アグリテクノ社のクロップ担当が語る"テカミンマックスとは?:成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" Vol.2(全4回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Tecamin Maxとは何か?目から鱗の作用メカニズムが全てわかる!スペインのテクニシャンによる科学的見地からのハイレベル講義。基本のアミノ酸バイオスティミュラントを徹底解説」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

前回はテカミンマックスの主要成分と各成分の役割について解説しました。

今回は5種類のアミノ酸と有機成分が配合されているテカミンマックスの作用機序について、以下の3点から注目してみます。

  • クロロフィル合成と光合成に貢献
  • 水分保持と塩分ストレス緩和
  • アミノ酸によるエネルギー節約と代謝の促進

植物の生理的プロセスに対してテカミンマックスがどのように作用するのか、また、良い結果を得るためにテカミンマックスがどのくらい貢献してくれるのかについて、クロロフィルやプロリン、アミノ酸を例に挙げて解説します。

目次

    クロロフィル合成と光合成に貢献

    植物の生理的プロセスである光合成と、光合成を行うために必要な要素であるクロロフィル。植物が緑色に見える原因となる緑色の色素であることから葉緑素とも呼ばれています。クロロフィルは植物が光合成を行うために不可欠な成分で、太陽の光を捉えてエネルギーに変える役割を持っています。

    このクロロフィルの生成には、グルタミン酸が重要な役割を果たします。テカミンマックスは、光合成とクロロフィル合成の両方のプロセスに効果を発揮します。

    テカミンマックスがそれぞれのプロセスをどのようにサポートし、どのような効果が期待できるのかについて、各プロセスの基礎も交えてお話しします。

    ◆クロロフィル合成の基礎

    はじめに、植物がどのようにクロロフィルを合成しているのかを改めて解説します。 

    クロロフィルは、アミノ酸の一種であるグルタミン酸が基本となる要素です。またその合成過程には他にも鉄やマグネシウムなどのミネラルが不可欠で、これらのミネラルは、クロロフィル分子の中心に位置し、光を捉える能力を高める役割を果たし同様に重要です。

    光合成により植物内で生成されたグルタミン酸から、まずはアミノレブリン酸が合成されます。このアミノレブリン酸は、複数の酵素反応を経て、プロトポルフィリンIXという前駆体に変換され、最終的にマグネシウムイオンが挿入されることでクロロフィルが完成します。

    *この一連の過程では、マグネシウムはクロロフィルの緑色の色素を形成するために重要です。合成する酵素自体もアミノ酸の一種で、非常に不安定な構造をしているのが特徴的です。

    そのため温度やpHに左右されやすく、温度が高いほど活性化する反面、最適な領域を超えると活性度が低くなり正しく機能しなくなります。特に高温に弱く、すぐに変性して機能不全に陥ってしまうため、光合成には温度管理も重要といえます。

    バイオスティミュラント製品であるテカミンマックスには、有機成分のほかにアミノ酸が14%配合されています。もちろんグルタミン酸も含まれているため、より多くのクロロフィル合成に役立ちます。

    ◆光合成のプロセス

    次に光合成のプロセスを解説しましょう。

    光合成は、植物が生きていく上で最も重要なプロセスの一つです。具体的にはグルタミン酸と酵素で生成されたクロロフィルが太陽光エネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と根や葉から吸収した水を反応させ、酸素とグルコースを生成する生物化学反応のことです。このグルコースは植物の成長に必要なエネルギー源となります。

    クロロフィルは葉に多く含まれており、太陽光を浴びることで光エネルギーを吸収します。

    光エネルギーを得ると高エネルギー状態となり、クロロフィルをはじめとする光合成色素が活性化、さまざまな化学反応を起こします。その結果、酸化還元が起こり、酸素やグルコース(ブドウ糖)を生成する化学エネルギーに変換されるのです。

     

    クロロフィル+光エネルギー → 化学エネルギー → 酸素+グルコースなど → アミノ酸

    化学エネルギーは、代謝活動に必要な要素であるグルコースや酸素の生成に必須のエネルギーです。考え方によっては、クロロフィルは化学エネルギーを生みだすために光エネルギーを集めているともいえます。

