AgriTecno社のクロップ担当が語る"テカミンマックスとは?:成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" Vol.4(全4回)

チュートリアル 更新日:

 

当記事では、YouTubeチャンネル「味の素グループアミノ酸肥料ch」で公開されている動画「【科学的/徹底解説】Tecamin Maxとは何か?目から鱗の作用メカニズムが全てわかる!スペインのテクニシャンによる科学的見地からのハイレベル講義。基本のアミノ酸バイオスティミュラントを徹底解説」の内容をテキスト化してご案内しています。

 

当連載の最後となるVol.4では、テカミンマックスを実際に植物に与えて栽培した事例をもとに、どのように施用し、結果としてどのように作用したのかについて、Vol.3に続き詳しく解説します。

今回は特に品質向上に着目して4つの事例をお伝えしますが、テカミンマックスを施用した場合と施用していない場合の効果をデータを基に比較していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

    テカミンマックスとは

    テカミンマックスは、農薬や肥料とは異なり、植物の基本的な代謝活動を向上させるバイオスティミュラント製品です。

    主要成分はアミノ酸のほか、注目すべき成分であるベタインやタンパク質など、豊富な有機成分で構成されています。このような成分を植物に与えることで、代謝の活性化や収穫量の増加、品質向上など、様々な効果を期待できます。 

    適用事例と結果

    ◆品質向上

    テカミンマックスを植物に与える目的のひとつとして品質向上が挙げられます。テカミンマックスは植物全般に作用するバイオスティミュラント製品ですが、特に葉物野菜に対して高い効果を発揮します。他のアミノ酸バイオスティミュラント製品と比べた実験では、テカミンマックスのほうが葉の栄養状態が良く、高い栄養レベルであると確認されました。

    この実験では、テカミンマックス施用時には植物の主要栄養素である窒素やリン酸、カリウムが増加しました。ホウ素の増加も観察されましたが、ホウ素は直接的に酵素活性を高めるわけではなく、植物の栄養吸収や細胞壁の構成成分として機能します。このようにホウ素は間接的に植物の健康と成長に寄与することで、酵素の活性化にも影響を及ぼす可能性があります。それにより成長に必要な栄養素を合成するための酵素が活性化することで植物が健康になり、葉の栄養状態が良くなったと考えられます。結果として、テカミンマックスを供給すると栄養状態が優れた品質の良い状態となっています。

    以下に、品質向上の事例を4つご紹介します。

    [事例1:キャベツ]

    はじめに、ブルガリアでキャベツ栽培にテカミンマックスを施用した例です。

    この事例では、キャベツの栽培をテカミンマックスの無施用区と施用区に分けて行いました。テカミンマックスの施用区には収穫までの間、1ヘクタールあたり3リットルのテカミンマックスを2回散布しています。

    その結果、左のグラフにもあるとおり、無施用区の収量に比べて、テカミンマックスを散布した施用区のほうが66%も収穫量がアップしたのです。右のキャベツの写真でもわかるとおり、実際にキャベツを割って比べてみると圧倒的な個体差があり、葉の一枚一枚の厚みや大きさ、色も違います。左の小さいキャベツには葉の間に隙間があるのに対し、右のテカミンマックスを施用した大きいキャベツは隙間もなくぎっしりと葉が重なっています。どちらのキャベツの品質が良いかは明白です。

    始めにもお伝えしたように、これはテカミンマックスが葉物野菜の品質向上に対して高い効果を発揮することを表しています。窒素、リン酸、カリウムといった主要栄養素と酵素の活性化に影響する補助因子のホウ素の増加で、葉の栄養状態が高レベルとなり健康になった結果、ただ成長を促進させるだけではなく、収量増加や野菜としての品質も向上させたのです。

    [事例2:メロン]

    次に、アルゼンチンでメロン栽培にテカミンマックスを施用した例です。

     この事例では、左表のように、テカミンマックス施用区には定植後のまだ苗が小さいうちは散布量を調節しながら、1ヘクタールあたり2リットルのテカミンマックスを2日間で3回葉面散布をおこないました。その後、開花前と開花後に1ヘクタールあたり3リットルを散布しています。

    結果、最初の収穫時には無施用区が1ヘクタールあたり47.2トンであったのに対し、テカミンマックス施用区は56.3トンと、約9トンも多く収穫できたのです。さらに糖度においては、無施用区が13.1度なのに対し、施用区の方は14.2度と1度以上高くなっています。

