【徹底解説講義】りんご・梨・柿(ナシ状果)の成長プロセス!知っておくべき生理障害と解決法とは?隔年結果のメカニズムも解説!

栽培方法 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【徹底解説講義】りんご·梨·柿(ナシ状果)の成長プロセス!知っておくべき生理障害と解決法とは?隔年結果のメカニズムも解説!」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】

目次

    果樹栽培において、開花から収穫に至るまでの各成長段階を適切に管理することは、収量や品質の向上に直結します。特に、リンゴや梨の生育には花芽誘導、結実促進、細胞分裂・肥大の管理、糖度向上、色付き改善といった要素が密接に関係しており、それぞれの段階で適切な施策を行うことが重要です。本記事では、各成長フェーズにおける重要ポイントと最適なバイオスティミュラントの施用方法を分かりやすく解説します。適切な栄養管理とストレス対策を実施し、高品質な果実を安定的に生産するための実践的な知識を得ていきましょう。

    【開花の増加について】

    リンゴや梨の開花を増やすためには、花芽誘導と開花促進に注意を払う必要があります。特に、花芽誘導は果実が大きくなる細胞肥大の期間中に起こり、収穫後の数日間続くため、この期間の管理が重要です。花芽分化のプロセス自体は、それほど重要視する必要はありません。


    (1) 花芽誘導のメカニズム

    花芽誘導は、植物が糖を利用してエネルギーを蓄積する時期に起こります。果樹の糖の輸送形態は、一般的なスクロースではなくソルビトールである点が特徴的です。このため、花芽形成を促進するには、ソルビトールと関連するシグナル伝達を活性化することが重要になります。テカミンフラワーは、このシグナル伝達をT6P(トレハロース6-リン酸)を介して促進する製品です。T6Pは、植物に花芽誘導や花成(開花の誘導)を促す役割を果たします。一般的に、T6Pを生成するためには、スクロースの検出が必要ですが、リンゴや梨ではソルビトールのレベルとT6Pの生成は正の相関関係があるため、問題なく機能すると考えられています。そのため、果実の肥大期から収穫後の数日間にかけてテカミンフラワーを施用することが推奨されます。

    (2)光合成の活性化と栄養供給

    花芽形成を促進し、翌シーズンの開花率を向上させるためには、収穫後の管理も重要です。この期間に、光合成を増加させ、炭水化物(糖)を効率的に蓄積することが開花の増加につながります。

    この目的のために推奨されるのが、テカミンマックスアグリフルの施用です。これらを施用することで、光合成が活性化し、翌シーズンの開花に必要なエネルギー源が確保されます。また、開花には亜鉛、ホウ素、モリブデンなどの微量栄養素が不可欠です。これらの栄養素は、収穫後に葉が落ちる前のタイミングで施用することが推奨されます。なぜなら、葉が十分に残っている段階であれば、葉面散布による栄養の吸収効率が高くなるためです。収穫後の施用によって、これらの微量栄養素は枝や根に蓄積され、休眠期を経て開花時に利用されます。

    (3)開花直前の栄養管理

    冬を迎え、休眠期の終わりに向かうと、芽が膨らみ始めます。この時期には、植物は開花に向けて特に糖とサイトカイニンを必要とします。糖は、収穫後から落葉までの間に蓄積された炭水化物であり、開花時にエネルギー源として利用されます。また、開花前の花器官の形成にはリンとカルシウムが重要であり、細胞分裂の活性化に不可欠な要素です。この時期に、サイトカイニンの供給を増やすためにアグリフルの施用が推奨されます。芽が膨らむ前のタイミングでアグリフルを施用することで、根のサイトカイニン生成が促進され、開花のスムーズな進行を助けることができます。

    【結実の増加について】

    結実を増やすためには、花粉の質を向上させること、適切な栄養供給を行うこと、ストレス要因を管理することが重要です。特に、受粉・受精の成功率を高めることで、果実の形成を促進し、最終的な収穫量の向上につながります。

    カルシウムの役割

    結実の増加には、カルシウムの適切な供給が欠かせません。カルシウムは花の細胞分裂を支える重要な要素であり、不足すると花芽の成長が停止し、開花が減少する可能性があります。ただし、カルシウムを必要量以上に施用しても結実が増えるわけではありません。そのため、不足が疑われる場合にのみ施用することが推奨されます。また、多くの技術者や大学では、カルシウム施用は開花を増やす目的ではなく、ビターピットの発生を防ぐためにも行われています。

