この記事では、味の素ヘルシーサプライ株式会社がアグリテクノ社とのパートナーシップの基で提供しているバイオスティミュラント製品「テカミンフラワー」について、対話形式でやさしく解説します。ぜひお気軽にお読みください。
目次
【登場人物】
■池田亜美(あみちゃん)
農家を営む親戚がいることから、農業に興味を持ち始めた小学6年生の女の子。研究熱心で親戚からいろいろ教わっている。
■アグリ先生
あみちゃんの親戚で農業を営んでいる。農業資材にも詳しく、あみちゃんからは先生と呼ばれ慕われている。
1.バイオスティミュラントとテカミンフラワー
1)バイオスティミュラントの定義
あみちゃん
ー アグリ先生、この前はテカミンマックスについて詳しく教えてもらったけど、もっといろいろ教えてください。
アグリ先生
ー もちろん。この前話したテカミンマックスは、植物に与えると成長を促したり、ストレスに強くなるようサポートしたりしてくれるバイオスティミュラントだったね。覚えてるかな?
あみちゃん
ー はい。テカミンマックスは、植物がもともと持っている力を発揮できるよう、電動アシスト自転車みたいに支えてくれるんですよね。
アグリ先生
ー そうそう、バッチリだね。じゃあ今回は、テカミンフラワーについて話してみようか。
あみちゃん
ー テカミンフラワーという名前だから、お花に関係あるのかな。テカミンフラワーも、バイオスティミュラントなの?
アグリ先生
ー そのとおり!テカミンフラワーの話に入る前に、バイオスティミュラントについて少しおさらいしようね。
バイオスティミュラントとは、植物や土に刺激を与えることによって植物が本来持っている力を引き出し、より良い状態にする農業資材のことで、天然由来の物質や微生物が含まれているんだ。
バイオスティミュラントは植物の健康な成長をサポートし、収穫量を増やしてくれるよ。どうやって成長をサポートするかというと、そのひとつが光合成を促すこと。植物は光合成によって作り出された栄養で成長するから、しっかり光合成できることが大事なんだ。それから、植物は成長していく中で、乾燥や高温などの厳しい環境にさらされることもあるよね。バイオスティミュラントは、そういった環境ストレスに植物が耐えられる力を高める働きもあるんだ。
つまりバイオスティミュラントを使うことで、成長に必要な栄養をたっぷり吸収でき、ストレスにも強い植物になる。その結果、健康に育って、作物をたくさん収穫できるようになるんだよ。
あみちゃん
ー 農業資材っていうと農薬や肥料もあるけど、バイオスティミュラントはそれとはまた違うんですよね。
アグリ先生
ー そう。バイオスティミュラントは、農薬や肥料、土壌改良剤とも違うカテゴリーの農業資材なんだ。肥料の場合は、それ自体が作物の栄養になる。それに対してバイオスティミュラントは、作物に刺激を与えることで、作物自身が栄養の吸収率を高めたりストレスに強くなったりするんだよ。
バイオスティミュラントは農薬や肥料の代わりになるものではなくて、農薬や肥料の効果をよりよく引き出してくれるものなんだ。農薬や肥料と一緒に使うことで、それらの効果をさらに高める働きもあるんだよ。例えば、バイオスティミュラントは植物の栄養吸収能力を向上させるから、肥料の効果がより発揮されやすくなるんだ。また、植物の健康状態を良くすることで、農薬の効果も高まることがあるんだ。
あみちゃん
ー バイオスティミュラントは、農薬や肥料と一緒に使えるってことなんですね。バイオスティミュラントを使うとどんな効果があるの?
アグリ先生
ー バイオスティミュラントの効果としては、光合成の活動を活発にしたり、老化の原因となる活性酸素を抑えたりしてくれるよ。
他にも、根っこや花や実が元気に育つようにサポートしたり、葉っぱなどから水分が発散される量をコントロールしたりして、いろんな面から成長を助けてくれるんだ。

あみちゃん
ー バイオスティミュラントは、植物が成長するための活動を支えてくれるんですね。
アグリ先生
ー そうだね。暑すぎたり寒すぎたりといった、環境から受けるストレスを軽減させるだけじゃなくて、ストレスへの耐性をつけ、植物の生育を助ける働きがあるよ。
2)味の素のバイオスティミュラントラインアップ