    メロンが収量増加と糖度向上に至ったのは、テカミンマックスのアミノ酸が貢献しているからです。果物の糖度にはグルコースが影響しますが、グルコースはエネルギーとしても消費されてしまうため、各器官でエネルギーの競合が起きれば果実にグルコースを蓄えられず、結果として果実は甘くならず、大きく成長するのも難しくなります。

    そこでテカミンマックスでエネルギー源となるアミノ酸を補給し、各器官にアミノ酸を行き渡らせることでエネルギー競合を避け、成長促進と糖度向上にグルコースを使えるよう作用させるのです。それにより、右側のグラフのようにテカミンマックス施用区のメロンは大幅な収量増加と糖度向上、ひいては全体的な品質の向上につながりました。

    [事例3:タバコ]

    続いては、タバコの栽培にテカミンマックスを施用した例を紹介します。

    こちらの写真は、ブルガリアでのタバコの栽培状況を記録した写真です。左の写真のタバコは全体的に小さく、小ぶりな見た目をしています。おそらく何らかの環境ストレスを受けているため成長が遅く、茎もあまり伸びずに葉も小さめであることがわかります。一方、テカミンマックスを施用した右の写真を見てみると、左に比べて明らかに大きく成長しているのがわかります。背丈も伸びていますが、特に葉の大きさや枚数は見るからに差があり、テカミンマックスを施用したほうが健康的に成長しています。

    この成長の差は、アミノ酸に加えてベタインの役割による作用だと考えられます。ベタインには、熱ストレスや水ストレスといった様々なストレスへの耐性を高める役割があります。他にも、植物の生理的プロセスにおいて重要な役割をいくつか担っています。

    • 生物学ストレスからの光合成保護
    • 浸透圧バランスの改善
    • 冷害の防止
    • 雨や害虫ダメージからの回復

    ベタインは植物が成長するために重要な要素ですが、すべての植物がベタインを大量に生成できるわけではありません。なかでもタバコはベタインをほとんど生成しない植物です。一定量のベタインを自然に生成する能力を持っていますが、ほとんど蓄積もしないため、環境ストレスに対する耐性を高めるためには、この自然産生量だけでは不十分な場合があります。

    そのため、左のテカミンマックス無施用区のタバコはストレスやダメージを受けてしまい、成長に支障をきたしていたのではないかと推測できます。それに対して、テカミンマックスを施用したタバコはベタインの補給が生理的プロセスに大きく貢献したのでしょう。ベタイン不足が解消され、環境ストレスからの保護や耐性の強化、光合成の効率化などが作用した結果、成長促進に繋がったと考えられます。

    このように、ベタインを自らほとんど生成しないタバコにテカミンマックスを与えることは、生育と品質の面から考えてもたいへん理にかなっているといえます。

    [事例4:飼料作物]

    最後に、飼料作物であるアルファルファの事例を紹介します。これまでの野菜と同様に、飼料作物においてもテカミンマックスは優れた効果を発揮しました。

    こちらのアルファルファ栽培でもテカミンマックスの無施用区と施用区に分け、施用区には収穫までの間に2度葉面散布を行いました。その結果、このケースでは約50%も収量増加が確認できました。写真はそれぞれの畑から1株だけ収穫し並べたものです。

    左側のテカミンマックス無施用区で収穫したアルファルファのほうが見るからに小さく、株の大きさも50〜60cmほどであるのに対し、右側のテカミンマックス施用区で栽培した株は70〜80cmほどと、明らかに大きく育っています。

    茎自体の長さや数、太さ、葉の密集具合など、成長の差は一目瞭然です。もちろん重量においても大きな差が見られました。それぞれの畑から10株ずつ収穫して量ったところ、無施用区のほうは14gであったのに対し、テカミンマックス施用区のほうは33gと、倍以上の結果となりました。

    これほどの優れた成長はテカミンマックスの栄養成分によるものです。アルファルファ内のタンパク質とアミノ酸量が豊富になったことにより、成長促進効果が高まったと考えられます。

    なお、アルファルファのような飼料作物においては、テカミンマックスの効果は作物自体の品質向上や収量増加だけにとどまりません。飼料作物を餌として食べる家畜にも良い作用を与えます。つまりテカミンマックスを施用した栄養豊富な飼料作物を餌として与えることで、家畜自体の栄養状態が改善され、ひいては肉質の品質向上も見込めます。

    この作用は肉質だけではなく、牛乳においても同様です。乳牛の餌として与えれば乳牛自体の栄養状態が改善されるため、牛乳の生産量増加や品質向上も期待できます。

    このように、テカミンマックスは栽培する植物自体に高い効果を発揮するだけではなく、その先にまで良い影響を与える可能性を秘めているバイオスティミュラント製品なのです。