    生成された酸素は外部に排出され、グルコースはデンプンに形を変えて各器官に運ばれます。そして植物が健康に成長するためのエネルギー要素として、各器官に蓄えられるのです。

    基本的に光のエネルギーがなければ化学反応は起きないため、クロロフィル単体では化学エネルギーに変換されません。太陽光が届かない夜や暗い場所で植物が光合成を行わないのは、その性質によるものです。

    光合成によりグルコースが生成されることで植物は健康に成長し、より良い生育状態となります。植物の生理的プロセスに関わるアミノ酸の役割から考えても、光合成が正常に効率よく行われる必要があるのです。

    光合成のプロセスは、ここでは簡単に「クロロフィル+光エネルギー → 化学エネルギー → 酸素+グルコース」と説明していますが、実際にはより複雑で精密な一連の反応です。

    生成されたグルコースは、植物にとって即座に利用可能なエネルギー源となりますが、一部はさらに複雑な生化学的プロセスを経てアミノ酸へと変換されます。アミノ酸は、植物がタンパク質を合成する際の基本的な建築ブロックであり、成長や修復、代謝活動に必要な各種酵素の生産に欠かせません。

    したがって、光合成は生物圏における基本的なエネルギー流と物質循環の出発点であり、グルコースの生成からアミノ酸合成まで、植物成長のあらゆる側面に影響を及ぼします。

    ◆グルタミン酸の重要性

    
植物の成長に必要なアミノ酸は光合成によって作られますが、光合成にはクロロフィルが、クロロフィル合成にはグルタミン酸が必要不可欠です。

    またグルタミン酸も、グルコースと酵素から生成されています。さらに辿れば、グルコースは光合成によって生成されています。

    つまり、グルコース、グルタミン酸、クロロフィルは同じサイクルのなかで生成されている要素なのです。したがって、植物が何らかのストレスを受けて酵素の機能が低下すると、成長に必要な要素が生成されないため、そのサイクルが乱れ、植物は次第に弱ってしまいます。

    このようなストレス条件下に陥った際には、グルタミン酸が入ったテカミンマックスを与えるのが効果的です。テカミンマックスに配合されているアミノ酸のうち、50%以上がグルタミン酸です。テカミンマックスによりグルタミン酸を補給することでストレスが改善されれば、グルタミン酸の生成サイクルも正常となります。

    いかにグルタミン酸を機能させ光合成の効率を高めるかが、植物の成長と収量を向上させるポイントのひとつといえます。

    水分保持と塩分ストレス緩和のメカニズム

    
続いては、植物の水分保持と塩分ストレスを緩和するメカニズムについてお話しします。テカミンマックスがどのように水分保持をサポートし、植物を塩分ストレスから守るのかについて詳しく見ていきましょう。

    ◆プロリンの役割とは

    プロリンは、アミノ酸の一つであり、植物が乾燥や塩分などのストレスに対抗するのを助ける特別な役割を持っています。例えて言うと、プロリンは植物が厳しい環境下でも水分を保持し、生き延びるのを支援する「救援物質」のようなものです。

    テカミンマックスにもプロリンが含まれており、水分保持の役割を担っています。プロリンは一般的なバイオスティミュラントとしての役割以外にも、植物を活性化させる重要な成分として、あらゆる方面から研究されています。

    プロリンの主な役割は以下になります。

    • 浸透圧の調節による水分保持
    • 細胞分裂のほう助
    • シャペロンとしてのストレス緩和
    • 気孔の孔辺細胞の調節
    • 発芽率の向上
    • 着果改善と種子の成長促進

    プロリンもクロロフィルと同じく、グルタミン酸から合成される成分です。いくつもの役割を担うプロリンのなかで、もっとも重要とされるのは細胞内の水分を保持する働きです。細胞内で浸透圧を調節し、必要以上の蒸散を抑えます。

    さらに注目すべき点は、特定のストレス条件下において分子レベルのシャペロン(=分子シャペロン)として機能する点です。

    分子シャペロンとはタンパク質の一種で、タンパク質が活性化するための正しいプロセスへの誘導、またそのプロセスを邪魔されないように保護する役割があります。

    さらに、ほかのタンパク質や酵素がストレスによる影響で機能不全に陥ったり不安定化することを防ぐのも、分子シャペロンの役割です。たとえば乾燥ストレス条件下では植物を守るべくプロリンは分子シャペロンとなり、酵素やタンパク質を保護、時には損傷を修復する役割も担います。

