【科学的/徹底解説】その2 大豆・豆類へのバイオスティミュラント施用② 農業技術の専門家が科学的に解説します。

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】その2 大豆·豆類へのバイオスティミュラント施用② 農業技術の専門家が科学的に解説します。」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

【この記事で紹介されるバイオスティミュラント】
テカミンマックスファーティグレインフォリアーテカミンフラワーアグリフル

目次

    大豆の収量を最大化するために必要なのは、適切な施肥とそのタイミングを理解することです。この記事では、科学的データと実践的知見をもとに、大豆の成長プロセスに基づく最適な施肥戦略を徹底解説します。特に大豆生育において「重要な栄養素」から「節数」「莢数」「豆の重さ」という収量を決定する3つの要因に焦点を当てつつ、「大豆の生育プロセス」をもとに具体的な方法をステップバイステップで紹介します。これを読めば、収量向上の道筋が明確になるでしょう! 

    ■収量向上のために理解すべき3つの要因

    まずは前回の復習です。もし前回の内容を覚えていない方やまだご覧になっていない方は、ぜひ「【科学的/徹底解説】その1 大豆・豆類へのバイオスティミュラント施用① 農業技術の専門家が科学的に解説します。」の記事をご覧ください。こちらの記事と動画を先にご確認いただくことで、本記事の内容をより深く理解することができるでしょう。

    さて前回、大豆の収量は次の5つの要因によって決定されることをお話ししました。

    大豆の収量を増やすためのポイントは「豆の数を増やすこと」

    大豆の収量を増やすためには、豆の数を増やすことが最も効果的です。収量は「豆の数 × 一粒の豆の重さ」で決定されますが、経験的にも豆の数を増やすことが収量向上にはより重要とされています。その理由は、大豆を広い面積で栽培する場合、豆の数を増やす施策の方が効率的で、補助金や補償制度の条件にも適合しやすいからです。 

    [豆の数を増やすには?]

    豆の数を増やすためには、まず莢の数を増やすことが重要です。莢の数は、「莢の数 × 莢ごとの豆の数」で決まります。

    ・「莢の数」を増やすには…

    莢の数を増やすことは、大豆の収量を向上させる上で欠かせない要素です。総莢数は、「節の数」と「節ごとの莢の数」によって決まります。「節ごとの莢の数」は、その節にどれだけの花が咲くか、また花がどれだけ枯死せずに莢に成長するかに左右されます。一つの節には1つの莢しか付かない場合もあれば、2つ、3つ、さらには4つの莢が付くこともあります。この違いを生む要因が、花の数やその後の発育状況です。

    次に、総莢数を増やすもう一つの方法として、「節の数を増やす」ことが挙げられます。節の数は植物の成長率に依存しており、成長率を上げることで節の形成を促進できます。文献でも、収量を増やす上で最も重要な指標の一つが「節の数」であると強調されています。節を増やすことで、莢を形成するための基盤が整い、収量の向上に直結します。つまり、莢の数を増やすためには、節ごとの莢数を増やす施策と、節の数を増やす施策の両方を同時に実行することが重要です。 

    ・「莢ごとの豆の数」を増やすには…

    この数は、主に受精率によって決まります。通常、一つの莢には平均で2.5粒の豆が含まれていますが、2粒や3粒が一般的で、条件が整えば4粒、さらには5粒の豆が含まれることもあります。このように、受精率の向上が豆の数を増やす大きなカギとなります。受精率を高めるためには、まず受粉の効率を向上させることが重要です。 

    ■花の枯死や莢の落果の原因は?その対策も解説!

    [花の枯死]

    大豆の収量増加のためには「受精率の増加」や「花の枯死率の低減」が重要なポイントになってきます。

    特に受粉後の花の枯死は、大豆の収量に大きな影響を与える課題の一つです。通常、最も良い条件下でも20%の花が枯死し、不適切な条件下ではその割合が80%に達することもあります。花の枯死の主な原因は、植物内部での糖や光合成産物の不足です。

    研究によると、花の枯死の約81%は受粉後に発生しており、このタイミングでの適切な管理が重要です。これらの問題に正しく対応するためには、原因を深く理解し、適切な施策を講じる必要があります。本トピックでは、主な原因とその対策について具体的に解説します。 

    [花の枯死と原因と対策とは?]