あみちゃん
ー バイオスティミュラントは、何から作られているの?
アグリ先生
ー バイオスティミュラントの原料は、天然成分や動物、作物からの抽出物、微生物の代謝によって生まれた物質が主になっているよ。
農薬や肥料とも違う新たなカテゴリーの農業資材として、世界規模で注目されているんだ。日本でも、味の素をはじめとするさまざまな会社がバイオスティミュラントに興味を持ち、研究開発が進んでいるよ。
あみちゃん
ー 味の素って食べ物の会社じゃないの?
アグリ先生
ー 主力商品は食品だね。味の素グループでは、食品のアミノ酸製品を作る過程で出る発酵液を基にして、バイオスティミュラントの製造・販売を行っているんだ。
あみちゃん
ー そうなんだ。
アグリ先生
ー 味の素のバイオスティミュラント製品は、その働きによって3つのカテゴリーに分かれているよ。
樹を強くする「基本のバイオスティミュラント」、「足りない微量要素を効率的に補給するバイオスティミュラント」、「特定の効果を引き出すバイオスティミュラント」の3種類がある。これらの3つをしっかり組み合わせることで、収量アップや品質向上につなげるという考え方なんだ。

あみちゃん
ー バイオスティミュラントにも、いろんな種類があるんですね。
アグリ先生
ー そうだよ。1つずつ詳しく説明するね。まずは、基本の製品。

目的は、しっかりと樹を作ることだよ。樹の上部を強くする資材「テカミンマックス」は前に説明したね。樹の下部を強くする資材には「アミハート」や「アグリフル」があり、根や土にも働きかけて丈夫な植物にするんだ。
あみちゃん
ー まずは、基本を強くすることが大事なんですね。
アグリ先生
ー 続いて、微量要素供給製品。

これは、足りない微量要素を効率的に補給するバイオスティミュラントなんだ。ホウ素、カルシウム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、マンガンなどの微量要素は、必要な量は少しなんだけど、植物の成長には欠かせないとても大切な栄養素なんだよ。
味の素の微量要素供給製品には、「テクノケルアミノミックス」や「テクノケルアミノCaB」などがある。
あみちゃん
ー 足りない栄養素を補うんですね。
アグリ先生
ー そして3つ目がスペシャリティ製品。

これは、特定の効果を引き出すバイオスティミュラントなんだ。つまり、収量を増やしたり、作物の品質を高めたりすることを目的とした製品だよ。
スペシャリティ製品には、「テカミンフラワー」や「テカミンブリックス」などがあるよ。
あみちゃん
ー 今回教えてもらうテカミンフラワーは、スペシャリティ製品のグループなんですね。
アグリ先生
ー バイオスティミュラントは、まず、基本の製品でしっかりと樹を作ること。次に、微量要素供給製品で不足している微量要素を供給すること。そして、特定の目的のために戦略的にスペシャリティ製品を使うこと、という流れで使うのが効果的だよ。
つまり、スペシャリティ製品の効果を得るには、事前に樹の状態を良くしておくことが重要なんだ。樹の状態があまり良くない場合は、バイオスティミュラントの基本の製品を使って健康にしておくことが大事だよ。

3)テカミンフラワーの施用目的と製品概要
アグリ先生
ー ここからは、テカミンフラワーの話に入っていくね。テカミンフラワーは、植物の開花プロセス促進に特化したバイオスティミュラントなんだよ。あみちゃんが予想した通り、お花に関係あるバイオスティミュラントだね。
あみちゃん
ー わーい、当たった!でも、「開花プロセスの促進」ってどういうこと?
アグリ先生
ー 開花プロセスとは、「花芽」と呼ばれる花になる予定の芽ができて大きくなり、花が咲くまでのプロセスのことを言うんだ。テカミンフラワーは、この開花プロセスを順調に進める働きがあるんだ。花芽が順調に育って、高い品質の果実がたくさん収穫できることを目的に作られた製品だよ。

あみちゃん
ー 花にも芽があるんだね。テカミンフラワーを使うと、どんな効果があるんですか?
アグリ先生
ー テカミンフラワーを使うと、花がたくさん咲いたり、開花の時期が長続きしたりするんだ。その他にも、花粉の受精能力を高めて、果実がうまく実るように助けるなどの効果が期待できるよ。