    花粉と子房の形成の重要性

    結実には健康な花粉と子房の形成が不可欠です。これらは、減数分裂が適切に行われることで形成されますが、この過程には十分な糖の蓄積が必要です。特に、前シーズンの終わりに蓄積された糖が不足すると、雌性器官の減数分裂中に花が枯死する可能性があります。その結果、受粉・受精が成功しても、種子を形成できずに結実に至らないことがあります。

    ストレス管理と栄養素の供給

    温度ストレス(低温・高温)は、受粉・受精の成功率を左右する要因です。高温は花粉の発芽や柱頭の受容性を低下させ、受粉の成功率を下げる可能性があります。また、乾燥した環境では、花粉の発芽が妨げられ、結実率が低下するため、適切な水分管理が必要です。

    このため、低温・高温ストレスの軽減と栄養供給のために、アグリフルの施用が推奨されます。アグリフルは、ストレス耐性の向上に加え、サイトカイニンの生成を促進する効果があります。特に、葉が少ない時期には、アグリフルを用いることで、受粉・受精の成功率を高めることができます。また、葉が十分に展開した後にはテカミンマックスを施用し、植物のストレス耐性を高めることが有効です。

    送粉者の誘引と受粉促進

    結実を増やすためには、受粉を効率的に行うことが重要です。テカミンフラワーには、送粉者(ミツバチなど)を引き寄せる効果があり、受粉の成功率を高めることが期待できます。特に、気温が低く送粉者の活動が鈍る場合には、テカミンフラワーの施用によって送粉者の訪花を促進し、受粉の確率を向上させることができます。また、亜鉛・ホウ素・モリブデンなどの微量栄養素は、健康な花粉の形成に不可欠であり、適切に施用することで受粉の成功率が向上します。

    結実の調整

    すべての花が結実すると、果実が小さくなり、糖度が低下する可能性があります。そのため、必要に応じて花や果実の間引きを行うことで、品質の向上を図ることが求められます。現在、テクノケルS(硫黄を含む製品)が試験されており、特定の花の受粉を防ぎ、果実の数を適正に調整する方法として注目されています。これは、中心花のみを結実させ、周囲の花を意図的に除去することで、果実のサイズや品質を向上させることを目的としています。

     

    【細胞分裂期間について】

    細胞分裂期間の重要性

    果実の発育には細胞分裂期間と細胞肥大期間の2つのフェーズがあります。果実が結実すると、まず細胞分裂が活発に行われる期間があり、その後、細胞が大きく成長する細胞肥大期間へと移行します。この細胞分裂のタイミングが果実の最終的なサイズを決定する最も重要な要因となります。

    特に、開花後4〜6週間の細胞分裂の初期段階は、果実の大きさを決定するための鍵となります。この期間に細胞の数が増えれば増えるほど、最終的な果実のサイズが大きくなる可能性があります。逆に、この期間に細胞分裂が十分に行われないと、果実の成長ポテンシャルが制限されてしまいます。そのため、この細胞分裂の期間に適切な対策を講じることが非常に重要です。

     

    最適な対策のタイミング

    細胞分裂は開花後約12週間まで続きますが、特に最も急速に進む3週間のタイミングでの対策が重要です。この期間中に細胞分裂を促進することで、果実のサイズが最大限に確保されるだけでなく、果実の落下を防ぐ効果も期待できます。そのため、細胞分裂が終わる前の適切なタイミングで施策を実施することが必要です。細胞分裂の終盤になってから施策を行っても効果が薄く、遅れた対策では意味がありません。

     

    サイトカイニンの役割

    細胞分裂を促進するためには、サイトカイニンが重要な役割を果たします。サイトカイニンは細胞分裂を活性化するホルモンであり、果実の成長を支える要素の一つです。サイトカイニンを増やすためには、アグリフルを土壌に施用することが推奨されます。なぜなら、サイトカイニンは主に根で生成され、他の器官へと輸送されるため、根が十分に活性化されていることが重要だからです。アグリフルは根の活動を刺激し、サイトカイニンの生成を促進するため、細胞分裂期間中に施用するべき製品の一つとされています。

    [サイトカイニンに関わるバイオスティミュラント]

    遺伝子発現の調整

    細胞分裂に影響を与えるのはサイトカイニンだけではなく、遺伝子の発現も重要な要素です。特定の遺伝子を刺激し、他の遺伝子を抑制することで、細胞分裂の期間を延長したり、より迅速に進行させたりすることが可能です。現在、アグリフルは細胞分裂に関連する多くの遺伝子を活性化することが確認されています。このため、細胞分裂の促進だけでなく、遺伝子レベルでの作用も期待できるバイオスティミュラントの一つです。