    総括

    これまで全4回にわたり、テカミンマックスの主要成分や作用機序、植物に与える利点、適用事例についてお伝えしました。

    最後にあらためてテカミンマックスについて簡単に振り返ってみましょう。

    Vol.1では、テカミンマックスの製品概要や主要成分について解説しました。

    テカミンマックスは、農薬や肥料とも異なる「バイオスティミュラント」と呼ばれる製品で、アミノ酸やベタインなどの有機成分が豊富に配合されています。

    主要なアミノ酸はグルタミン酸、プロリン、アラニン、アスパラギン酸、グリシンの計5種類です。それぞれに異なる機能があり、いずれも生理的プロセスにおいて重要な役割を担っています。

    • グルタミン酸:成長に必要なエネルギー源。クロロフィル合成や酵素の活性化、病原菌の抑制などに役立つ。アミノ酸全体の50%以上を占めている。
    • プロリン:細胞内の浸透圧調整による水分保持。シャペロンとしてストレス緩和。
    • アラニン:エネルギー源となり他のアミノ酸を生成。しおれの抑制や植物ホルモンと結合するトランスポーターなどの役割も担う。
    • アスパラギン酸:気孔の開閉による浸透圧ストレス耐性の向上に貢献。
    • グリシン:茎の成長、クロロフィル合成に貢献。

    また、有機成分であるベタインもアミノ酸と同様、植物が健康に育つ上で欠かせない重要なアミノ酸誘導体の一種です。生物学ストレスから光合成機能の保護、浸透圧調整による細胞の脱水防止、細胞膜とタンパク質の安定化をはじめとする様々な役割があります。

    続いてVol.2では、有機成分が豊富に含まれているテカミンマックスの作用機序について、以下の3点に焦点を当てて解説しました。

    • クロロフィル合成と光合成への貢献
    • 水分保持と塩分ストレス緩和
    • アミノ酸によるエネルギー節約と代謝の促進

    光合成とクロロフィル合成のどちらにおいても、テカミンマックスは効果を発揮します。光合成はクロロフィルが、クロロフィルを合成するにはグルタミン酸が中心となり、いくつかの酵素と結合しながら合成を繰り返し、循環しています。光合成が正常かつ効率よくおこなわれることは、植物の健康維持に必須です。テカミンマックスを与えてグルタミン酸を補うことがどちらのプロセスにも貢献し、健康的な成長を手助けします。

    水分保持と塩分ストレス緩和は、主にアミノ酸成分であるプロリンによる作用です。プロリンが担う様々な役割のうち、細胞内の水分保持と浸透圧調整は、特に塩分ストレスに対して大きく効果を発揮します。

    エネルギー節約と代謝促進にはアミノ酸全体が作用します。代謝活動の活性にはアミノ酸が不可欠なため、テカミンマックスでアミノ酸を補給することにより各器官での奪い合いを防ぎ、代謝を促します。

    そして前回のVol.3と最終回となる本記事Vol.4では、実際にテカミンマックスを植物に与えた7つの事例を紹介しながら、どのように施用した結果、どのような効果が得られたのかを詳しく解説しました。

    テカミンマックスを植物に与える3つのメリット「成長促進」「収量増加」「品質向上」に注目したこれら7つの事例では、テカミンマックスを施用していない無施用区の植物に比べ、テカミンマックスを数回散布した植物のほうが、見た目もデータ分析の結果からも成長促進の効果が確認できました。

    また、成長促進によって全体的な収量や一個体あたりの重量増加、さらに糖度も含めた品質全体の向上も十分に期待できる結果となりました。収穫や開花のタイミング、花や果実の大きさが均一となるのも、テカミンマックス施用の利点といってよいでしょう。

    テカミンマックスについての解説は以上です。

    テカミンマックスはアミノ酸を主要成分とし、植物の成長に良い効果をもたらすベタインも配合されているバイオスティミュラント製品です。植物の健康的な生育に基づく収量増加や品質向上において、テカミンマックスは大いに効果を発揮します。ぜひ施用を検討してみてください。

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    アグリテクノ社の技術者が語る "テカミンマックスとは? 成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" Vol.1( (agritecno-japan.com)

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    アグリテクノ社のクロップ担当が語る"テカミンマックスとは?:成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" Vol. (agritecno-japan.com)

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    AgriTecno社のクロップ担当が語る"テカミンマックスとは?:成分と作用メカニズムを理解して、作物のポテンシャルを最大限に引き出せ" V (agritecno-japan.com)

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