アグリテクノの根幹:自然模倣、植物本来の力を引き出すバイオスティミュラント革命 Vol.2(全4回)

チュートリアル 更新日:

 

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】アグリテクノの製品はなぜ効果があるのか?農業技術の専門家が科学的に解説します」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

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目次

    自然のメカニズムの科学

    前回Vol.1では、現代の農業に欠かせない存在となっているバイオスティミュラントとは何か、それが植物の発達や成長にどのように貢献するのかについて解説しました。また、アグリテクノ社がバイオスティミュラントの製品開発にあたり、植物の持つ自然の原理を応用していることも紹介しました。

    今回は、植物が環境ストレスにどのように対応しているのか、具体的な例として過度な高温に対し植物が適応するプロセスをより詳細に解説します。さらに、アグリテクノ社のバイオスティミュラントが、自然のメカニズムをどのように応用して植物の耐性を向上させるのかを、実際の応用事例も示しながら紹介します。

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    植物は高温などのストレスにどのように対応するのか

    [高温ストレスの影響]

    植物は、気候や土壌などの環境から多くの影響を受けています。なかでも過度な高温や熱ストレスは、植物にさまざまな問題を生じさせます。

    例えば、高温により植物内のタンパク質が変性するほか、熱によって酵素が機能停止し働けなくなるなどの問題が起こります。このことは同時に、植物が生きていくうえで重要なプロセスのひとつである光合成の速度を低下させたり、エネルギーや糖分を減少させたりすることが分かっています。

    それだけではありません。高温が大気中に満ちていると、植物は活性酸素を発生させ、植物内のいろいろな物質が酸化してしまいます。酸化は植物内の細胞の劣化や老化を招き、ネクローシスと呼ばれる細胞死につながることもあります。

    また、暑さによって植物内部の水分も奪われてしまいます。細胞内の水分が減少すると、植物は枯れ、落花、花粉の生存率低下、果実サイズの縮小などが起こります。細胞に至る水の流れが悪くなると、栄養吸収率が低下し、栄養素欠乏症になってしまいます。

    このように、過度な高温にさらされた植物は、健康な成長や成育のプロセスにさまざまな影響を受けるのです。

    [生理的反応の開始]

    植物は自力で移動することができないため、環境によるストレスから先ほど述べたようなさまざまな影響を受けてしまいます。しかし、植物はこの問題に立ち向かうためのメカニズムを持っているのです。

    ここでは高温を例に、植物が外部からの刺激にどのように反応し適応するのか、そのプロセスを解説します。

    植物が高温を感じ取ると、さまざまなシグナルを送ります。これらのシグナルは植物の遺伝子を活性化させます。活性化した遺伝子は、特定の酵素を生み出します。そしてこの酵素が生理活性物質を作り出します。生理活性物質は外からの刺激に反応して活性化する物質で、植物の器官に蓄えられています。

    生理活性物質の役割と、それらがどのように植物の耐性を向上させるのか

    [生理活性物質の役割]

    植物がストレスに対応して生産する生理活性物質は、外部からの刺激により低下した生理機能を回復させる役割を持っています。周辺の環境から受けるあらゆるストレスに立ち向かうために、植物自らが生み出している物質です。

    植物は、ストレス条件下でさまざまな生理活性物質を生成します。例えば、アブシシン酸は乾燥ストレスに応答して植物が水分を保持するのを助け、サリチル酸は病原体の攻撃に対する植物の免疫応答を強化します。これらの物質は、特定の環境ストレスに対する具体的な防御メカニズムを活性化することで植物を保護します。

    これらの生理活性物質は、それぞれの問題に対応した物質なのです。以下に、アグリテクノ社のバイオスティミュラントに含まれている生理活性物質の種類とその機能について、いくつかの代表的な例をより詳しく見ていきましょう。

    [生理活性物質の種類と機能]

    まず、植物が高温にさらされた時に生成されるヒートショックタンパク質について紹介します。ヒートショックタンパク質は、熱のため働かなくなった不活性酵素と結びつき、酵素を修復し活性化させる働きがあります。活性化した酵素は、また正常に働き始めます。

    そのほかに、ポリアミンという成分があります。こちらも植物が作り出す生理活性物質のひとつですが、アグリテクノ社の製品にも含まれています。ポリアミンは、植物にプラスすることで、光合成速度の低下という問題を和らげることができます。大気中の気温が高くなると、植物は光合成率が低下し健康な成長が阻まれてしまうため、ポリアミンは重要な成分です。