    様々な働きをするプロリンは、植物が健康に成長するために欠かせない要素です。テカミンマックスを使用しプロリンを供給することで、ストレス条件下における植物の水分保持、ひいては花粉の発芽や根や種子の成長をサポートできます。

    ◆ベタインの役割とは

    ベタインは特に、熱や乾燥といった環境ストレスから植物を保護することに重要な役割を担います。浸透圧の調整を通じて細胞の水分保持を改善し、ストレス条件下での植物の生存率を向上させます。また、ベタインは光合成過程の効率を高め、結果的に生産性と作物の品質を向上させることにも寄与します。

    ◆塩分ストレスへの対応

    塩分ストレスは植物にとって有害なものであり、状態が悪化すれば成長せずに枯れてしまう可能性があります。

    テカミンマックスは塩分ストレスを抱えている植物の生存を助けますが、それはプロリンが塩害ストレスを緩和する役割を果たすためです。以下でそのメカニズムを紐解いていきましょう。

    植物が塩分ストレスを受けると、次のような症状になる傾向にあります。

    • 脱水
    • 細胞膜の機能障害
    • 活性酸素の過剰生成

    これらのストレス症状の緩和にはプロリンが活躍します。プロリンは細胞内で浸透圧の調整をおこない、適切な状態を維持する性質があるためです。

    高塩度の環境下で植物を栽培すると、塩分ストレスを感じ生育に影響する可能性があります。植物に塩分ストレスが加わると、細胞の外側の塩分が濃い状態となり浸透圧がかかります。その結果、必要な水分が保持できずに流れ出てしまい、最後には枯れてしまうでしょう。そこでプロリンを加えて細胞内に蓄積させることで浸透圧が調整され、ひいては適切な水分保持を促し脱水や機能不全を防ぎます。

    プロリンは塩分ストレスに対しても大いに貢献する成分なのです。

    アミノ酸によるエネルギー節約と代謝の促進

    最後に、テカミンマックスによるエネルギー節約と代謝促進効果について解説します。テカミンマックスに配合される5種類のアミノ酸が、エネルギーと代謝に対してどのように利用され、効果を発揮するのかを見ていきましょう。

    植物は生育のためにエネルギーを消費し、そのエネルギーの多くは代謝プロセスを通じて生み出されます。アミノ酸は、これらの代謝プロセスにおいて中心的な役割を担います。具体的には、アミノ酸は植物が自らを成長させ、環境ストレスに対応するために必要なタンパク質を合成する際の基本的な構成要素です。

    植物が直接テカミンマックスからアミノ酸を吸収することにより、自らがアミノ酸を合成する過程で必要とされるエネルギーを節約できます。通常、植物がアミノ酸を合成するには、根や葉から吸収した無機窒素をアミノ酸に変換する必要があり、このプロセスには多大なエネルギーが必要です。しかし、テカミンマックスのようなバイオスティミュラントを使用することで、これらのアミノ酸を直接提供し、植物が成長と発達に必要なエネルギーをより効率的に使用できるようにします。

    さらに、アミノ酸は代謝促進にも寄与します。アミノ酸が豊富にあることで、植物の代謝プロセスはスムーズに進行し、栄養素の吸収や利用が効率化されます。例えば、一部のアミノ酸は代謝経路に直接関与し、光合成プロセスを強化したり、ストレスからの回復を早めたりします。これにより、植物はより早く成長し、健康的な生育を維持できるのです。

    このように、アミノ酸は植物にとって、エネルギーを節約し代謝を促進する上で不可欠な要素です。テカミンマックスを使用することで、植物はこれらの有益なアミノ酸を直接吸収し、生育に必要なエネルギーと栄養をより効率的に得ることができます。

    では具体的にテカミンマックスがどの様に効果を発揮するのかを見ていきましょう。

    ◆アミノ酸の効率的利用

    アミノ酸は、植物の代謝活動や生理的プロセスにおいて中心的な役割を果たす要素です。根や果実など、どの器官においても成長にはアミノ酸が必要不可欠です。アミノ酸は生育に必要なタンパク質を作るために使われ、細胞を活性化させるエネルギーとなります。