    また、テカミンマックスも細胞分裂期間中に施用することで果実の最終的なサイズを増やすための有望な選択肢と考えられます。テカミンマックスがどの遺伝子にどのような影響を及ぼすか、すべてが解明されているわけではありませんが、細胞分裂を促進する遺伝子を刺激する可能性が高いとされています。今後、細胞分裂を活性化する重要な遺伝子の特定が進むことで、より効果的な施策が確立される可能性があります。

    細胞肥大期間の重要性

    細胞分裂期間の後、果実は細胞肥大期間へと移行します。この段階では、細胞の数は固定され、細胞がどれだけ大きく成長するかが果実の最終的なサイズを決定する要因となります。細胞肥大が適切に進行するためには、水分の供給と細胞壁の構造維持が極めて重要です。

    水分の吸収とテカミンマックスの役割

    細胞肥大のプロセスは水分量に強く依存しており、水が細胞壁に圧力をかけることで細胞が拡大します。この水分の供給を維持するために、テカミンマックスに含まれるプロリンとベタインが有効とされています。プロリンとベタインは細胞内の水分を保持し、細胞の膨張を促進するため、特に干ばつストレスや水不足のリスクがある圃場では、テカミンマックスの施用が推奨されます。

    オーキシンと細胞肥大の関係

    細胞肥大が正常に進行するためには、細胞壁を緩める必要があり、その過程でオーキシンが必要となります。現在、オーキシンを増やすことができる製品は存在しないものの、テカミンマックスがオーキシンの効果に関連する特定の遺伝子を刺激する可能性があることが確認されています。ただし、これが直接的に細胞肥大を促進するかどうかは、まだ明確には証明されていません。

    カルシウムとホウ素の重要性

    細胞が拡大する過程では、細胞壁の繊維が一時的に壊れ、それを修復する必要があります。この際にカルシウムが細胞壁を再び結びつけ、強固な構造を形成するのに役立つため、細胞肥大期にはカルシウムの供給が重要になります。さらに、ホウ素もカルシウムと同様に、細胞壁の形成と維持に重要な役割を果たすため、この時期にはカルシウムとホウ素の施用が推奨されます。

    根の衰退と水分吸収の問題

    細胞肥大期には、根が成長を止め、徐々に衰退していくため、水や栄養素の吸収能力が低下します。そのため、特にストレスがかかりやすい環境や灌漑システムがない圃場では、細胞肥大期に向けた事前の対策が必要です。

    アグリフルの施用と水分吸収の問題

    根の衰退による水分吸収の低下を防ぐためには、細胞肥大期の前にアグリフルを施用することが有効です。アグリフルを施用することで、植物の水と栄養素の吸収能力が向上し、細胞肥大がスムーズに進むようになります。特に、水分供給が雨頼みの圃場や、干ばつリスクの高い環境では、細胞肥大期の前にアグリフルを施用することで、果実の成長を最大化することが可能です。

     

    【糖度の向上と色付きの改善について】

    糖度向上のための対策

    果実の糖度を向上させる唯一の方法は、光合成を促進し、より多くのグルコースを生成することです。リンゴや梨では、光合成で生成された糖の約70%がソルビトール、30%がスクロースとして輸送されます。したがって、光合成を最大化し、糖の蓄積を増やすことが糖度向上の鍵となります。

    光合成を増やすためには、テカミンマックスアグリフルの施用が効果的です。アグリフルは光合成量を増やすのに優れていますが、作物サイクル全体を通じて継続的に施用する必要があるため、収穫期の終盤に施用するだけでは十分な効果が得られません。したがって、テカミンマックスまたはアグリフルを栽培期間を通じて定期的に施用することが推奨されます。

    糖の輸送とテカミンブリックス

    糖度を向上させるためには、光合成で生成された糖を果実に効率的に輸送することも重要です。収穫指数(糖度・色付き・硬度・酸度の指標)を向上させるためには、テカミンブリックスの施用が推奨されます。テカミンブリックスは、葉で生成された糖を果実へ輸送し、その浸透を促進する働きがあります。ただし、リンゴや梨は糖の輸送メカニズムとしてソルビトールを主要な形態として使用するため、テカミンブリックスの効果は他の作物よりも低下する可能性があることが示唆されています。

    カリウムが葉のソルビトール生成を増加させることが研究で示されているため、カリウム供給を考慮しながらテカミンブリックスを施用することが有効かもしれません。

     

    [糖の輸送に関わるバイオスティミュラント]