     ・水不足による影響と対策

    花の枯死や莢の落果の主な原因の一つは水不足です。水が不足すると、植物の光合成が低下し、エネルギー源である糖の生成が減少します。さらに、生成された糖が花や莢に行き渡らず、根や他の成長点に優先的に配分されるため、エネルギー不足が深刻化します。この配分の乱れが、枯死や落果を引き起こす直接的な原因となります。水不足への対策としては、以下の施策が有効です。

    • 適切な灌漑

    水を定期的に供給し、植物が必要とする水分を確保します。

    • 光合成の促進

    テカミンマックスやファーティグレインフォリアーを使用することで、光合成効率を高め、糖の生成量を増やすことができます。これにより、花や莢へのエネルギー供給が改善されます。

    • 糖の配分の最適化

    テカミンフラワーを使用することで、TPS8遺伝子を刺激し、糖を適切に花や莢に運ぶよう促します。

     ・サイトカイニン不足による影響と対策

    植物ホルモンの一種であるサイトカイニンも、花の枯死や莢の落果に深く関与しています。サイトカイニンは細胞分裂を促進し、花や莢の成長を支える重要な役割を担っていますが、その生成が不十分だと成長が停滞し、結果として枯死や落果を引き起こします。サイトカイニン不足の原因と対策は以下の通りです。

    • 原因:

    • 根の健康状態が悪化している場合、サイトカイニンの生成量が減少します。

    • サイトカイニンが花や莢に適切に供給されない場合、成長が妨げられます。

    • 対策:

    アグリフルの活用:

    アグリフルを施用することで、土壌中の有益な微生物を増やし、根の健康を改善できます。これにより、サイトカイニンの生成が促進されます。

    カルシウムの補給

    テクノケルアミノCaBを葉面散布することで、細胞分裂に必要なカルシウムを供給し、細胞壁の形成をサポートします。

     

    ・複合的なアプローチの重要性

    実際には、水不足とサイトカイニン不足は相互に関連していることが多く、それぞれが影響を及ぼし合います。たとえば、水不足が続くと、細胞分裂に必要な糖が不足し、それがサイトカイニンの効果を弱める原因となります。このような複雑な状況に対処するには、複合的なアプローチが求められます。

    • 根と土壌の健康改善:

    アグリフルを活用して善玉菌を増やし、サイトカイニン生成を促進します。

    • 光合成の強化:

    テカミンマックスファーティグレインフォリアーを使用して光合成を活性化し、糖の生成と配分を最適化します。

    ファーティグレインフォリアーテカミンマックス

     • カルシウム供給:

    テクノケルアミノCaBを用いて細胞分裂を支えるカルシウムを補います。

    花の枯死や莢の落果は、多くの要因が絡み合った複雑な問題ですが、適切な対策を講じることで軽減することが可能です。水や栄養、植物ホルモンのバランスを整えることで、植物本来の成長を支援し、収量向上を目指すことができます。

     

    ■一つの莢の豆の数を増やすには?

    莢の中の豆の数を増やすことは、収量向上において重要なポイントの一つです。大豆の莢に含まれる豆の数は平均して2.5粒ですが、条件によってはこれを増やすことも可能です。一部の例では、莢の中に5粒の豆が含まれるケースも報告されています。このような結果を得るためには、受精の成功率を高め、莢の形成を促進することが必要です。以下では、その具体的な方法について解説します。

    [1. 温度管理の重要性]

    莢形成における温度管理は、豆の数を増やすための基本的な要素です。最適な温度帯は昼間28度、夜間18度であり、これを維持することで受精プロセスを最適化できます。しかし、高温が問題となる場合、莢の形成率が低下し、収量に悪影響を与えます。

    ※例として、38度では莢形成が35%減少することが確認されています。このような環境下では、適切な対策が必要です。

    対策としては、プロリンやベタインを含む製品(例: テカミンマックスファーティグレインフォリアー)の施用が挙げられます。これらの資材は高温ストレスを軽減し、莢形成を支援します。

    ファーティグレインフォリアーテカミンマックス 

    [2. 栄養素の重要性]