あみちゃん
ー いろんなサポートをしてくれるんだね。テカミンフラワーにはどんなものが含まれているんですか?
アグリ先生
ー テカミンフラワーは、アミノ酸、ホウ素、モリブデン、糖類をベースに特別に配合されたバイオスティミュラントだよ。開花期の代謝を活性化させていろんな課題を解決し、作物の生産量を最大化するように、栄養素がバランスよく含まれているんだ。
特に、微量要素のホウ素とモリブデンは、花が咲くのに必要な栄養を与えてくれるよ。花が落ちるのを防いだり、花の生育を進めて花粉の発芽をサポートしたり、花粉の受精能力を高めたりする働きも期待できるよ。
あみちゃん
ー 必要な栄養素がしっかり入っているんですね。どうやって使うんですか?
アグリ先生
ー テカミンフラワーは、葉っぱに直接吹きかけて使うよ。開花プロセスの初めの段階と、花が開く段階に使うのが最適なんだ。農薬と一緒に使えるから、テカミンフラワーと農薬を混ぜて葉っぱにまくのが一般的な使い方だね。
2.開花プロセスとその課題
あみちゃん
ー そもそも、花がいっぱい咲くのと美味しい野菜や果物ができることは、何か関係があるの?
アグリ先生
ー それが大いに関係があるんだよ。植物は、花の1つ1つに将来果実になる部分が含まれているから、花の数が多ければ果実もその分収穫できるし、たくさん受粉して種がいっぱいできれば実の品質は上がることになる。
花芽が充実することは、実の部分を食べる作物では収穫量の増加につながるから、開花プロセスはとても重要なんだ。
あみちゃん
ー 実の部分を食べるというと、果物とか?
アグリ先生
ー そうそう、果物以外にもナスやキュウリ、米やトウモロコシなんかもそうだね。
あみちゃん
ー たくさん当てはまるんですね。
アグリ先生
ー この開花プロセスはとても長い期間になるから、エネルギーもたくさん必要になるよ。
あみちゃん
ー 長い期間ってどれぐらい?
アグリ先生
ー 基本的に数ヶ月、果物の樹なんかは1年以上かかるよ。
あみちゃん
ー そんなにかかるんですね!
アグリ先生
ー その長い間に、環境条件や品種による特性などによって、作物はいろんな課題にぶつかるんだ。状況によっては、植物は生きのびるために花を枯らしてしまうこともある。花を咲かせるにはとてもエネルギーが必要だからね。高品質の作物を収穫するには、そういった課題への対処と対策が重要なんだよ。

あみちゃん
ー 開花プロセスは、収穫ための大切な期間なんですね。
3.テカミンフラワーの期待できる機能と成果
あみちゃん
ー テカミンフラワーを植物にあげると、どうして花がたくさん咲くようになるんですか?
アグリ先生
ー テカミンフラワーを植物に与えると、T6P(トレハロース-6-リン酸)という物質の生成を促すんだ。T6Pが特定の遺伝子を活性化することで、開花に必要な糖分を花芽に与えて開花を促すという仕組みになっているんだよ。
それからT6Pは植物のエネルギー状態を感じ取ることができるんだ。だから、花芽をつけたり花を開いたりするためのエネルギーがあるかどうかを見極めてシグナルを出すことで、タイミングを調整する役割も果たしているよ。

あみちゃん
ー ティーロクピーって暗号みたいですね。
アグリ先生
ー アルファベットが並んでいて、ややこしいよね。それからもうひとつ働きがあって、テカミンフラワーは開花を促すだけじゃなく、昆虫も引き寄せるんだ。
あみちゃん
ー え、どうやって?
アグリ先生
ー テカミンフラワーを与えると、昆虫を花に引き寄せる物質の生産も促されるんだよ。花粉を運ぶ昆虫が集まると受粉の機会が増えるから、実がなる確率が上がるよね。
こうやって、テカミンフラワーが開花を促し受粉率を上げることで、結果としてたくさん実がなって、収穫量が増えることになるんだよ。

あみちゃん
ー なるほど、そういう仕組みなんですね!
4.成分とその作用
あみちゃん
ー テカミンフラワーの成分について、もう少し詳しく教えてください。
アグリ先生
ー テカミンフラワーの特徴は、モリブデンやホウ素などの微量要素をたくさん含んでいることなんだ。
ホウ素は花粉管が伸びるのを助け、受粉と受精のプロセスがうまくいくような環境を作り出す。モリブデンは花粉を充実させ、受精が成功する確率を上げる働きがある。これらの成分がお互いに作用して、開花プロセスがうまく進んでいくんだよ。