    色付きの改善

    リンゴや梨の果実の色は、アントシアニンの生成によるものです。アントシアニンの生成を促進し、分解を防ぐことが果実の色を向上させるために重要です。しかし、日中の気温が32°C以上、夜間の気温が20°C未満の場合、アントシアニンの形成が抑制されるため、温度管理が重要になります。

    テカミンブリックスは、直接アントシアニンを増やす効果はないものの、エチレンの生成を促進し、間接的にアントシアニンの生成を助ける可能性があります。しかし、リンゴや梨においては、テカミンブリックスだけでは十分な効果が得られていないため、他の対策が必要になります。

    色付き改善のための代替案

    色付きに問題がある場合、アグリフルテカミンマックスの施用が有効です。アグリフルは、アントシアニンの生成を促進するための酸性土壌環境を作るのに役立ちます。また、植物内の窒素が多すぎてカリウムが不足するとアントシアニンの形成が抑制されるため、過剰な窒素施用を避けることも重要です。

    さらに、アグリフルは赤ブドウの色を増やす試験で良好な結果を示しており、リンゴにも同様の効果が期待されます。テカミンマックスと併用することで、さらに効果を高めることができる可能性があります。

    活性酸素種(ROS)の抑制

    アントシアニンレベルを向上させるもう一つのアプローチは、活性酸素種(ROS)の影響を抑えることです。ROSは環境ストレスや病原菌感染時に発生し、アントシアニンを分解する原因となります。そのため、テカミンマックスを施用することで、ROSの過剰生成を防ぎ、アントシアニンの保持を助けることができます。

    ジャスモン酸の影響

    ジャスモン酸は、アントシアニンの生成を促進するホルモンの一つです。テカミンマックスはジャスモン酸の生成を刺激する遺伝子発現を活性化するため、色付きの向上に寄与する可能性があると考えられます。さらに、アグリフルもジャスモン酸の生成を増やす可能性があるため、これらの製品を適切に施用することで果実の色を改善できる可能性が高いです。

     

    【作物の生理障害について】

    生理障害への対策の重要性

    作物の生理障害は単一の要因ではなく、複数の要因が絡み合った結果として発生することが多いため、問題解決には多面的なアプローチが必要です。例えば、ビターピット(果実内の黒い斑点)の主な原因はカルシウム不足ですが、過剰な窒素施用、亜鉛やリンの欠乏なども影響を与えるため、カルシウムだけでなく栄養バランス全体を考慮する必要があります。

    また、予防策を早い段階から実施することが、生理障害の発生リスクを低減する鍵となります。投資を増やせばより確実な対策が可能ですが、各栽培者は自身の圃場に適した施策を選択することが重要です。  

    主な生理障害とその対策

    ① ビターピット(果肉内の黒斑)

    原因:カルシウム不足が主因だが、過剰な窒素や亜鉛・リン欠乏も影響

     

    ② 収穫後の水分損失(脱水症状)

    原因:果実内の水分保持能力の低下

     

    この他の生理障害として、日焼け、粉質、みつ症、老化現象などがあります。生理障害の詳しい原因と対策についてご覧になりたい方は是非、「【徹底解説講義】りんご·梨·柿(ナシ状果)の成長プロセス!知っておくべき生理障害と解決法とは?隔年結果のメカニズムも解説!」こちらの動画をご覧ください。

    【まとめ】

    リンゴや梨の栽培において、開花・結実から果実の肥大、糖度・色付きの向上、さらには生理障害対策に至るまで、各成長フェーズごとに適切な施策を講じることが重要です。本記事で紹介したように、サイトカイニンやT6Pシグナルの活性化、光合成促進、栄養素の適切な供給が、果実の成長と品質向上に大きく寄与します。

    また、生理障害を防ぐためには、単なる施肥だけでなく、環境ストレス対策や水分管理も不可欠です。特に、カルシウムやホウ素、ジャスモン酸の適切な供給が、果皮の強度や色付きに関与するため、成長段階に応じた適切なバイオスティミュラントの選択が鍵となります。

    科学的根拠に基づいた栽培管理を行うことで、収量と品質を最大化し、市場競争力のある果実を生産することが可能になります。今後も継続的に新しい技術を取り入れながら、より効率的な栽培方法を実践していきましょう。

    リンゴや梨の生育プロセスやバイオスティミュラントについて「【徹底解説講義】りんご·梨·柿(ナシ状果)の成長プロセス!知っておくべき生理障害と解決法とは?隔年結果のメカニズムも解説!」こちらの動画で解説していますので、気になる方はこちらから動画をご視聴ください。

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