    植物が必要とする栄養素を適切に供給することで、豆の数を増やすことが可能です。

    ホウ素: 花粉管の形成を助け、受精を促進します。また、糖を花に供給する役割も果たします。

    亜鉛・モリブデン: 酵素の働きを強化し、代謝を活発にします。

    栄養素を効率的に吸収させるためには、ファーティグレインフォリアーテクノケルアミノCaBなどを適切な時期に施用することが効果的です。これにより、受精の成功率が高まり、莢あたりの豆の数が増加します。

     

    [3. 花粉媒介者の活用]

    昆虫などの花粉媒介者の活動も、豆の数を増やすために重要な要素です。受精の最大50%が昆虫による媒介に依存しているため、媒介者の活動を支援することが収量アップにつながります。

    昆虫を引きつける対策としては、テカミンフラワーの使用が挙げられます。この製品は、植物に昆虫を誘引する特定の物質を生成させるため、受粉の成功率を高めます。

     

    これらの取り組みを組み合わせることで、莢あたりの豆の数を増やし、全体の収量向上を目指すことができます。温度管理、栄養素の施用、そして媒介者の活用を意識的に行い、圃場全体での最適な栽培環境を構築することが重要です。

     

    豆のサイズや重さを増やすには?

    豆のサイズや重さを増やすことは、大豆や枝豆の品質向上に直結します。広い面積での栽培では、豆の粒数が収量の主要な指標となりますが、特定の条件や市場では、豆そのものの大きさや重さが重要視される場合があります。特に枝豆の場合、大きくてしっかりした豆が求められます。以下では、豆のサイズや重さを増やすための具体的な方法について解説します。

    [品種選択と栽培条件の調整]

    豆のサイズは遺伝的な要因によって大部分が決定されます。つまり、栽培する品種を選ぶ段階で、豆のサイズの限界がある程度決まってしまうのです。しかし、栽培条件の調整次第で、その潜在能力を最大限に引き出すことができます。

    たとえば、栽培条件が不適切であれば、品種が持つ本来のサイズに達しないことがあります。生殖成長期、特にR1からR5までの期間は、豆の品質と収量に大きく影響を与えるため、この期間の管理が非常に重要です。また、R6期は豆のサイズが最大に達する時期であり、このタイミングで適切な世話を行うことが、豆を大きくするための鍵となります。 

    [灌漑と水管理の重要性]

    水は豆のサイズを増やすための最も基本的かつ重要な要素のひとつです。適切な降水量が莢の形成を促し、大きな豆を実現することがわかっています。特にR6期に灌漑を行うことは、豆のサイズを増やすための有効な手段です。

    ただし、R6期になると植物の根の成長が止まり、吸水能力が低下します。このため、根の健康を維持し、水分吸収を補うための対策が必要です。アグリフルやテカミンライズといった資材を使用することで、根の成長を促進し、土壌からの水分吸収を最大化することが可能です。また、干ばつストレスが懸念される場合には、ベタインを豊富に含むテカミンマックスの施用が効果的です。 

    [栄養供給の最適化]

    豆の充填に必要な栄養素を十分に供給することも、サイズと重さの向上に欠かせません。特に重要な栄養素として以下が挙げられます。

    ホウ素: 糖の運搬を助け、豆の成長を支える。

    カリウム: 豆の充填を促進し、重さを増やす。

    モリブデン: タンパク質合成に寄与し、豆の品質を向上させる。

    これらの栄養素は、R6期を中心に適切な資材(例: テカミンブリックスやテクノケルアミノK)を使用することで、効果的に供給することができます。 

    [干ばつストレスへの対応]

    干ばつ状態では、豆のサイズが小さくなることが避けられません。これを防ぐためには、灌漑を行うか、干ばつストレスを緩和するための資材を活用する必要があります。たとえば、テカミンマックスは干ばつストレスに強い効果を持ち、水が不足している状況でも豆のサイズを維持する助けとなります。

    さらに、R6期以前に干ばつストレスが発生し、その後適切な降水がある場合、結果として非常に大きな豆が生産されることもあります。これは、莢の数が減少することで、生き残った莢に集中してエネルギーと水が供給されるためです。この現象を活用するには、干ばつが発生してもすぐに対応する灌漑計画を立てることが重要です。 

    [最適な資材の活用]

    豆のサイズや重さを増やすためには、適切な時期に適切な資材を使用することが鍵となります。たとえば、R6期にアグリフルを週1回施用することで、豆の充填を促進し、サイズと重さの向上が期待できます。さらに、テカミンブリックスやテクノケルアミノK(現在日本国内未販売製品)を組み合わせて使用することで、豆の成長をさらにサポートできます。 