あみちゃん
ー 微量要素というのは、必要な量は少ないけど、なくてはならない大切な栄養素ですよね。
アグリ先生
ー そう、よく覚えているね。それから、リン酸、カリウムといった植物の成長に絶対必要な主要栄養素もバランス良く含まれているんだ。
リン酸は細胞分裂に必要で、花芽の細胞分裂が活発になる時期に重要な役割を果たすよ。
カリウムは根の成長や光合成の促進に効果のある栄養素なんだけど、開花にとってもなくてはならない栄養素なんだ。なぜなら、根が発達して栄養を吸い上げられるようになり、葉が光合成できるぐらいに大きく育った頃に、芽が葉になるか花になるか選び始めるからだよ。
テカミンフラワーは、これらの栄養素が適切なバランスで配合されているから、植物の健康的な成長をサポートできるんだ。
あみちゃん
ー 栄養素のバランスが大事なんですね!
アグリ先生
ー 成分について、もうひとつ。テカミンフラワーのph値は3で、これは酸性であることを表しているんだ。この酸性環境は、リン、鉄、マンガン、亜鉛などの必須栄養素を溶けやすくするから、植物による吸収を促進するんだよ。
リン、鉄、マンガン、亜鉛は、どれも開花期に重要な栄養素だからね。

5.散布タイミングと散布方法
あみちゃん
ー テカミンフラワーは、どんなふうに使ったら効果が出ますか?
アグリ先生
ー テカミンフラワーをあげるタイミングは、開花プロセスの初期と開花期の2回が理想的なんだ。
あみちゃん
ー 開花プロセスの初期って、どんな時ですか?
アグリ先生
ー 開花プロセスの初期というのは、芽が葉になるか花になるかを選ぶ、花成誘導期と呼ばれる時期だよ。この段階で1回目のテカミンフラワーを散布することで、花芽になる細胞を増やし、細胞分裂に必要な栄養を与えるんだ。
花成誘導期は作物や品種によって異なるけど、例えばトマトなら定植後30〜40日頃から始まり、果樹なら前年の夏から秋にかけてだね。外から見てもあまり変化が現れないけど、見えない所でこの花成誘導が始まっているんだ。
あみちゃん
ー 花芽になる細胞を増やすんですね。2回目にまく開花期はどんな時ですか?
アグリ先生
ー 開花期とは花が咲く時期なんだけど、テカミンフラワーは花が開く直前にあげるのがいいよ。花が咲いてから受精して実をつけるまでのプロセスは、糖分やエネルギーがたくさん必要になるからね。だから、テカミンフラワーでサポートしてあげるんだ。
具体的には蕾がはっきりと見える頃だよ。この2回の散布の間隔は、作物によって違うけど、一般的に2〜4週間くらいあけるんだ。ただし、正確な時期は作物や品種や栽培条件によって変わるから、それぞれの作物に合わせた使用方法を確認するのが大切だよ。

あみちゃん
ー テカミンフラワーは、葉っぱに吹きかけるんでしたよね。
アグリ先生
ー そう。さっき少し話したように、テカミンフラワーは土にまくんじゃなくて、葉っぱにまく「葉面散布」という方法が一般的なんだ。葉に直接与える方が、テカミンフラワーの成分を吸収しやすくて、効果が早く現れるからなんだよ。
あみちゃん
ー すぐに栄養になるんですね。テカミンフラワーは、作物の花のためのバイオスティミュラントだということが分かりました。
アグリ先生
ー それじゃあ、今回はここまでにしよう。次回は、植物の開花プロセスについて、もっと詳しく教えてあげようね。

6.まとめ
今回は、テカミンフラワーの概要と目的について解説しました。テカミンフラワーは、植物の開花プロセス促進に特化したバイオスティミュラント製品です。バイオスティミュラントとは植物本来の力を引き出す農業資材で、農薬や肥料とも異なる新たなカテゴリーの製品として注目されています。
植物の開花プロセスは、葉物や根菜類を除いた作物、穀物類、果菜類、果樹等においては収量に直結する大変重要な過程です。数ヶ月以上にわたるこのプロセスを円滑に進めることが、果実の品質向上や収量増加につながります。
テカミンフラワーは、窒素、リン酸、カリウムの他に、モリブデンやホウ素などの微量要素を豊富に含んでいます。これらの成分が相乗的に作用し、花芽の充実や開花、結実などの開花プロセスを促進し、収量増加に導いているのです。
次回は、植物の開花プロセスについてさらに詳しく解説します。ぜひご覧ください。
【次回Vol.2のリンクはこちら ↓ 】