    また、ベタインという成分は、光合成を保護し、植物の浸透圧バランスを維持する働きを持っています。

    これらの生理活性物質は、植物が高温などのストレスを受けて起きたダメージを回復したり、次に同じストレスにさらされた時のために防御力を高めたりして、植物の耐性を向上させているのです。

    [生理活性物質の貯蔵と利用]

    植物は、ヒートショックタンパク質をはじめとする生理活性物質をどのように貯蔵しているのでしょうか。また、ストレスを受けた際、これらの生理活性物質をどのように利用するのでしょうか。以下にそのメカニズムを解説します。

    植物は、高温ストレスを受けるとシグナルを送り、遺伝子を活性化させます。活性化した遺伝子は特定の酵素を生み出し、この酵素がヒートショックタンパク質を作り出します。作られたヒートショックタンパク質は、植物の器官に蓄えられます。植物の器官とは、具体的には種子や茎、根、塊茎などです。塊茎とは、地下に伸びた茎、すなわち地下茎の一部に水分やデンプンなどを蓄えてふくらんだ部分で、ジャガイモなどがこれに当たります。

    つまり植物の器官には、特定の問題を乗り越えるのに役立つ生理活性物質がふんだんに含まれています。したがって、高温や他の問題に対する防御策として植物の耐性を向上させたければ、植物の器官から取り出せる生理活性物質を活用すればよいのです。

    生理活性物質による耐性向上

    [耐性向上のプロセス]

    生理活性物質は植物の耐性を向上させることが分かっていますが、具体的にどのようなプロセスをたどるのでしょうか。例として、ヒートショックタンパク質について詳しく見ていきます。

    植物が高温を感知すると、暑さにより機能停止して働かなくなった酵素を直すために、ヒートショックタンパク質という生理活性物質を作り出します。このヒートショックタンパク質が、ダメージを受けた酵素を修復するのです。植物の中にはいろいろなヒートショックタンパク質がありますが、植物自身がその時々に合わせて解決すべき問題に適したヒートショックタンパク質を作り出しています。

    高温によるストレスを受けた際の酵素の修復メカニズムは、下図で表されます。植物に含まれたたくさんの酵素は、熱により働きが低下し、不活性酵素となります。この不活性酵素とヒートショックタンパク質(Hsp104)が結びつくことで、酵素が修復されるしくみです。修復された酵素は再び活性化し、植物の光合成率の低下やエネルギーの減少などを防ぐために働きます。

    [遺伝子の活性化と物質の生産]

    植物の遺伝子は、どのようにして特定の生理活性物質の生産を命令し、植物の耐性向上に貢献するのでしょうか。高温にさらされた植物が、ヒートショックタンパク質を作り出す場合について、具体的に見ていきましょう。

    植物が高温などのストレスを感知すると、特定の遺伝子が活性化されます。この遺伝子活性化により、植物は必要な防御タンパク質を生成する命令を受けます。たとえば、高温ストレスに対してはヒートショックタンパク質が合成され、損傷したタンパク質の修復を助けることで、植物が過酷な環境に耐えられるようになります。

    植物がヒートショックタンパク質を作る際、オリゴ糖が重要な存在となっています。ただし、オリゴ糖はヒートショックタンパク質の前駆体、すなわちヒートショックタンパク質が生成される前段階の物質というわけではありません。オリゴ糖は、植物の遺伝子に指令を出し、ヒートショックタンパク質を作らせているのです。植物の防御反応を誘発する物質の総称を「エリシター」と呼びますが、いくつかのオリゴ糖が「エリシター」として働き、植物にヒートショックタンパク質を作らせています。

    オリゴ糖とは、具体的には植物の細胞壁の一部なのです。したがって、ある方法で植物の細胞壁を壊し、その断片を植物に与えると、植物がヒートショックタンパク質を作り出すきっかけになるのです。

    アグリテクノ社の開発しているバイオスティミュラントには、200種類以上の成分が含まれています。オリゴ糖のように、ヒートショックタンパク質を作る指令を出す物質を組み合わせて植物に与えることで、これらが同時に作用します。つまり、植物の遺伝子を活性化し、光合成の減少や細胞の劣化などの問題を複合的に解決するのです。

    実際の応用事例

    [アグリテクノの製品による応用]