    ■事例紹介

    本稿では、ファーティグレインフォリアーを用いた試験結果を中心に、大豆の収量向上に向けた施肥設計の事例を紹介します。

     

    [試験の概要と結果]

     

    アルゼンチンで行われた試験では、ファーティグレインフォリアーを1回、1.5リットル/ヘクタールで施用しました。施用タイミングは、通常行われるV2~V4の間ではなく、V5およびR2といったやや遅い段階で行われました。この試験の結果、以下の傾向が見られました。

    • 栄養成長期(V期)に施用すると、豆の数が増加。

    • 生殖成長期(R期)に施用すると、豆一粒あたりの重さが増加。

    このことから、施用タイミングが収量に与える影響を考慮し、目的に応じた施肥計画を立てることの重要性が示されました。 

    [最適な施肥設計の模索]

    ファーティグレインフォリアーの施用は単独でも一定の効果を発揮しますが、他の製品と組み合わせることでさらに良い結果が得られることが確認されました。以下は試験で得られた施用パターンの比較です。

    1. ファーティグレインスタートのみ: 収量が15%増加。

    2. ファーティグレインフォリアーを4葉期から6葉期に1回施用: 収量が12%増加。

    3. ファーティグレインスタートで種子コーティング後、ファーティグレインフォリアーを施用:

    • 開花初期に施用で27%増加。

    • 4葉期から6葉期に施用で30%増加。

    さらに、ファーティグレインフォリアーを2回施用することで収量が最大45%増加しました。施用回数を増やすことが、収量向上に効果的であることが明らかです。

     

    そのほかにも様々な条件で試験した結果があります。適切な施肥設計を実施することで、限られた資源を有効活用しながら、最大限の収量を得ることが可能です。詳しくはこちらの動画「【科学的/徹底解説】その2 大豆·豆類へのバイオスティミュラント施用② 農業技術の専門家が科学的に解説します。」を参考にしてください。

     

    施用できる資材とタイミング

    作物の成長を最大化し、収量を向上させるためには、各成長段階に応じた適切な資材の施用が重要です。本記事では、成長段階に対応した資材の役割とその施用方法について解説します。ここで紹介する資材は、特定の作物や地域で使用されているものであり、生産者が目的や条件に応じて選択できるように設計されています。 

    [節の数と形成に寄与する資材]

    ファーティグレインフォリアー

    V2からV4の期間に施用されることが一般的な資材です。この製品は光合成を促進し、温度ストレスから植物を保護します。同じ効果を持つテカミンマックスとの選択が可能で、高温や低温への耐性が求められる場合は、テカミンマックスが適しています。

    テカミンマックス

    バイオスティミュラント効果が強く、温度ストレス対策に優れた資材です。特にファーティグレインフォリアーを施用していない場合に有効な選択肢となります。

     

    [開花期と生殖成長期に効果的な資材]

    テクノケルアミノCaB

    R1の段階で施用される基本資材で、カルシウムとホウ素を含みます。カルシウムは細胞分裂を促進し、花の枯死を防ぐ重要な役割を果たします。ホウ素は糖の輸送をサポートし、花や莢の成長を支えます。

    テカミンフラワー

    TPS8遺伝子を活性化し、糖の正しい配分を促進する資材です。エネルギーが不足している状況や受粉の効率を高めたい場合に特に有効です。また、植物に特定の物質を生産させ、花粉を媒介する昆虫を引き付ける効果も期待できます。

    豆の充填期に有効な資材

    アグリフル

    R6期において豆の充填を促進するため、週に一度の施用が推奨されます。窒素の過剰吸収を防ぐために適切な量の施用が重要です。

    テカミンブリックスとテクノケルアミノK(現在日本国内未販売製品)

    これらの製品は、カリウムを含む資材で、豆の充填をサポートします。作物や地域に応じて適切な資材を選択することが可能です。

    まとめ

    ここで紹介した資材は、成長段階や栽培目的に応じて選択できるものであり、すべてを使用する必要はありません。重要なのは、生産者が自身の圃場の条件や経済性を考慮し、最適な施肥設計を選ぶことです。圃場の課題や目標に応じてこれらの資材を活用し、効率的な栽培を目指してください。

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