    またアミノ酸を生成するにも、相応の多大なエネルギーが必要です。テカミンマックスを与えて植物に直接アミノ酸を吸収させることで、余分なエネルギーを使うことなく、効率良くアミノ酸を補うことができます。植物自らが生成するアミノ酸にプラスして蓄積されるため、より多くの細胞を活性化する効果も望めるでしょう。

    栄養物質を各器官に運んだり果実を高濃度にしたりと、成長促進に対しても実効性があります。加えて、植物はテカミンマックスからアミノ酸そのものを吸収するため、生成するエネルギーが最低限で済むことも大きなメリットです。

     

    ◆エネルギーの節約

    アミノ酸は、代謝活動のなかで生成される要素です。植物がストレスを受けると細胞の機能が不安定となるため、代謝活動に影響が及びます。代謝活動が落ちると、当然ながらアミノ酸が生成されずに不足していくため、各器官におけるアミノ酸の需要と供給のバランスが崩れていくのです。

    そこで不足している分のアミノ酸を補おうと、植物はさらに多くのエネルギーを費やし代謝活動を活性化させようとします。その際、エネルギーとなるのは主に果実や種子、根、茎に蓄えられている炭水化物です。

    本来この炭水化物は、果実の糖度を高めるためや花を咲かせるために使われるエネルギーです。しかし、各器官は不足するアミノ酸を補うために大量にエネルギーを必要とするため、器官内での少ないエネルギーの奪い合いが起こります。結果、エネルギー不足により植物の生育に支障をきたし、果実の糖度や根や葉の成長にまでエネルギーが届かず、生育不良となる可能性があるのです。

    このようなストレスを受けた状態の植物にも、テカミンマックスの供給は効果的です。アミノ酸を根から直接吸収させることでアミノ酸を効率的に補給し、ストレス症状を改善させます。各器官で奪い合いを起こすことなく十分なエネルギーを蓄積したまま、代謝活動を本来の形に戻せるのです。

    ◆根や葉の成長促進

    テカミンマックスによるアミノ酸供給により、代謝活動に必要なアミノ酸が十分にあれば、代謝活動はさらに活性化し、植物全体の成長を促します。

    特に、葉で起こる光合成や根までの栄養物質の輸送が強化され、植物の健康と生産性を全体的に高める効果があります。

    何らかのストレスを受け、光合成に必要なクロロフィルの生成サイクルが不安定となり、生成された栄養物質をうまく根に運べなくなった場合、たちまち少量のエネルギーしか生成できなくなり、成長速度が落ち、健康的な生育が困難となります。様々なストレスにも対処できずに植物が弱り、成長自体がストップしてしまうかもしれません。

    こうした事態にもテカミンマックスは有効に作用します。アミノ酸による成長促進の作用により、光合成率の向上や栄養物質の輸送を改善させます。テカミンマックスのアミノ酸はストレス症状の改善だけではなく、植物全体の健康維持にも大いに役立つのです。

    まとめ

    今回はテカミンマックスの作用機序について、主にアミノ酸がどのように作用するかを中心に解説しました。

    テカミンマックスを植物に与えることで、クロロフィル合成と光合成に大きく作用し、その活動をサポートします。また、アミノ酸の一種のプロリンが持つ水分保持の役割を利用することで、塩分ストレス緩和にも作用し、植物を保護し助ける効果も見込めます。

    さらに根や葉にアミノ酸を十分に吸収させることで器官どうしでのエネルギー競合を防ぐため、テカミンマックスはエネルギー節約と代謝の促進にも有効です。

    次回Vol.3では、これまで解説したテカミンマックスが植物に与える影響について、実際の適用事例に沿って詳しくお話しします。

     

    【次回Vol.3のリンクはこちら ↓ 】

    アグリテクノ社のクロップ担当が語る"テカミンマックスとは?:成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" Vol. (agritecno-japan.com)

    【前回Vol.1のリンクはこちら ↓ 】

    アグリテクノ社の技術者が語る "テカミンマックスとは? 成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" Vol.1( (agritecno-japan.com)

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