    アグリテクノ社では、特定の原料を植物に与えて、遺伝子で何が起きるか調べてみました。驚いたことに、たったひとつの原料を与えただけで、酵素を修復するヒートショックタンパク質を作るための関連遺伝子がいくつも活性化されたのです。つまり、アグリテクノ社の製品のおかげで、ヒートショックタンパク質が生まれたのです。このことは、バイオスティミュラントを使って、植物にたくさんのヒートショックタンパク質を作らせることが可能であることを示しています。

    アグリテクノ社のバイオスティミュラント製品は、植物が外部からのストレスに反応し、適応しようとする自然のメカニズムを模倣しています。バイオスティミュラントを植物に与えることで、植物内の特定のシグナル伝達経路を活性化させ、特定の酵素を生み出し、生理活性物質を作り出し、ストレス耐性や成長促進に関わる遺伝子の発現を促すことをアシストをしているのです。

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    [ベタインの施用例]

    実際に、アグリテクノ社のバイオスティミュラント製品を植物に施用した例を見てみましょう。アグリテクノ社の製品によく含まれているベタインを含んだ製品です。

    ベタインとは、アミノ酸誘導体の一種で、植物の葉緑体で形成されています。多くの他のアミノ酸と同様に、植物が健康に成長するために重要な役割を持っている有機成分です。

    米作りにベタインを使うだけで、稲の成長や収穫量を30%も上げられます。そのうえ、粒の充填不足、不稔子実のような他の指標も改善します。粒の充填不足とは、米粒の内部のデンプンが不十分で隙間ができ、中に空気が入った状態です。充填不足の米は白っぽくなり、もろくなってしまいます。不稔子実とは受粉しても種子が実らないことで、米が収穫できなくなります。このような状態も改善されるため、米が開花後に成長する最終段階である登熟もしっかりと行われます。

    ベタインを含んだバイオスティミュラントを作るには、原材料選びが重要です。米からバイオスティミュラントを作ろうとしても、その製品にはベタインが含まれていません。タバコ、トマト、ナスなども同様です。これらの植物は、ベタインの自然蓄積量が非常に少ないのです。一方で、トウモロコシ、ソルガム、ビートなどを使ったバイオスティミュラントには、ベタインが含まれています。

    ベタインは光合成を守り、植物の浸透圧バランスを維持するのに非常に重要な役割を果たします。これが、熱ストレスや高温に対する強力な対策になるのです。

    植物がベタインを作り出すのは、セリンというアミノ酸からベタインが生成されるためです。セリンはベタイン生成のための植物内の前駆体、すなわち前段階の物質となります。したがって、植物から直接ベタインを得られるのです。植物にセリンを与えることで、ベタインの生産を促すことができるわけです。

    まとめ

    今回は、植物が気候などの環境から受けるストレス、特に高温に対してどのように対応するかを紹介しました。

    植物は、高温などのストレスからさまざまな影響を受けています。タンパク質の変性、酵素活性の低下、植物内水分の減少などをはじめ、どれも植物の成長を阻害する要因です。これらの問題に対し、植物は問題を解決する生理活性物質を生み出して適応しています。

    植物がストレスに対して生成する生理活性物質にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる機能を持っています。植物は、その時々に応じた生理活性物質を生産することで、外部からのストレスに対する耐性を向上させているのです。

    植物が生理活性物質を作り出すには、ヒートショックタンパク質に影響を与えるオリゴ糖のように、植物の遺伝子に指令を送る物質が存在します。オリゴ糖は植物の細胞壁の一部ですが、取り出したり外から与えたりすることも可能です。そのため、遺伝子の活性化を助け、生理活性物質の生産に貢献できます。

    アグリテクノ社のバイオスティミュラントは、植物に与えることで生理活性物質の生成をアシストし、より環境ストレスに強い植物へと導きます。実際に、ベタインを含んだバイオスティミュラントを稲に与えたところ、米の収量が30%もアップするという結果になりました。光合成を保護し、浸透圧バランスを保つベタインの機能が働いた結果なのです。

    次回Vol.3では、アグリテクノ社のバイオスティミュラントと実践的応用について詳しく見ていきましょう。

     

    【 注目を集めているバイオスティミュラント資材】

     

     

     前回のVol.1のリンクはこちら↓

    アグリテクノの根幹:自然模倣、植物本来の力を引き出すバイオスティミュラント革命 Vol.1

    次回のVol.3のリンクはこちら↓

    アグリテクノの根幹:自然模倣、植物本来の力を引き出すバイオスティミュラント革命 Vol.3(全4回)

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