われることも細胞死や枯死、落花、花粉の生存率低下、果実サイズの縮小の原因となります。細胞内の水流が減少することで、栄養吸収率の低下、栄養素欠乏症を招きます。下図の赤字で示されたこのような問題は、相互に関連し、つながっています。

    しかし、これらの問題に対し、植物は自力で立ち向かっています。それが、以下の図の灰色の文字で示された植物の防御システムです。例えば、高温により植物の酵素活性が低下した場合、オリゴ糖によって生成を促されたヒートショックタンパク質が酵素を修復するメカニズムができています。

    そして黄色の文字で示された物質は、植物が問題を低減させるために使用する物質です。これは植物から取り出せる物質ですが、外部で作り出したり産業界で製造できたりするため、それを植物に外から施すことも可能です。つまり、オリゴ糖やグルタチオンを植物に与えることで、これらの植物の防御システムを手助けできるのです。

    自然現象の観察から得られた洞察と製品開発への応用

    [自然現象からの学び]

    以下では、極端に高い気温により植物の酵素活性が低下した場合を例に具体的に解説します。

    植物が過度な高温にさらされると、植物に含まれる酵素は熱によって機能停止し、働けなくなってしまいます。これが酵素の不活性化です。

    一方、それと同時に、高温を感知した植物はシグナルを出し、遺伝子を活性化させることによって防御システムを稼働させ、ヒートショックタンパク質を作り出します。このヒートショックタンパク質と不活性化した酵素が結びつくことで、酵素は修復されるのです。このように、植物には急激な温度変化などの厳しい環境に適応する力が備わっています。

    植物の中にはさまざまな種類のヒートショックタンパク質があり、どれを利用するのがベストな選択なのかという点はかなり複雑で難しいトピックです。しかし、この問題に合わせて適したヒートショックタンパク質を植物自身が作り出すため、最適な結果を導くことができます。

    今回解説したヒートショックタンパク質の生成には、オリゴ糖が関わっています。オリゴ糖が、ヒートショックタンパク質を作るシグナルを遺伝子に送っているのです。

    [バイオスティミュラントの開発プロセス]

    アグリテクノ社では、植物の種子や茎、塊茎、根のなかにある細胞に蓄えられた生理活性物質を抽出し、これらを複合してバイオスティミュラントを開発しています。

    その原料のひとつを詳しく分析したところ、発見がありました。ある特定の原料を植物に使用し、植物の遺伝子で何が起きるのか調べたのです。驚いたことに、たったひとつの原料を与えただけで、酵素を修復するヒートショックタンパク質を作るための関連遺伝子がいくつも活性化されました。つまり、アグリテクノ社の製品が植物に作用し、ヒートショックタンパク質が生まれたのです。

    アグリテクノ社のバイオスティミュラントの主原料は複雑なものです。質量分析をすると、ひとつの原料に200種類以上の有機化合物が含まれていることが分かりました。つまり、植物体で働く数多くの分子が存在しているのです。以下のグラフの山になっているところが、それぞれ別の物質を示しています。

    アグリテクノ社の製品が高度に複雑な理由は、いろいろな原料を組み合わせているからだけではありません。主原料自体が複雑で、それを組み合わせることで複合的な製品が生み出され、さまざまな原料に含まれる分子が、相乗効果を生むように働いているためです。特定の分子だけを使う方法もありますが、相乗効果を生むようなさまざまな分子を多く使う方が、より効果的なのです。

    高温により酵素の働きが低下すると、光合成の速度が落ちたり、糖やエネルギーが減ったりと複合的に影響が出ることが分かっています。その他にも、細胞内の水流が減少すると、栄養の吸収率が低下してしまうなど、複数の問題が関連して起こります。したがって、さまざまな分子を用いることは非常に有効なのです。

    アグリテクノ社の製品や原料を植物に使うことで、植物の中にあるさまざまな遺伝子が活性化されます。例えば、光合成に関わる遺伝子、成長に必要な遺伝子、物質の運搬に関連する遺伝子などです。植物内での物質輸送や生合成プロセスなども活発になり、植物の健康的な生育に良い影響を与えています。

    まとめ

    今回は、自然界における植物の働きを模倣して生み出されたアグリテクノ社のバイオスティミュラントについて解説しました。

    次回以降では、自然のメカニズムとアグリテクノ社の製品による応用について詳しく見ていきます。ぜひご期待ください。

    バイオスティミュラントは、植物の成長や発育を自然に促す非栄養素化合物や微生物製剤です。植物に与えることで、植物が本来持つ力を引き出し、ストレス耐性を高めたり、栄養吸収力を高めたりする働きがあります。

    その機能から考えると、バイオスティミュラントは農薬でも肥料でもありません。害虫や雑草などの生物的ストレスに対して直接作用する農薬や、それ自体が直接植物の栄養となる肥料とは異なり、バイオスティミュラントは植物が本来持っている力をサポートし、植物の健康な成長に寄与する資材です。もともと植物に備わっている力を引き出すバイオスティミュラントの働きは、自然界で起こっていることを模倣しそれをアシストしているため、たいへん理にかなっていると言えます。

     

    【 注目を集めているバイオスティミュラント資材】

     

     

     次回のVol.2のリンクはこちら↓

    アグリテクノの根幹:自然模倣、植物本来の力を引き出すバイオスティミュラント革命 Vol.2(全4回)

     

     

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